あとがき
「俺の理想は、持ち物はすべてバックパックの中に入れるだけにして、風のように 自由に移動して暮らすことだ。それに入りきれないものは、このファルト・ボート のように”折りたたみ式 ”にして携帯自由であるべきだ。家も机も女も、みんな 小さく折りたたんで、邪魔になったら惜しげもなくポイと捨てなければならない。
 男は常に身一つで生きるべきである。そうなのである。 」 野田知佑氏

野田知佑は川の上を行く風である。
 日本で数少ない自由に生きていける”風の男 ”である。
 先日、ふとしたことで出会って話を聴いた。
 川を通じて、壊されて行く日本の川のこと、
 若き日々のこと・・・
 やはり野を行く風の男であった。
 握手してもらったその掌は 驚くほど小さかった。
 ごつごつしていたけどとても柔らかかった。 そこには、BOY,姐さんと同じ匂いがあった。
そうだ、いかんいかん、北海道旅行のあとがきを書いていたんだ。どうでしょうか?楽しんでいただけたでしょうか?これは僕が北海道の川を旅している時にかきとめておいた手帳をもとに書き起こしたものです。文章なるものをあまり書き慣れていないため、できるだけ飾らず、正直に書くようこころがけました。もしこれが目にとまって少しでも何かを感じていただけたらその人と僕は友達になれるでしょう。最後まで読んでくれた人どうもありがとう。
 ところどころ野田知佑さんの文章を引用させてもらってます。これ(この旅行記)がまあおもしろいじゃないかと思われた方は氏の本をぜひおすすめします。何千倍もおもしろいです。ぜったい三回は読める。そんな本はちょっとないです。でも三回めを読んでいると悲しくなるかも知れません。日本の川の現状はそれはもうひどいもので、(長良川の河口堰問題は有名ですが)それはもう治水という名のもとにどんどんコンクリートの川に、汚水の川にかわりつつあります。

下っているときそれはその川にその光景との別れを惜しむときでもあるのです。
もう次の年にはまったくちがう川になっているのだから。
大好きだった娘が強姦され、すれた商売女になってしまうのを目のあたりにするのと同じなんです。そんな時感じる憤りややるせなさ、自分の無力感ときたらもう・・・ 少し脱線しました。

さて、これは旅行記と名打っていますが、BOY,姐さんという登場人物を得て水を得た魚のように物語はつっぱしっちゃいます。うーんなんというか、青春私小説といったものになってしまう。自分で言っててハズかしいな。題して”三人の放浪者 ”とでもつけておこうかなあ。

姐さんは計画どうりオーストラリアに渡ってバイクで元気に一周中(旅の無事を祈ります)。

BOYは家にはしばらく(納得がいくまで)帰らないとのことだったので音信不通。今ごろは沖縄のビーチあたりにいるかもしれないな。
このふたりを思い出すときその顔が笑っている。へへへ。楽しくなる。どこかで生きていてくれるだけでいいんだね。僕にはそういう友達が他にもいる。一緒に時を過ごしたのはBOYとは一日半、姐さんに至っては一日もたっていないのにこんなに自分の中でふたりの存在が大きいとは。一緒にいる時間じゃないんだな。どうか元気でやっていますように。そしていつか旅の空のしたで再会しよう・・・。
本州の川と比べて、北海道の川は野性味がとてつもなく濃厚だ。まったく人間の臭いがしない場所がところどころある。ぜひ単独行をすすめる。まる一日誰とも出会わないということも可能だ。このプレッシャーは凄いものがある。時期は人の少ない七月前半、九月後半がよいだろう。人がいない時期に旅すると多くの場合得をする。ねがわくば、裸の美女と宴をというのがあればなおいいな。

この旅の最後には、まだまだつづきがあって釧路の街でひと騒動あるのだけど・・・割愛。染みました。本当に。人のあたたかさっていいね。最後にもうひとつ大きな握手(おみやげ)をもらって帰りました。旅はいいぞ。旅は。さあ、持ち物はすべて背負えるだけにして旅にでよう。
      1992,2,14 たいちょお


あとがきのあとがき
 これは、僕の親しい友人やオラオラ隊の隊員共にどうだいいだろう攻撃の一貫としてぶちかましていた文章です。川旅のスタイルや思想に野田さんの影響をモロうけていた時でずっと眠っていたのあえてUPしました。 野田知佑氏の文章があるからいいや。ヒトマネはしょうがない。自分の世界をつくらなくては意味がないんだ。というので凍結してたんですが、Niftyサーブのパソコン通信の、FENVやFCAMPで僕の故郷徳島の那賀川、吉野川を守ろうとしている、政野淳子さんのダム日記や山本まりさんのトマッシー物語、川辺川の佐藤さん、にしだようこさん達に触発されたのが動機です。

僕には大したことはできないだろうけど、川旅人としてのメッセージなら発信することができる。どう、川って大切なんだよってのならできるのではと思ってUPしました。 是を書いた当時に比べると今は予想どおり、日本の川をめぐる状況は悲惨の一途です。ただ、本当に大切なものに気付いた人達の草の根ネットは確実にひろがり、あの建設省を動揺させたのは凄い事でした。今年は心を入れ換えてどんどん川へ出かけようと思 います。そして、何が行われていて、何が正しいのか、自分が今何をすればいいのかを探してみようと思っています。

  最後まで読んでくださったひと感謝感謝。感涙。感激。熱烈抱擁。雨霰。
ありがとう。 素敵な川旅を。どこかの空の下で......
1996 Apr 12 たいちょお