べさはや第7話
「川ガキ、つんつん椿に出遭う」

2002/08/03

べさはや陸の部(第7話)陸の部第2日。

(8月3日)人吉中川原公園〜川辺川ダム建設予定地のつんつん椿

いよいよ最終日。行程的には4日目になるが、 ようやくここまできたというのが正直な感想だ。

本日は、昨日からの、僕と清川さん、たも酎に加えて、 海の部で大活躍の親分も参加。

やまばばこと川辺さんと、そのご子息のぬらりひょん君と、 こなきじじい君も参加してくれることになった。

阿蘇を取材されてこられた高橋ユリカさんも、気合いが入って いるし、中川原クラブからも、田副さんと、とやまさんが参加してくれた。 そして昨年のべさはやメンバーのRyuさん。 おなかの中にちっちゃい命を宿した裕子ちゃんもサポートで参加。 けっこうにぎやかなパーティになったゾ。 いいぞいいぞ。最後は盛り上がらなくちゃね。

昨夜高熱でダウンしていた、ちゃわんやさんも、ひらめちゃんと 途中合流してくれたのが嬉しい。 諫早の旅から、ほとんどずーと行動をともにしてきただけに、 少し斜めに構えて照れる表情が、やっぱり心強い。

川辺川に今まで何度も足を運んだのに、川と遊んでこなかったのが、 悔やまれるーというユリカさんに思い出の権現河原でバトンタッチ。

清川さんのラスタ号に倒れこんだ。 カーステレオから、THE WEEDの、さかいぶんせいさんの曲が 流れてくる。澄んだ声と延びていくメロディが心地よい。

 誰か 応えておくれ 

 ここには本当も 嘘もないと

 やがて 気づきはじめる みんな 精一杯だと

 やがて 気づきはじめる もうすぐ パーティーは終わる。

精一杯つっぱしてきた、べさはやのゴールはもうすぐだ!

MTBでの遡上は、川辺川の良い場所で、川に浸かり、遊びながら行く ので、本当に気持ちがいい。 天気は最高。川辺の水も澄み、参加者みんなの笑顔が、素敵だ。 ひらめちゃん、やまばば様のペダルも軽やか。

サポートカーもお祭り気分

川辺川を隅から隅まで知り尽くした川ガキ現在進行形「たも酎」 の名ガイドぶりが素晴らしい。

球磨川、川辺川のラフティングカンパニーの草分け、 「ランドアース」の看板ガイドを務めたことのある「たも酎」は、参加者の様子 を見ながら、楽しませてくれる上に、きちんと時間どおりに行程を進めていく。

臨機応変、どちらかといえば、いきあたりばったりの、 「べさはや2002隊」が、最終日は時間に余裕をもって、椿の前 のゲートにゴールしたのは、「オレが川ガキ」たも酎のおかげだ。

ゴール地点には、たくさんの人が迎えてきてくださっていて驚いてしまう。 土地収用で揺れる米田さんを始め、ダムに反対される漁民の方々の 出迎えを受ける。

準備でお世話になった原総代が、米田さんに連絡をとってくださったのだ。 漁民の方々には、田副さんから連絡を入れていただいていたそうだ。

一応、場所作りということで、椿の樹に会いに行くことにした。 つんつん椿の樹は、遠くの対岸から目にしたことは、何度かあったが 、間近でお目にかかるのは、初めてだ。

つんつん椿は、それはそれは、見事な樹だった。 何本かの椿がよりそいあい、それが大きな一本の樹のようになっている。

椿の根本には、何度か斧を入れて切ろうとした後があった。

裕子ちゃんが、国土交通省や会社の指示の下で働いている 現場の方のつらさを感じると言っていたが本当にそう思う。

椿の精の撥が当って、金縛りに会い、切れなかったのだという説も あるが、人間の善意を、僕は信じたい。

本当に、無事でよかった。そして、此処をゴールに選んで本当によかった。 最後のセレモニー用に飾ったりするのは、なにかしっくりいかなない。 このままでいいじゃないか。 横断幕や、プラカードは人々に持ってもらうことにする。 一旦、引き返そし始めたとき、

「ちょっと、登って、ヨカですか?」

といって、親分が椿の樹に登り始めた。

まるで、森に帰ったゴリラのように、樹と一体になっている姿が あまりにも自然のままなので、笑ってしまう。 僕も椿の樹に抱きついてみた。

ウエールズ地方に、辛いことがあったら、樹を抱いて癒してもらう という風習がある。樹に腕を回して、樹をかき抱くのだ。 耳を幹に宛ててみた。 優しい気持ちが溢れてくる。 此処までの行程で、出会った人たちが、光景が、 脳裏に浮かんで、目頭が熱くなった。

新聞社の方々が到着されたので、撮影用に、もう一度ゴールシーンを再現。 不ぞろいのゴールで、NG。とほほ。ようやくOK。

ゲートを乗り越え、椿の樹に全員で向う。

諫早で、何が行われているのか報告し、集まったみんなで、 山の神、川の神への祈りを朗読。

「山の神・川の神への祈りの儀」

山の神々よ、川の神々よ、諫早の海は堤防で締め切られたままで、 我々が届けた命を育むはずの水は、このような姿に変わり果てた。

今、この場所も巨大なコンクリートのダムで堰切られ諫早と同じ 運命をたどろうとしている。

私たちは、恐れを知らないこのような暴挙を許すことができない。 この山々から湧き出る命の水が人々の心を洗い流し、この思い が再び諫早まで帰り、宝の海がよみがえらんことを切に願う。

一人一人に、諫早湾の調整池から運んできた牡蠣殻を、 椿の樹に供えていただく。 おおげさでなく、これといって、大してことはやらなかったけど、 さわやかな空気が流れる。

みんな本当にありがとう。心から感謝した。 田中ユージさんの山小屋で昼食と軽い打ち上げをやった後、 かわなべ妖怪兄弟と、ユリカさん福地さんとで、川辺川ショートツーング。

ずーと泳いで下る現役の川ガキたちをニコニコ眺めながら、 いろんなものを洗い落として漂った。 ゴールの境田橋で、佐世保からきてくださった赤司さんと会った。

中川原に戻っての打ち上げは、気持ちよい夕暮れの中スタート。 減流水リレーの参加者の方々が、次々やってくる。

陶芸家の高場さんや、やまめ釣り師の鮒田先生、佐藤さんたちが、 球磨川水系のネットワークを通して、水の循環の大切さを唱えた 大イベントで、お年寄りから子供たちまで、大勢の参加者が、 球磨川水系支流の源流から水を汲んで、河口の水島神社で、 海に水を返すのだ。

僕の親友のナベちゃんが、この源流水リレーが大好きで、 大好きで、なんども裏方として活躍していたっけ。

水合わせの義に、参加させていただく。 国土交通省や、土木関係の会社がスポンサーについたこの 運動を僕は、否定しない。 大きなくくりで、みんな川の大切さを訴えていこうというスタンス も理解はできる。

だけど、自然を壊しておいて、「自然を大切に」という看板を、 乱立させるセンスの悪さを感じてしまうのは何故なのだろうか?

絶滅したトキが笑っている、あの薄ら寒い看板 が脳裏によぎる。ダム反対と心で思いながらも、それを言えない としたら、それは、何にもならないのではないだろうか?

諫早干拓事業で、締め切られたため、漁場が荒らされた漁師 の方々が、フネや漁具の借金返済のため、国から救済金を借り入 れて、怒りの声が上げられなくなったという話を思い出した。

一度、他人のふんどしで相撲をとってしまったら、行き着く先は、 泣き寝入りしかいのではないだろうか?

今まで、兄貴分のように、尊敬していた高場さんに、説教めいたこと を言ってしまう。僕の口上をだまって、うけとめられたあと、

「でも、どっちも必要やろ?」

と返された言葉に、心の底からは、納得できなかった。

言いたいことを、声を高らかに言う。 自分の立場を明確にする。そうしたからこそ、 今年の「べさはや」の旗の下にも多くの人が集まってくれたのだろう。

源流水リレーに比べると、所帯はかなり小さいけどね。

八代漁協の藤原さんが、あさりを大量に差し入れしてくださった。 田添さんが、やまめを10匹釣り上げてきた。 楽しい宴の始まりだ。

「ふき」のマスター、ヒロシさんの豪快なウンチクが飛び、 トビさんの、ジャンベが鳴り響く。

いつのまにやら、中川原のブルージーナイトが始まっていた。 ほっとしたとたん、体が軽くなったのか踊りまくってしまう。

きのこやさんのギターが心地よい。爺のラッパ。たも酎の太鼓。 タカちゃんのハスキーヴォイス。心地良い疲労が襲ってきた。 あー、やってよかったよー。。。。

川原での上映会は、なんと佐藤巨匠自らレクチャーを受けるとおいうおまけつき。 さすがに、佐藤きょしょーのコメントは的確で、もう少しこうだったら、、、 というのが残念でならないが、、今回の旅が、またまた蘇る。

今回、べさはやの旅を企画したのは、諫早の現状を自分の目で見てみたい。 触れてみたいという想いがあったからだ。

そして、その実態を、川辺川を守る運動を続けている人に伝えたい。 そんな想いを原動力にして、たくさんの人をまきこんで、つっ走ってきた。

昨年のべさはや隊メンバーからもらったタスキをどうにか繋げたいという律儀(?) な僕の性格も幸いしたので、無事ゴールを迎えることができたのだろうか?

いや、そんなことはない。 今回の旅が成功したのは、諫早の悲しみ、諦めない闘志、生き物たち の鎮魂歌、球磨川、川辺川を愛する心、そんな人々の想いが結集して、 ひとつの流れを作ったからだと思う。

旅は生き物だ。今回の「べさはや2002」は、何度も中止の危機を迎えた けれど、それを乗り越えられたのは、この旅をやりとげたいという僕の想い というより、なにか、もっと大きな力、大自然の、地球の力が、働いたから だと思う。

人々の想いを人力と繋ごうととしたからこそ、大いなる力が味方してくれ、 そして人が集ったのだろう。

今回、いろんな熱い想いを、美味しいお酒を、暖かい思いやりを、 優しいまなざしを、かけねなしの笑顔を、素敵な素敵な宝物たちをプレゼント してくれた参加者のみんな、メンバー全員、サポートの方々、遠方で応援して くださった皆様に、心から感謝します。 (会えなかったけど、到着を見守ってくださった谷崎さんにもこの場でお礼を 言わせてください。) 人々の輪と、その力。そして、諫早干潟と川辺川にリスペクトして、今回の 旅の報告を終えたいと思います。

耳をふさぎ、目を閉じ、口を閉ざしていることは、子孫から預かっている大切 なモノ、山や川や海を、悪魔に売りとばすことにほかならない。

Noといわなければ、Yesと同じなのだということを今回、あらためて実感しまし た。

お金という「くびき」に縛られて生きることは、本当に生きることを放棄してしまう ことです。仕事やしがらみから、声を上げにくいのは、わかりますが、 今、上げないといつ上げるのでしょう?

明日、明々後日?来月?来年?

今、気づいた此処、から始めなくては。 土地収用法、漁業権、利水裁判、公開討論会、いろんなところで、 善戦しています。とどめをさすのは、政治です。

八代で、川辺川ダム反対の市長が誕生しました。 人吉で、そして熊本県で、反対の首長を立てれば、確実にダムは止り、 新たな流れが生まれます。 それは、諫早も同じです。 僕らの手に、僕らの未来をとりもどしましょう!