タイ・コーン川&パイ川


タイとミャンマーの国境近く山深い谷あいを縫う自然の川

コーン川&パイ川
行動日 1998/12/29-30
場 所 タイランド/北部メー・ホー・ソーン県
コース Kong River N.P.HEADQUARTER
【漕行距離】 40km
12時間(2日間)
天 候 晴れ
水 量 少なめ

タイへいくことになった。タイ発、日本ストップオーバー、北米の往復チケットを持っているから、嫌がおうでも、タイに戻らねばならない。このチケットを利用しはじめてはや4回目、出発した時も含めると、タイに訪れるのは5回目になる。初めてのときは、到着したとたんに盲腸になり、バンコクの病院にかつぎこまれまがらも、きっちりムエイ・タイ(タイ式キックボクシング)を観戦し、2度目は映画「戦場に架ける橋」でも有名なカンチャナンブリーを訪れ、近くのエラワン国立公園で滝遊びをした。3度目は南の楽園プーケットまで足をのばして、アンダマン海に浮かぶ真珠、スミラン島での無人島キャンプと奇岩洞窟の宝庫、パンガー湾でシーカヤックを楽しんだ。昨年は油断して、だまされたりもしたけど、タイは大好きな国のひとつだ。屋台料理は美味いし、人々の笑顔が輝いている。都会の喧騒が苦手な僕でさえ、バンコクの雰囲気は嫌ではない。日本の高度経済成長時代のようなしっちゃかめっちゃか具合が、少年時代の懐かしさを感じさせるからだろうか。

さて、今回は何をしよう?タイの人々が口を揃えて一番美しいと絶賛するスミラン諸島は、もう既に、体験済みなので海はパス。今度は川か山で遊ぼうと漠然と計画をたてる。しかし、タイの川といえば、バンコクを流れるチャオプラヤー川のような茶色く濁って不衛生な川というイメージが強い。山しかねっかな、こりゃあ。山かあ、そういやタイの北部はカラフルな民族衣装で知られる山岳民族が住んでいるじゃないですか!そんな小さな村村を訪ねるトレッキングでもしよう、調べるといろんなツアーがいっぱいある。さっそく我が家の旅行コーディネイター、聖子嬢に進言した。 数年前にチェンマイを訪れトレッキングを体験済みの彼女は
「そんなの、ただの観光だよ。そんなんでいいの?」
と自由な旅での素朴な土地の人々との出会いを期待していたオイラが、観光地化された場所にがっくりして文句を並べはじめるという経験を嫌というほどしてきた彼女は、前もって予防線を張ってくる。(やるな) うーん。そっかあ、それもなんだかなあ。はてさて…
首長族の可愛い女の子(メーホーソン)

他になんかないんかいとロンリー・プラネットのHPでカヤックとリバーをかけて検索してみると、1件ヒット!パイ川のリバー・トリップとある。どこや?それ?なにやら川に浮かんだカヤックの写真まである。まあ、いいや。最近我が家のHPのコンテンツも増やしてないし、タイの田舎の川を下るというのも一興ではないか。メールで問い合わせると、今は乾季で水が少ないけど、なんとかツアーはできるという返事がきた。OKOK!そこに決定!聖子はアクティビティが無事に決まったので、ほっとした表情でバンコクからラオスとの国境を旅しに1週間先に出発していった。もう慣れっこになった一人ぼっちのクリスマス・イブを過ごし、仕事納めを蹴って5度めのタイランドへと旅立った。

27,Dec.‘98
チャオプラヤー川をエクスプレス・ボートが爆音を上げて疾走していく。バンコクの悪名高い交通渋滞を避けて、川運を利用して外国人が集まるカオサン・ロードへ移動していると、お坊さんをはじめ通勤するOLや学生、いろんな人が乗り込んでくる。そんな光景をみているのはなんだか楽しい。川の上は、風が涼しい。やっぱり川の上は気持ちいいな。流域にあるワット・アルンやワット・ポーといった有名な寺院などの荘厳景色が目を楽しませてくれる船旅を楽しんだ。 これで、5バーツ(15円)なんだから、乗らない手はない。カオサンでは、ムエイ・タイのジムを冷やかし、買い物をした後、夕暮れのチャオプラヤー川の美観を楽しみながら再びボートでホアラン・ポーン駅へ戻った。今夜の夜行列車にのってバンコクから北上すること710km、北部の大都市チェンマイを目指すのだ。

28,Dec.'9
夜明け頃に、朝もやの森を映し出した車窓の風景が次第に開けてきた。となりのコンパートメントに乗車していた元気な女の子達と話す。日系企業で働いてて里帰りするとのこと。遊んでいると、列車は定刻、9時にチェン・マイへ到着した。チェン・マイはカラフルな民族衣装で知られるリス族やメオ族といった山岳民族の村をめぐるトレッキングの起点でもある。人口約16万人、北タイ第一の都市だ。今回の目的地パイ川へのアプローチ場所となるパイへは、チェンマイからバスで、さらに北西へ4時間も走らねばならない。山道をぜいぜい言いながら、バスは走った。3時過ぎにようやくパイに到着。パイはメインロードが一本きりの小さな町だ。西洋人が多いのが第一印象。ここは、すこし離れた場所に温泉がある他はこれといって見所があるわけでもない。明日から川旅のセットUPしに、ラフティング・ツアー会社のタイ・アドベンチャー・ラフティングを訪れた。対応してくれたのは、優しそうなフランス人のおばさんで、代表のギー(フランス人)は今、ラフトの回収にいっていて夜になれば帰ってくるとのこと。


ついでに、町外れを流れるパイ川まで足を延ばす。現れたパイ川はなんと、 川幅10m、深さ30cmの小川じゃないか! のんびりした田園をさらにのんびり流れるパイ川。 こんな川下れるんかいや?と不安にならないでもないけど、 すっかりタイのマイ・ペンライ精神に染まったオイラは、 来ちまった今となってはじたばたしてもしょうがねえ、 なんとかなるさあ〜とかまやつフレーズを口づさみつつ、 さらさら流れいくパイ川をぼんやり眺めるのであった。 レストランで腹をみたしたあと、 タイ・アドベンチャー・ラフティングへもどり、明日からのツアーを申込む。東南アジアの場合は空路の荷物制限が20kg以内なので、カヌーを持参しての自由ツアーは難儀だ。カヌーのレンタルだけやっているところは皆無なので、自然ツアーを利用してしまう。なんだか、信条とこのHPの趣旨に反するなあ。熱い国では、面どくさがりやになりさがるオイラであった。いかん。いかん。

代表のMr.ギーはすでに帰ってきてて、自分で経営するフランス料理店でウエイターをやっていた。リバーツアー会社とゲストハウス、そしてフレンチ・レストランと多角経営だなあ。カヌーかカヤックを借りたいと頼むとインフレータブル・カヌーを貸してくれることになった。

Mr.ギー、NO DUMSのTシャツがいいね!

29,Dec.'9
朝9時にダットラに乗り込んで、出発点へ向かう。どうやら出発はパイからではなくて違う場所からだった。やれやれ、一安心。いくら水位が低い時期でもラフトボートでツアーするんだから、アレはないよなあ。パイを流れるパイ川はそのままメー・ホーソーンという街へ流れていくのだが、ツアーのコースは、その丁度中間くらいの場所に合流するコーン川という支流からの出発になる。パイからさらに1時間半車で揺られて出発点へ向かう。同乗者には、同じツアーに参加するフランス人の一家。10歳と5歳の可愛いお嬢さん達は助手席に。うしろの野ざらしシートにお父さんとお母さんが載りこんできた。
親父さんの名前はマーク。いかにもフレンチといった顔つきで少し頭が薄いが優しそうな人だ。奥さんはルイーズといって手足の長いフランス美人。ツアーガイトのチャイ青年と、オイラと聖子の5人を荷台で揺らしながら、ギーが快調にハンドルをさばいた。

フレンチ・ファミリー。オレ〜オレオレ〜。

ソッポンという小さな村でタイの企業に勤める4人組みも合流して、さらに道中は続く。ギーから教えてもらたことには、メーホーソンへと続く道路を一番先に作ったのは、第二次大戦中の日本軍だそうな。ビルマからの撤退の時など、この道路で数々のドラマ繰り広げられたんだろうな〜とか考えている内に出発点に到着。
コーン川の出発地点もまさに小川。水中の水草が青く揺れている。透明度は高い。済んだ流れが蛇行しながら深い森へと吸い込まれていく。いいぞお。フレンチファミリーとタイチームでラフトボート一隻づつ。それぞれタイ人ガイドが着く。
趣味はボデイビル!
パワーあふれるタイチーム

オイラと聖子で3人乗りのインフレターブル・カヌー。これがまたオンボロなフネで、どこのモノだか検討もつかない。何故か12−3歳のジェイコ少年も乗り込もうとする。ギーに聴くととやっぱり彼が川を知っているから、まかせた方がいいとのこと。
まあ、せっかくきたんだから操船させてくれよ。大丈夫だからというとOKしてくれてたが、ジェイコ少年の仕事を取り上げるのもなんなので、前にのってもらい3人乗りで出発。ラフト2艇に続いた。
なんだかなあ。と思っていたがこのジェイコ少年がいないとこのオンボロインフレータブル・カヌーは話にならないシロモノで、後々、彼にはお世話になるのである。
本当に水量がない。わずかの岩と岩の間を縫って小さく蛇行する瀬を越えていく。岩が絡む度に引っ掛かるラフトを追い抜いていつしか先頭に立っていた。前方が開けているのは気持ちがいいもんだ。

うしろから付いて行くと、ツアー・リーダーのオヤジから、木の枝に引っ掛かったビニールのごみを取りいけと休む間もなく司令が飛び、下っ端のジェイコ少年はコキ使われるていたのだが、先頭だとのんびりできるらしく、ごきげんだ。ときおり、カヌーの船体をぽこぽこ叩いてリズムをとっている。鼻歌でも歌っているのだとうか。森のあちこちを見回して、木々の葉のなかにとまっている鳥を見つけ出しては指差して教えてくれた。巨大なカワセミや、尾長鳥が、カヌーに驚いて飛び出してくる。 川の上には左右から木々が張り出し、川面で木漏れ日が揺れている。蛇行を繰り返しながら始終フネは森の中を縫って進んだ。
1時間ほど漕いでランチタイム。よく漕いでるからと、もっと食べなと、一食分余計にくれた。腹が減った時のためにPDFに縛り付け行動食にする。

300mも滝が続くコーン・リバーの休憩地点

再出発して1時間ほどいくと左側の崖から滝が落ちてきた。雨季には幅数百メートルにもでなるという名所の滝だが、乾季の今は、数箇所でチロチロ落ちているだけだった。それでも、直下にいって滝に打たれると、ふとっばされるぐらいパワーがあった。
滝壷で潜ったり泳いだりしてから出発。魚影はそれほど濃くはない。むしろあまり魚をみない。最近ダイナマイトを使った違法な漁が行われ、成魚から稚魚まで一網打尽にされて問題になっているようだ。

今晩の寝床めざして再び出発。しばらくしてフネの底にミズが溜まりはじめた。セルフベイラーが付いているのにおかしいなと思ってよくみると、底のエアーが全然ない!どうやらさっきひかっけた水面化の枝で船体を裂いたらしい。ジェイコ少年が口で空気を送ってくれるが、ボコボコ豪快に底から空気が出て行く。手で探ると10cm以上のかぎ裂きができていた。

それ!ぷうぷうぷう〜!ふくらませ!

聖子に漕ぎ手が少ないフレンチ・ファミリーのラフトに移ってもらい、沈没状態の重いフネをジェイコ少年とふたりでだましだまし漕ぐ。やけになって漕いだら、元気なタイ・チームを追い抜いて、一着で宿泊場所に到着した。ヒジが痛いが、がんばって漕ぎぬいたジェイコ少年と笑いあった。
バンブー小屋。蚊帳の眠りは快適快適。

ここには竹で作った高床式の野ざらしの小屋に蚊帳を吊って寝るだけの簡単な施設と、トイレやシャワーがある。蚊帳で寝るのははじめてなので、面白かった。蚊はこないし涼しく快適な夜が過ごせた。夜はたき火を囲こんで、お国事情談義。みんな品が良い人たちだったので、それほど面白く乱れたりはしなかった。それでもタイ・チームから、タイのアウトドア情報をしこたま仕入れた。とにかくいろんなモノをめぐんでくれる良い人たちだった。

2日目、フネを修理して出発。底からの漏れは止まったが、ボートのあちらこちらから定常的に空気が漏れていくらしく、横のエアースポンソンがすぐにフニャフニャになる。そこで、30分おきに、ジェイコ少年が、ぷはぷは入れてくれていたのだ。本日も快調に空気は抜け、この人間ポンプはフル可動なのであった。スゴイ肺活量だな。

でっかいスッポン捕まえて喜ぶオヤジ

ほどなくして、パイ川に合流。一気に視界がひらけた。水量も増えどうにか瀬らしい瀬や落ち込みも現れはじめた。温泉で休憩したあと、イカダで下っている川漁師の一家と遭遇。
ツアーリーダーのオヤジが巨大なスッポンを200バーツで買っていた。精力つきそう!

川岸に水を飲みに来た水牛や、村外れで泳いでいる少年達が現れはじめる。人里が近いのだろう。竹でつくった取水堰を越えると、ゴールのキャンプ場所に到着した。 もうすこし下りたかったなあ。パイ川をこのまま下って行くと、メーホーソンを過ぎたあたりは、象ツアーのコースになっているので、川を渡る象の親子に出会うことができる。

さらに下ると、カレン族の首長い女性が住む村に着く。観光のロングテール・ボートが行き交っているので、注意が必要。首長族の村からは、ロングテールボートでメーホーソン近くまで川を溯って帰れる。約200バーツ必要。

水牛がこちらをみていた。

出発をパイにして何泊かしながら自由に川下りするのも面白いだろう。

雨季には水量が増えクラス3の瀬が2、3できるとのこと。乾季のこの時期はクラス2が2個所ほどの、のんびりツーリングでありました。

ツアーを終えてメーホーソーンへ訪れ、1999年を迎えた。

新年の托鉢。良い年でありますように!