追想の山々1038       up-date 2001.06.24

久住山(1787m)と由布岳(1580m) 登頂日1989.05.04 晴れ 単独
阿蘇仙酔峡(5.00)====牧の戸峠(6.10)−−−草千里(6.45)−−−久住分れ(7.00)−−−久住(7.15-30)−−−中岳(8.00)−−−久住分れ(8.25)−−−草千里(8.35)−−−牧の戸峠(9.00-9.30)===由布岳表登山口(12.00)−−−合野越(12.25)−−−マタエ(13.05)−−−由布岳東峰(13.15)−−−マタエ−−−合野越(13.45)−−−表登山口(14.00)====大分市(16.15)
所要時間  久住山 2時間50分 由布岳 1時間55分  ****
                  九州日本百名山の旅(その2)-(52歳)
《久住山》
久住山―久住分れ付近から
まだ明けきらぬ阿蘇仙酔峡を後にした。
外輪山に上り切った展望台で車を止め、 阿蘇の山々をもう一度ゆっくりと眺めた。高岳も中岳もそれに根子岳も深い藍色から、ようやく薄明の中に浮かび上がろうとしていた。  

やまなみハイウェイ(九州横断道路)はまだ行き交う車も少なく快適なドライブだ。牧歌的景観はどこまでものどかな広がりを見せている。九重の山並みが近づく。ひときわ高い山群、あれが久住山、中岳だろう。
登山口の牧の戸峠は標高1330メートル、冷気が肌にしみる。ここから久住山そして九州最高峰の中岳と歩いて、再びこの牧の戸峠に戻る3時間余の軽いコースである。  
水筒を満たして早速出発する。出来れば今日このあと、計画には入れてなかったが、大分市への帰り道になる由布岳にも登りたい、そのために昨日のうちに阿蘇高岳は登っておいた。時間的には余裕で可能だ。  

駐車場からしばらくは観光用の遊歩道を歩くが、すぐに展望の開けた沓掛山の小さいピークに着き、ここで鋭角的に折れた道はちょっとした岩場を梯子で下り、平坦な草原の中を行くようになる。広い草原の道には、シヤクナゲ、アセビ、ドウダンツツジなどの花が目につく。  
朝風の心地よさに足の運びも軽やかである。潅木のトンネルに入って少しづつ高度を稼いで行くと、再び伸びやかな草原の道となる。起伏も感じさせないような穏やかな道は、更に広々とした草原となる。西千里の草原である。

右前方に定規で引いたような形のいい三角錐の久住山見えてきた。原を過ぎると盆地状の小さな窪地があって、避難小屋の建つ久住わかれである。ここから三角錐の急斜面を岩礫に足を取られながら、直登して久住山頂に立った。一時期九州の最高峰と信じられていた山としては、なんともあっけないほどの登項であった。  
久住の山々を間近に眺め、昨日歩いた祖母、阿蘇の山並みをいとおしむ気持ちで じっと見入って飽きない。  

頂上から中岳との鞍部に下り、そこから登り返して広い背尾根に出る。御池が天狗ケ城の岩場を水面に映していた。中岳の項上までは一投足。
中岳1790メートル。祖母、久住、大船山・・と、九州本土最高峰は二転三転の結果、この中岳が正真正銘の最高峰として決着したという経緯がある。九重、飯田高原を一望し、図体の大さい大船山、重量感溢れる三俣山、そして硫黄山は黄色く染まった噴気口からいく筋も白い噴煙を上げている。遠く由布岳の双耳峰が私を招いている。

御池の縁を回り、久住分れからは、来たときと同しコースを下山した。駐車場は入り切れない車が道路にひしめき、 渋滞を起こしていた。



《由布岳》
久住山を予定より早く下山できて、大分市への帰り道の途中になる由布岳へ登れる見込みがついた。ところが登山口へのやまなみハイウエイがGWの大渋滞、到着したのが12時ちょうど。30〜40分の予定が3時間もかかってしまった。
取れる時間は2時間だけ。コースタイムの半分で歩くことなど、どう考えても無理。それでも諦めきれずに時間切れとなる途中まで登ることにした。

出発したのは12時5分、午後2時までには下山しなくてはならない。1時間だけ登れるところまで登って、そこで引きかえそう。
カメラ、水筒だけの身軽さで小走り気味にスタ ートした。何だかレースにでも臨んだような気分だ。少しでも山頂近くまでという欲望を抑えきれずに、早足の私が更に輪をかけて急ぐ。こんに時刻からでも登る人はけっこう多い。それをゴボウ抜き抜いてぐんぐん飛ばす。
合野越までは林道のゆるい登りだか、その先から道は電光型にジクザグコースとなる。傾斜はかなりある。下りて来るハイカーと間断なくすれちかうが、道を譲りあう時間が惜しく、目が合わないよう、うつむいたままでひたすら足を運ぶ。ときにはジグザグを避けて、藪の中をショートカットするなど涙ぐましい。

頭上が開けて気持ちの良いカヤトとなる。予定の1時間にはまだ少し余裕がある。もしかすると山頂まで行きつけるかもしれない。いっそう脚に力が入る。登る人、下る人をすり抜ける異質な自分の動きが可笑しくなる。
露岩や岩礫に変わった道を、息をはずませながら頑張ると、東峰、西峰の鞍部マタエだった。ここでちょうど1時間だった。東峰はすぐ目の上にある。帰りは下りだから1時間はかからない。簡単に登れそうな東峰へ岩を攀じ登り、山頂に立った。
まさか登れるとは思わなかった。明瞭に眺められたのは鶴見岳のみ。1分も惜しんでただちに下山にかかった。
下りの時間は、登りが超特急だったこともあって、登りに要した時間とたいして違わない50分だったが、予定の2時には登山口へ下り立つことができた。
昨日につづき、今日も2山の登頂となったが、思いのほか疲労感は小さく、余裕を持って大分市へ向かうことができた。

この9年後、1998年5月に由布岳西峰へ登頂しました。
西峰への登頂記録はこちらへ