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山行報告-上ホロカメットク〜富良野岳(1920m、1912m)
北海道(十勝連峰) 2001.07.27 単独
コース 十勝岳温泉(7.30)−−−富良野・上ホロ分岐(8.10)−−−1893m稜線分岐(9.00)−−−上ホロカメットク山(9.10-20)−−−稜線分岐(9.30)−−−三峰岳−−−富良野岳(10.45-11.05)−−−富良野・上ホロ分岐(12.10)−−−十勝岳温泉(12.45)   十勝岳温泉入浴後、道央高速経由恵庭岳登山口へ
2001夏・北海道の山旅(8)
上ホロカ山頂から十勝岳を望む
 チロロ岳かペンケヌーシ岳へ登る予定で、パンケヌーシ林道のゲートから2、3キロ入った1号橋のたもとのスペースで一夜を過ごした。登山口まで入っておけば、夜明けと共にそのまま登山に取りかかれて便利とは思ったが、ヒグマも怖いし、林道のとばくち近くにしたのだった。  

昨夕は青空がどんどん広がって、夜中は満天に星が輝き、渡道はじめての快晴に明日の登山がおおいに楽しみだった。  
一夜明けて空は快晴、勇躍林道奥の登山口へ自動車向けた。昨日登らずに引き返したがすでに登山口も確認してある。ルンルン気分で車を走らせて3、4キロ「あれっ!」道が消えて目の前に忽然とあらわれたのは土砂の山、大きな崖崩れが発生していた。小山のような土砂に林道は跡形もなく埋まっている。昨日夕刻、草刈の作業員の自動車が下って行ったが、そのあとの出来事だろう。降り続いた雨が原因と思われる。
これではどうしようもない。  
それにしても、昨夕登山口まで入らなくてよかった。あの崖崩れは簡単には復旧できない。あわや閉じ込められるところだった。  
機先を制せられた無念さはあるが、不幸中の幸いであった。  

予定変更で楽古岳を目指した。ところが日高から南へ向かって走ると快晴が嘘のように平取あたりから雨が降っている。南部はこの先も天候の回復は見込めないという予報。またまた方向転換、Uターンして北へと走りながら登る山を考える。
そして思いついたのが上ホロカメットク山だった。  
上ホロカメットク山頂
夜明けから南へ北へとさんざん運転して、上ホロ登山口の十勝岳温泉へ到着したのは7時30分。ここは富良野岳の登山口でもある。6年前に妻と富良野岳へ登ったことがあってよく覚えている。  
すぐに登山開始。今から富良野岳を目指す登山者もかなり見かける。  

観光客向けの道から安政火口の噴煙が立ちのぼっているのが見える。その上に上ホロカメットク山が険しく聳えている。  比較的なだらかな道を40分ほどで富良野岳・上ホロ分岐となる。ほとんどの登山者は富良野岳へ向かって、ここから上ホロへのコースは人影がない。  
早速エゾノツガザクラなどの高山植物が出迎えてくれる。勾配は厳しい。コースもかなり荒れ気味だ。沢状の道をどんどん高度を稼ぐ。丸太で作られた階段も大半が壊れて、かえって歩きにくくしている。大汗をかいてハイマツや低潅木帯の丸太階段を登りきると、目の前の展望がようやく開けた。巨岩のそそり立つ安政火口の縁にコースが出来ている。火口側は赤茶けて垂直に切れ落ちた絶壁、行く手も峨々とした岩の道がつづく。別の星にでも降り立ったような荒々しい光景だ。岩塊の先には上ホロが待っている。  

主稜線まで簡単に登りつけそうでいてなかなか登り甲斐がある。足元に咲く高山植物に励まされながら岩礫を登りきってようやく主稜線に立つと、歓声を上げたいような展望が広がった。目の前の上ホロ、緑のビロードをまとったような富良野岳、三角錐が見事な十勝岳。  
登りついた稜線には「上富良野岳 1893メートル」の標柱が立っていた。  
上ホロまでは少し下ったあと登り返すが、わずか10分ほどだ。  
十勝連峰の中でも展望の優れた上ホロ山頂は、火山砂礫の大きな円頂で、展望を遮るものはいっさいない。噴煙を高々と上げる十勝岳、その背後遠くに見えているのは旭岳など表大雪の山々、さらに石狩岳、ニペソツなど東大雪の諸峰、西には芦別岳から夕張の山々。そして富良野岳、その背後は日高山脈だろうか。素晴らしい展望を満喫した。  

上ホロを後に、再びもとの上富良野岳の標柱に戻り、ここから富良野岳を回って行くことにする。
富良野岳山頂
気持ちのよいなだらかな稜線を下って行く。ガスが上がってきて、富良野岳が見えたり隠れたりしている。岩の大きなコブを一つ越えて、もう一度登ったピークが三峰山1868メートル。山頂は岩片で覆い尽くされている。振りかえると上ホロはすでに遠く、十勝岳は小さくなっていた。  
再び小さなコブを越えたりして行くが、高山植物が急に豊富になって足が止まる。イソツツジ、コガネギク、エゾツツジ、ハクサンボウフウなどうっとりするようなお花畑がつづく。  

花に見取れているうちに登りの勾配を意識するようになって、十勝岳温泉から上がってくるコースと合流する。富良野岳の肩にあたるところだ。 
ここから、一気に傾斜が厳しくなる。コースタイム1時間となっているが、ゆっくり歩くと確かにそれくらいはかかりそうな急登だ。  
最初の険しい急登が少し緩むあたりから、楽園のようなお花畑が展開する。広大な富良野岳の斜面をトカチフウロの薄紫の花が隙間もなく覆っている。そのなかにウサギギクやチシマキンバイの黄色花が点々と彩りを添える。これを目にして驚嘆の声を上げない人は一人としていないだろう。北アルプスでも南アルプスでも、大雪でもこれだけ見事なお花畑を目にしたことはない。まさしく花の名山である。  
肩の分岐から30分で一等三角点富良野岳山頂に達した。2度目の山頂である。 早速シマリスの歓迎を受ける。エサをねだって足元までチョロチョロて出てくる。食べ物を手の平に乗せると、前足をかけて食べている。かわいい。  
山頂はすっかりガスに包まれて展望は閉ざされてしまった。  

富良野岳山頂のシマリス
肩まで下り、ここから上ホロへの道を分けてまっすぐ十勝岳温泉へと下った。  
この山旅でぜひとも登りたかったチロロ岳、楽古岳をパスしてしまった悔いは残るが、代わりに素晴らしい高山植物を見られたことに満足して、十勝岳温泉凌雲閣の温泉で汗を流し、そのあと滝川IC〜恵庭ICを経て、支笏湖畔近くの恵庭岳登山口へと自動車を走らせた。

《出会った花》 エゾノツガザクラ、アオノツガザクラ、ミヤマキンバイ、ヨツバシオガマ、エゾコザクラ、ハクサンボウフウ、チングルマ、イワギキョウ、コガネギク、イソツツジ、エゾヒメクワガタ、ジムカデ、イワブクロ、メアカンキンバイ、コケモモ、イワウメ、エゾツツジ、ハイオトギリソウ、トカチフウロ、ミヤマリンドウ、ウサギギク、ウスユキトウヒレン・・・・など
1995.8月、十勝岳温泉からの往復はこちらへ