'97 BIG SALMON RIVER

遡上する大鮭の群れ。透明な流れ。原始の川がそこにある。
オーロラの下で眠り、野生動物と出会う川旅の日々。
ビッグ・サーモン川

【 行動日 】 1997/8/4-13
【 場 所 】 カナダ/BIG SALOM RIVER→ YUKON RIVER
【 コース 】 QUIET LAKE to CARMACKS
【漕行距離】 360km
【 時 間 】 10days
【 天 候 】 晴れ4割。くもり4割。雨2割。
【 水 量 】 普通。平年並




1997 SUMMER,BIG SALMON RIVER紀行文

出発はQUIET LAKEという湖の中頃から。WHITEHORSEより車で3時間位。搬送料金は90カナダドル。(当時)一番安かったUpnorthに頼んだ。

QUIET LAKEの出発点。遥か向こうがBIG SALMONの流れ出しだ。

距離はBIG SALMONがおよそ240km。これを8日間で。YUKONに入ってからは120km。これを2日で漕いでカーマックス着。バスでWHITEHORSEに25ドルくらいで戻れます。隔日運行。

QUIET LAKEから川に入ったとき、スプルースの先端に止ったワタリガラス(イヌイットやハイダ、アサパスカインデイオの神話に登場するおちゃめな鳥)が、と喋りかけてきた。
「神話の世界にようこそ!」
流心にフネを乗せると目前でサーモンの大ジャンプ!

澄んだ流れの中でフライロッドを振る。狙いは真っ赤なビッグ・サーモン!

BIG SALMON RIVERは瀬が現れる度に、その名に嘘いつわりなく身体を真赤な婚姻色に染めたビッグ・サーモンが群れ泳ぐ。あちらこちらで新しい命を生出そうと、懸命な営みを繰広げている。一匹のメスをめぐって2〜3匹のオスが壮絶な場所争い。
子孫を残すために、遥か3,000kmの彼方のベーリング海から遡上してきたその身体は傷つき、ボロボロになっている。だが、新しい子孫を残そうとする営みは、その姿とは対照的に生命の力強さと輝きに満ち溢れている。
パドルを動かす手を止めて、流されながら産卵のシーンに見とれていると、メスの産卵を促そうとでもするかのように、口を鋭く尖らせたオスが、巨大な全身を宙に躍らる。巨大な身体が宙に舞う。いてもたってもいられない。気づくと俺のからだは水中に潜っていた。
サーモンを水中でみるこのド迫力!生き物の圧倒的な存在感!
卵にちゃっかりありつこうとするグレイリング(背鰭の大きな美しい魚)。
マスの子供が流れの中で懸命にホバリングしているのも可愛らしい。
息を飲むような美しい水の中の光景。
突然、水の冷たさが身体に染み入ってくる。
震えがとまらない。満面笑みを浮べながら痙攣してしまう。
フネに乗り込み流れに戻ると、行手には美しい山々が広がり、極圏特有の透き通るような透明感のある空を、雲が飛ぶように流れていく。川は蛇行しながら、スプルース(トウヒ)の森へ吸い込まれていった。笑いがとまらない。気持ちいいぜ。日差しもあったけえ!プチン、ぷふぁあ〜。Blue Beerがうまいのなんの!ささ最高じゃあ〜!
川での出会いもよかった。
使い込んだファルトボート(クレッパー)を仲良く漕ぐ老夫婦。

戦争ごっこのノリが楽しいドイツ青年団。ライフル撃ちまくりのワルガキ軍団だ!

金髪の男の子と二人でのんびり、旅するお父さん。放浪途中の日本の青年たち。
さまざまな人々との出会いとしみるような別れ。別れたあとの不思議なあたたかさ。

荒野のド真中で熊と闘い(ほんとは小熊をカヌーで追いかけまわしただけ)、鮭(1m以上!)とファイトし(これは本当)、4回掛った。
夜はオーロラの瞬きの下で、たき火を見つめる生活。(8/4,14に見た)
ライフル(ドイツ人から借りて撃ってただけ)と釣竿で食料を調達し、毎日が、心ときめく旅立ちを繰返す黄金の日々。

ライフルで的撃ちをして遊ぶ。反動で体が浮いた。

タキシードに黄色い蝶ネクタイはおしゃれなヤマセミ君。木々の枝から枝へと飛交う。
くるくっるるるっと喉を鳴らすのは可愛いリスたち。
小さな小さなコガモが見つからないようにと、こっそりと泳いで逃げていく。
川の真中に立って水を飲んでいるムースの親子。
白頭鷲(イーグル)、鷹(クマタカ)が極北の澄んだ空に舞う。
フネのデッキにはシングルモルトのスコッチと冒険小説。
100%の自由!ひとりぼっちの幸せさ!
いつも荒野の風と野の光の中で生きる。
そこには、男の望むものが全てがあった。。。
最高でした。BIG SALMON RIVER。お奨めです。
今は下る人が急速に増えているため、(ドイツ人が多い)かつての秘境といった趣は薄れた感があるが、人が少ない7月初旬、寒さの厳しい9月なら川も静かになるだろう。サーモンが多く、オーロラが見え始める8月中旬がベスト。

ファンキン・クレイジー一ノ瀬氏のビッグサーモン漂流記。(1998.9/7-9/13)