追想の山々1343  up-date 2003.06.12                                         山岳巡礼のトップへ  山名索引表へ

ニノ峰(1962m)〜三ノ峰(2120m) 登頂日1998.10.04 単独 晴れ
上小駐車場(5.50)−−−登山口(6.05)−−−山越跡(6.15)−−−六本桧(7.00-0.5)−−−剣ケ岩(7.40-45)−−−避難小屋(8.32-45)−−−ニノ峰(9.10-15)−−−避難小屋(9.40)−−−三ノ峰(9.45-10.100)−−−避難小屋−−−剣ケ岩(10.40-45)−−−六本桧(11.20)−−−登山口(11.55)−−−上小池(12.05)===鳩ケ湯温泉入浴===福井IC===奈良自宅(19.00)
所要時間 6時間15分 ××× ×××
ニノ峰
≪福井県最高峰 ニノ峰≫ 

井県大野市JR勝原駅から上小池キャンプ場へは、舗装された良い道が通じている。
上小池夜営場奥の駐車場で車内泊。ここは三の峰登山の起点でもある。駐車場からは三の峰を正面に望むことができる。夕日を受けて高度感たっぷりに聳える姿は、登高意欲をかき立てる。
満車に近かった駐車場は、夕刻にはすべて去り、後には静かな夜が訪れた。あと二日で中秋の名月、夜空には月が煌煌と照っていた。

ニノ峰は石徹白から別山、白山へと通じる美濃禅定道の途中にある目立たないピークで、このピークが福井県の最高峰となっている。
美濃禅定道コースはかなりの長丁場で(往復12時間10分)日帰りは厳しい。一方これから登ろうととしている上小池からのコースは「鳩ケ湯新道」で石徹白よりかなり短く(9時間40分)日帰でも悠々と往復可能である。

駐車場から標高差1300メートル余の三ノ峰へ登り、そこから高度差で150メートルほど石徹白方面へ下ったところに二ノ峰のピークがある。コースが短いと行ってもかなり歩きでのあることには違いがない。早発ちが無難だ。
明るくなるのを待って5時50分に駐車場を出た。打波川まで下り、川沿いの車道をしばらく遡上して行く。約15分で三ノ峰への道標の立つ登山口がある。取付きは急だが、まもなく緩くなってしばらくは足慣らしの樹林の道がつづく。「山腰屋敷跡」という表示の小平地があるが、その痕跡をとどめるものはない

この先杉林を過ぎるあたりから本格的な登りとなってきた。
頭上の雲は少しづつ剥がれるように取れて青空が広がってきた。雰囲気のいい落葉樹林となり、急登もあまり苦にならずに足が進む。
登山口から1時間弱、標高差約500メートルを稼いで「六本桧」という稜線へ登りついた。予定は1時間40分だったからだいぶ早かった。あたりには数本の桧が見える。かなり汗をかいている。水筒の水を一口ふくみ、喉を潤してから休憩なしで次のポイント「剣ケ岩」めざす。
気持ちいいブナなどの樹林を登って行く。樹相は次第に低潅木に変ってきた。痩せた稜線上のコースからは展望も開けてきた。駐車場からも見えたていた剣ケ岩、その先の三ノ峰はまだまだ彼方だ。
左手の山腹にダケカンバの樹林が広がってきた。しばらく緩んだ道は、ふたたび胸突く本格的な急登となる。目前の剣ケ岩の上に出るまで、息のきれる登りがきつかった。岩の上にたどりついて振り返ると、歩いてきた稜線が足下に長く延びていた。ここで5分間の小休止にする。

三ノ峰まではまだ距離がある。さらに登りがきつくなってきたのが足への負担でわかる。
白山の肩あたりと思われる、ゆったりとした稜線が遠望されるようになった。
低潅木帯を一歩また一歩と高度を上げながら足を運んでゆく。昨日平家岳を登ったばかりだが、それほど疲労感は残っていない。緩むことのない急な稜線は一息つく余裕も与えてくれない。はるか頭の上に見えていた三ノ峰も、いつしか目の高さに近づいてきて、気がつくとだいぶ勾配も緩んでいた。真っ赤な実をつけたナナカマドが朝露に濡れてキラキラと陽に輝いている。
登りついた三ノ峰の肩には避難小屋が建っていた。
きつい登りだったが思ったより早かった。コースタイム5時間10分を2時間40分だった。一投足の三ノ峰と、その向こうには堂々両翼を延ばした別山が、貫禄で構えている。小屋の近くで腰を下ろし、別山を眺めながら10分余の休憩を取った。見飽きない別山の眺めだった。

目的の二の峰へはここから標高差150メートルほどを下って行かなければならない。帰りに登りかえすことを考えると気が重い。
避難小屋の背後に回り込んで見下ろすと、針葉樹の黒木のピークが二の峰のようだ。それはピークというような明瞭なものではなく、稜線の一地点に過ぎないように見える。
草地の斜面を下って行く途中で、登ってくる人に出会う。今朝石徹白を出発して来たのだという。これは大変な健脚者だ。健脚を自負する小生も脱帽だ。40歳前後だろうか。三ノ峰へ登って引き返す予定とのこと。二ノ峰は三角点がどこにあるか探せなかったらしい。

下りきったところが「水呑権現」で、近くの沢で水が得られるという。昔建物でもあったのか、整地された平地になっている。二ノ峰はそこから平胆道をしばらく行った先にあった。
登山道脇に「二ノ峰」の標柱が立っているが、そこはピークではない。一番高いころは笹の茂みの中のようだ。背を越す笹薮を強引に分けて進入してゆく。登山道へ戻れないと困るから、目印の樹木などを記憶しながら、奥へと入って行ってみた。針葉樹の中にダケカンバが10本前後かたまっているところが一番高い地点と思われる。三角点がないか探してみたが、なにぶんにも深い笹の中のこと、とても探し出せるものではなかった。
一応福井県の最高地点ニノ峰に立ったということで、登山道へ戻ることにした。ほんのわずか登山道から入っただけなのに、笹の中に背丈まで埋まってしまうと、周囲は何にも見えない。もう方向感覚がなくなってしまう。それでも無事に笹を抜け出て登山道へ出ることができた。

三ノ峰までの登りかえしは足にこたえた。一歩また一歩とスローペースで足を引きずり上げ、さきほどの避難小屋を通り過ぎて、三ノ峰山頂へ立った。
空は晴れ渡り、山頂は素晴らしい展望台であった。目の前には高山の雰囲気満点の別山、その奥には加賀の名峰白山、昨日登った平家岳を探すと、幾重にも連なる山並みの中から、井岸山・平家岳の二つが寄り添って並ぶ姿がはっきりと確認できた。荒島岳、能郷白山など奥美濃の山々、御嶽山・乗鞍岳・穂高、槍、後立山と連なる北アルプス・・・・・しばらく素晴らしい展望に見入った。

まだ9時45分、二ノ峰という寄り道がなければ、別山登頂も十分にできた。
しばらく休んでから同じ道を上小池へ向かって引き返した。
好天に恵まれて、次々と登山者が登ってくる。今まで知らずにいたが、なかなか人気のあるコースのようだ。
下山後、奥越の秘湯という「鳩ケ湯温泉」で入浴、小さな浴槽で温泉気分にはちょっと遠かったが、汗を流し一仕事となし終えた満足感で家路についた。  
  
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