追想の山々 1012    up-date 2001.04.16


巻機山(1967m) 登頂日1988.6.11  単独
桜坂(6.55)――5合目(7.33)――6合目展望台(8.00)――にせ巻機山(9.00)――巻機山(9.26)――牛ケ岳(9.40)――にせ巻機山(10.40)――5合目(11.25)――桜坂(12.00)
              はじめて目にした山上の楽園という景色

 
巻機山(右)と割引岳(左)
                  
梅雨のあいまのほんのひと時、晴天に恵まれた。

新緑の香りが溶け込んだような大気は、しっとりと潤っていて、休のすみずみまで洗ってくれるような清浄感を感じる。  
清水の集落からさらに桜坂まで自動車で入ることが出来た。


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十分に下調べをしてきたつもりだったのに、桜坂という場所がわからない。見当をつけて雨上がりの細道を歩きはじめた。
草露に膝から下をびっしょりと濡らして、渓流に沿った踏み跡をたどると、ついには増水した沢の流れにさえぎられてしまった。どうやらコースを間違えたようだ。
駐車地点まで引さ返すはめになってしまい、往復1時間のロスに気が重くなった。
再び自動車で移動すると、今度は巻機山登山口の標識もあって、そこが桜坂にまちがいなかった。

牛ケ岳と割引岳の間にある池塘
まとわりつく霧を肌に感じながらすぐに尾根道へとりつく。潅木の急登をぐんぐん高度を上げていく。赤土がよく滑る。木の根がからみあった急登がつづく。樹木はすべて根元から谷側に向かって、地を這うように大さく曲がっている。はじめて目にする不思議な光景だった。それは雪圧によるもので、ここが豪雪地帯であることの証だった。
シャクナゲの花に目をとめ、鋭い根曲がり竹の切り株に注意を払い、いいベースで高度をかせいでいく。

樹林を抜けるといっペんに視界が開け、笹原とシャクナゲの明るい高原状の台地となる。目の前にはおだやかな起伏を持ったニセ巻機山のピークが迫っている。上空の青空はどんどん広がっていくのに、谷底からは次から次へと霧が湧きあかり、割引岳の稜線に達すると、さらに彼方へと流れて消えていく。  

ニセ巻機山の頂上から眺めると、残雪がぎっしり詰まった深い谷をはさんで、目的の巻機山が対侍している。割引山も指呼の距離にある。
樹木はなく、おおらかな起伏を持って広がる草原状の風景。池塘と高山植物で飾られて、雲上の楽園というにふさわしい。こうした風景は私にとっては、はじめて目にするものだった。
ニセ巻機山とシャクナゲ
池塘に影を落とす巻機山を目にしながら木道をたどり、竜王の池から気持ち良くひと登りすると、稜線上に出た。肌に心地よい冷風が吹きわたり汗が引いてゆく。割引山、牛ケ岳がすぐそこに、更に牛ケ岳の右手後方には越後駒ヶ岳方面の山々、ニセ巻機山の背後に見えるのは谷川連峰で、雲海の中に見え隠れしていた。  

休まずに牛ケ岳まで行く。シャクナゲのほかにも、私には名前の知らない高山の花が目につく。イワカガミもある。2000メートルにも満たない山ながら、雪国の山々は6月なお谷筋には深い雪を残し、ハイマツ帯を形成し、チシマザサ、シャクナゲが植生している。北アルプスならば2500メートルの自然条件に匹敵するのではないだろうか。
眼下に広がる霧は、容易に消え去らない。これが快晴なら、きっと目を見張るほどの景観が堪能できるだろうに。

帰途、竜王の池付近で早い昼食をすませて、あとは一気に桜坂駐車場までかけ下った。  
雪解けの谷川の水で汗を洗い流して、がすがしい気分で帰途についた。  
                   
1994年の割引岳登頂はこちらへ