追想の山々 1020
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登頂日2010.09.03〜4 単独 地図・・・仙丈ケ岳 三角点 北岳・三等三角点 小太郎山・三等三角点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
北岳肩の小屋一泊行程 ≪1日目≫広河原(7.30)−−−分岐(7.55)−−−二俣(9.30-9.35)−−−二俣上部道標(10.15)−−−八本歯コル(11.10-11.20)−−−北岳山荘分岐(11.45)−−−北岳(12.25-13.25)−−−北岳肩の小屋(13.50)・・・・小屋泊 ≪2日目≫ 北岳肩の小屋(5.20)−−−小太郎尾根分岐(5.35-5.40)−−−鞍部(6.00)−−−小太郎山(6.35-6.45)−−−鞍部(7.25)−−−小太郎尾根分岐(7.45-7.55)−−−御池小屋(8.50-8.55)−−−分岐(9.45)−−−広河原(10.00) |
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実に4年ぶりの南アルプスだった。水彩画に夢中になっている間、つまりその4年間一度も南アには足が向かなかったのは自分でも驚きだった。 山小屋一泊、広河原から北岳をビスとンする定番の楽々コース、余裕十分の気持ちで出かけた。
人気もほとんどない7時半、広河原から北岳へ向けて出発。北岳が朝陽に輝いている。暑さはまったく感じない。快晴、快適な登山になりそうだ。 分岐で大樺沢コースを選ぶ。時間はたっぶりある。渓流の涼しげな音を耳にしながらゆったりとしたペースで高度を稼いでいく。広河原から2時間ちょうどでトイレのある二俣となる。ゆっくり歩いたつもりだが、ガイド地図より30分早かった。御池小屋泊で今朝出発したらしい登山者の姿が10数人見える。河原の石に腰を下ろし、北岳のバットレスを見あげながら5分の休憩。 これからが大樺沢コースの急登本番。大樺沢は最上部に痩せた雪渓がわずに残るだけ、雪に乗ることはまったくないまま、夏道だけで二俣まで来た。 さて、二俣からはいよいよ急登に次ぐ急登、半端ではない急登に喘ぐことになる。痩せた雪渓を左下に見ながら、一歩一歩数えるようにして足を運んでいく。急ぐことはない、ゆっくりゆっくりを心がけているが、一人、また一人、あるいは10人ほどのグループなどを抜いていく。 背後には鳳凰三山がどんどん競りあがってくる。バットレスからはクライマーの声、岩壁を探すとクライマーの姿が小さく見える。
ようやく八本歯コルの岩稜へ登りついてやれやれの気分。展望が一気に開け、目の前には間ノ岳、農鳥岳、そして端麗な富士が中空に浮かんでいる。時刻は11時10分、もう雲が湧いて山岳展望が閉ざされてもおかしくない。はたして1時間近くを要する北岳山頂に着くまで、四囲の山々はその姿を見せているだろうか。 10分の休憩で最後の登りにかかる。山頂まで300メートルの高さを稼がなくてはならない。岩塊の急登をペンキ印に誘導してもらいながら重くなった足を引き上げていく。 量はそれほど多くはないが、高山植物が目につく。足を止めてはカメラに収める。種類はけっこうの数ある。始めて目にする花がいくつかあった。キンロバイ、キタダケトリカブトなど・・・・。 北岳山荘への分岐からは花を楽しみながら、主稜を北方へ直角に曲がって岩稜をたどっていくと、やがて山頂が見えてきた。 八本歯のコルから1時間5分、45分程度と予想したいたが、大幅に遅かった。 展望はまだ間に合ったが、富士山には雲がまといつき、遠方の山岳稜線にも雲の気配が漂いはじめていた。あとは山頂直下の肩の小屋
3回目の山頂だが、今回が一番の好天。存在感のあるのは南アの女王とも呼ばれる仙丈ケ岳、その隣には甲斐駒。間ノ岳から農鳥岳への主稜、その先には塩見岳。鳳凰三山の地蔵、観音、薬師岳、それにオベリスクも明瞭に見える。 遠く中ア・北アの連嶺、八ケ岳連峰、奥秩父、御坂山塊、丹沢山塊など心行くまで360度の展望を味わった。20分もすると富士山は雲に姿を消し、間ノ岳も湧き上がってきたガスの中へと閉ざされていった。 展望のなくなっていく山頂にいつまでいても仕方がない。山小屋でのビールが目に浮かんで山頂をあとに小屋へと下った。 小屋は宿泊者も少なく、余裕たっぷりにくつろげたのはラッキー。3時を過ぎると小屋周囲も濃いガスに包まれていた。 ≪2日目≫ 本日も快晴。みごとなご来光、黎明の富士を眺めてから、帰りは小太郎山へ立ち寄って行くことにする。小太郎尾根分岐にザックをデポして、ほぼ一直線に北へ向かう小太郎尾根に踏み込む。途中道標はないがある程度の登山者もある証拠に、踏跡は明瞭、尾根を外さない限り何の不安もない。 山梨百名山峰として7年前に広河原から日帰りしたことがあり、そのときの記憶がかなりはっきりと残っている。
小さな岩峰を、時には越え、ときには巻いたりして進むと、ダケカンバとシラビソの樹林に入るが、すぐに抜け出して小さなコブを一つ越えればそこが小太郎山の頂上だ。山頂直下はちょっとした広場状の地形になっている。 山頂には山梨百名山の標柱と三等三角点標石。 潅木1本ない山頂の展望は絶佳、甲斐駒、仙丈、北ア、富士、鳳凰など、しばし目を回らせる。とりわけここから見る北岳の姿は実に優美だ。もしかすると今まで眺めた北岳のうち、ここからの姿が一番凛々しいかもしれない。展望に満足して山頂をあとにする。 分岐まで戻り、下山路は御池小屋経由にする。御池小屋を今朝発ったらしい登山者が喘ぎながら登ってくる。 御池小屋で一服しようとベンチへ腰を下ろし、広河原発のバス時刻を調べるとあと1時間20分しかない。ガイド地図での所要時間は1時間50分、逃がすと次のバスまで2時間以上の待ち。一服するのは諦めてスタート。用意ドンの気合いだ。 力任せ足任せに足を速める。そういえば、10年前はこんな調子で歩いていたのを思い出す。二俣への分岐まで45分、ガイド地図の半分で歩いてしまった。これでひと安心、あとはのんびり歩いてもバスには悠々間に合う。 無理してあんなに急いだのに、広河原に着くと乗り合いタクシーの客引きの声に誘われて、結局そのタクシーで芦安駐車場行きとなってしまった。 |
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.目にした花(半分ほどは帰宅後に図鑑で調べたものです)
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≪熊野平小屋一泊行程≫・・・早駈け登山 | |||||
●広河原(4.30)−−−八本歯のコル(7.05)−−−北岳(7.45)−−−中白峰岳(9.05)−−−間ノ岳(9.50-10.10)−−−三峰岳(10.30)−−−熊の平小屋泊(11.20) ●熊の平小屋(3.05)−−−北荒川岳(5.05)−−−北俣岳(6.05)−−−塩見岳(6.30)−−−塩見小屋(7.00)−−−三伏峠(9.00)−−−新塩川小屋(11.20)−−−鹿塩温泉===バス |
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北岳(3192m)〜〜中白峰山(3055m)〜〜間ノ岳(3189)〜〜三峰岳(2999m)〜〜 安部荒倉岳(2692m)〜〜新蛇抜山(2667m)〜〜荒川岳(2697m)〜〜北俣岳(2940m) 〜〜塩見岳(3047m)〜〜本谷山(2657m)〜〜三伏山(2600m)
北部は山小屋も整っているし、南部の時のあの緊張に比べると気持ちに大きな余裕があった。山小屋が整っているだけでなく、南部縦走中、人工肛門のアクシデントもなく、はじめて山小屋2泊ができたことによる自信のようなものも芽生えていた。 23:48分新宿を発つ。お盆も過ぎると汽車はがら空きだった。タクシー相乗りで甲府から広河原へ向かう。星空がのぞめる。 第一日目(晴れたり曇ったり) 水筒に水を詰め、朝食のパンをかじってから大樺沢への登りにとりついた。きびしい登りを、一歩一歩高度を上げて行く。鳳凰三山が意外な近さに見える。 二俣まで登りつくと北岳の胸壁が朝陽に輝き、眼前に迫ってきた。二俣からは傾斜が一段ときつくなる。負けずに頑張る。汚れて小さくなった雪渓の脇から沢を詰め、八本歯への急登を、梯子に助けられて攣じる。2時間半ほどで吊り尾根の按部、八本歯のコルに飛び出した。 ただ急登を喘ぎ、体をずりあげることに専心していた私には、予想もしていなかった、息をのむような展望が目に飛び込んできた。目の前に、カールを巻くようにして、中白峰、間ノ岳、農鳥岳の3000米峰が朝陽に映えて聳立している。しばし見とれてから北岳へと向かった。 わが国第二位の高峰北岳山頂は、いつの間にかガスが広がって、大きな展望を楽しむことはできなかったが、間ノ岳や奥秩父の山並が望見できた。 北岳山荘は立ち寄らずに通過。中白峰、間ノ岳とつづく雲上のコースは、思いのほか傾斜がある。 間ノ岳山頂も、濃霧ではないが視界はきかない。だだっ広い項上で先着の登山者たちと、しばらく話しこんだ。60歳代と思われる、初老の夫婦が登頂の喜びに耽っていた。「かたつむりのようにここまで登ってきまし」と話していた。 しばしの休憩ののち、熊の平へのコースに入る。岩片のガラガラコースを下り、登りかえすと三峰山の頂上。ここは標高2999米と3000米峰に僅か1メートル足りない。 間ノ岳、農鳥岳を左手に見ながら、熊の平小屋へ下降していく。樹林帯に入り熊の平に近づくとお花畑が美しい。 熊の平小屋は山小屋というよりペンション風の小奇麗な小屋だった。管理人の奥さんはロシア人とのこと。日本語が上手で宿泊申し込みなどをうまくしきっている。管理人に「今朝広河原から登ってきたのだ」というと、「速い、すごい健脚だ」と感心してくれた。10時間のコースを6時間50分で歩いたのは確かに早かった。 まだ11時ちょっと過ぎたところで、私一人しか到着しておらず、主人とバイトを交えて、ブランデーケーキとお茶をご馳走になった。 こざっぱりとした、寝心地の良い小屋なのに、昨夜は宿泊ゼロだったとのこと。今日は二人パーティが一組、単独行者4人(内女性1)。キレイに洗濯された枕カバー、清潔な毛布、今までの小屋泊まり体験の中で最高にいい環境だった。(ただし食事はやや貧弱) 同宿者に明日のコースを聞かれ、「塩見岳から三伏峠、塩川小屋に下り、鹿塩温泉で泊まるか東京へ帰るつもりです」と話すと、それは二日分のコースでとても無理だろうという。私としては、少し頑張ればその程度歩ききる自信はあったが、それを言うのがはばかられて「そうですね、駄目ならば途中で泊まります」とあいまいに答えておいた。 第二日目(天候 曇り・霧) 目が覚めたのは2時50分。耳をすませて天気の様子を探る。雨の音?しかし予定どおり今日中に鹿塩温泉まで下りたい。ちゅうちょする気持ちを奮い立たせて、寝静まっている二階から物音を立てないように注意しながら、そっと一階に下りて身支度を整えた。雨具を着ていると、同宿の男性が下りてきて、「星が見えますよ」という。窓越しに空を仰ぐと、星がきらめいていた。 外に出てみると、雨音と思ったのは沢音であり、雨の滴に聞こえたのは夜露が木々の梢から屋根に落ちている音だった。 星は傘をかぶって瞬いている。天気は下り坂にあるらしい。ライトを頼りにテント場の横を抜けて、本日の長丁場がはじまった。 ライトの光が届く以外、真っ暗闇でどこをどう歩いているのか方向感覚もなくなってしまう。ペンキ印のある踏みあとを外さないように目を凝らし、速いペースで仙塩尾根稜線の縦走路に出た。前半に少し無理しても時間を短縮しておけば、後半が楽に歩けると思ってがんばる。樹林の闇の中で山小屋で作ってもらったおにぎりを食う。 樹林の中は夜明けが遅い。霧が漂っている。ようやく明けはじめた薄明の稜線を、ペースを乱さないよう安定した速度で距離をかせいでいく。 急な登り下りはないが、それでも平坦ではないから、結構体力は消耗する。新蛇抜山も荒倉岳もどこがピークか分からぬうちに過ぎてしまった。ガスは濃くなって見とおしが悪い。 早朝の露払い役となってしまい、靴はぐしょぐしょだ。 塩見岳をまじかに見る好展望台の北荒川岳も、濃い霧が去来していて、視界が遮られたままである。 ガスの切れ間から塩見岳が少しだけ顔を見せるが、全体の山容をとらえることができないのがもどかしい。 北俣岳へは大ガレの急登で、慎重に高度をあげていく。蝙蝠岳への分岐から塩見岳の肩にかけての北の斜面のお花畑が美しく気持ちを和ませてくれた。 塩見岳項上から10メートル程下に、《塩見岳東峰》と書かれた、直径20センチ、長さ2メートル程の標柱が倒れている。風で項上から飛ばされたのだろうか。かなり重かったが、踏ん張ってかつぎ上げて、頂上の岩の間に立てかけた。 ガスに巻かれて眺望のない山頂で記念写真をとり、西峰を踏んでから足場の悪い急傾斜を四本の手足を動員して下る。時間は予定よりだいぶ早い。この先はもう急がなくても大丈夫だ。この下りで今日初めて人に出会った。ということは、塩見岳はこの日一番乗りだったということだ。 三伏峠までは一方的な下りだけと思っていたら、あにはからんや何回も登り下りを繰かえさなければならなず、多少疲れも出てきたことも手伝って、特に本谷山への登りはきつかった。 ぱらばらと雨粒が落ちるが本格的な降りにはならない。三伏山から三伏小屋が見下ろせるようになると、ほっとした安堵感が湧いてきた。今回の山行も、どうやら予定通り無事に終了できそうだ。重荷をおろす思いだった。 三伏小屋経由で新塩川小屋へ下りついたのが正午前の11時20分だった。この日は13時間が標準のコースだったが、8時間15分という快調さで歩けた。このまま東京へ帰るのも余裕だったが、予定では鹿塩温泉泊まりを考えていたこともあり、温泉でゆっくりと休養してから帰ることにした。 |