「一国を滅ぼすのに、若い世代に危険を冒すことは、ばかげていると教え込むくらい手っ取り早い方法はない」
見つけた!とうとう。
僕がディック・フランシスという作家の名前を知ったのは、 カヌーイストの野田知佑氏の書籍に引用されていた、この言葉からだ。
「利腕」の主人公シッド・ハーレーに出会って以来、熱烈 なフランシス・ファンになってから、前述の引用文に出会う のをいつの日かと心待ちにしていたのだ。
そしてフランシスを読み始めてから10年目にして ようやく引き当てたのだ!
その本は、かねてから訪れたかったカナダのバンクーバー島 の温帯雨林の海、クラクオットサウンドを旅した際の相棒であった。 これからの人生で接点を持っていくであろう人たちと出会えた旅の話は、本編とそれるので、話を戻そう。
「本命」でスタートしたディック・フランシスの競馬シリーズは、「騎乗」までで36作に及ぶ。
今も毎年1冊のペースで新刊を出してくれており、そのどれも、質の高い作品である。
本の虫のような濫読家の僕にとって、全作品を読破するのには数ヶ月で足りるだろう。 それなのに10年もの歳月を費やしてしまったのには理由(わけ)がある。
それは、競馬シリーズは、落ち込んだり人生に疲れた時に、勇気と元気を与えてくれる僕のバイブル となってしまったからだ。
困難に立ち向かって潜り抜けていく主人公たち。負けて挫けてボロボロになっても、 再び立ち上げって自分を貫く男たち。 困難が待ち受けている北の川や海での単独行の際の常備薬として、 本当にヘコンでしまった時の特効薬として、常に数冊ストック書架にストックしてある。 だから、決して暇つぶしに読んでしまえるような、シロモノではない。 そう僕の宝物に他ならない。
そんなこともあって、僕のソロの旅や、立ち上がれなくなった時に、フランシスの作品は、一冊、そしてまた一冊と読まれていったので、10年間で16冊しか読むことができなかったのだ。 ああ、そして、まだ半分以上も読んでいないというこの幸せよ。
読まずに死ねるか!
これを読破するまでは天はオレを殺しはしないだろう、、、 などという変な願かけみたいな気持ちもある。
このヘンテコ?な気持ちがわかっていただける人となら、僕はすぐに意気投合し、友達になってしまうだろう。
一作一作が読みきりでまさに珠玉の作品集。
ただし、同一人物が主人公となる「大穴」→「利腕」→「敵手」は、 この順に読まれる方が年代順ですっきりします。
さて、上述のフレーズがどれに出てくるのか?は、あなた自身が、邂逅してみてください。
フランシス・フリークのあなた、ダメですよ。答えを教えてしまっては。
本との出合いは、人との出会いと同義だと思う。導いてくださった野田知佑氏、
そして今も精力的に、新作を放ちつづけてくださるディック・フランシス氏に心より感謝します。
PS。私のオススメは、「本命」「大穴」「利腕」「興奮」「血統」です。