Prime-Optimus
#5 抽選会会場


「・・・という訳だ。」

ラチェットは皆が集まったラウンジで、かいつまんで話をした。場は静まり返っていた。

突如沈黙を破ってサンストリーカーが立ち上がり、ラチェットを指差しながらランボルを見下ろして言い放った。「ほら見ろ! 俺の言った通りだっただろ!」

「わ、わかった。疑った俺が悪かったよ。頼むから、お前は黙っててくれ」皆の迷惑そうな視線を受け、ランボルが後ろから彼を羽交い絞めにし、部屋の隅に引きずって行った。

「本当に司令官がそう言ったのか?」プロールが渋い顔で念を押した。

「ああ」ラチェットは神妙に頷いた。「司令官が自分のことを話す時は、少なくとも三倍にして聞かないとな。彼は思ったことの半分も言わないから」

クリフが恐る恐る口を開いた。「じゃあ、司令官は奴を好きだってことか?」

「それ以上かもな」

沈黙。

しばらくしてホイストが口を開いた。「じゃあ、ええと、何だっけ? そうそう、メガトロンが司令官をファーストネームで呼ぶようになれば、司令官は心を決めるってことか?」

「そういうことになるな」

ストリークが顔をしかめた。「司令官はそんなことでメガトロンを信じられるのか?」

「向こうがその気かどうかなんて、顔を見りゃわかるじゃないか」リジェがあっさりと言った。

「相手はあのメガトロンだぞ。嘘ついてたって見破れるもんか」チャージャーが睨むと、リジェは肩をすくめて黙った。彼は発言を取り消す気はなかったが、反論するのが面倒だった。

「司令官はそういうのが特に苦手なんだ。だから、それと見てわかる証が欲しいのさ」オプティマス・プライムと付き合いの長いラチェットが言うと、皆はその言葉を信じない訳にはいかなかった。

「その前に、メガトロンがホントに本気なのか、確かめなきゃならないだろ」インフェルノが言った。

「どうやるんだよ」すかさずクリフが訊いた。

「知るか。それを今から考えるんだよ」

「今度通信が入ったら嘘発見器にかけるとか」

「誰か本人に電話して聞いてみたらどうだ?」

無責任な発言が飛び交う中で、プロールが呟いた。「案外、奴は本気かもしれないぞ」

サイバトロンの面々はお互いに顔を見合わせた。

訳がわからないと言うようにクリフが詰め寄った。「何でそう言い切れるんだよ。この地球に来てからだって、奴は何度も俺達を滅ぼそうとしてるじゃないか」

「この星に来てから急にだろう。よく考えてみろ。奴はセイバートロン星にいる頃から、ずっと司令官を狙ってたんだ。それも殺そうとしてたんじゃない。彼を味方につけようとしてたんだ」

「そうだったか?」

「そうだ。思い出してみろ。司令官は何度デストロンの手に落ちたって、最後にはちゃんと生きて帰ってきただろう。それもほとんど無傷でだ。奴らには彼を殺す気がなかったんだ。俺達もだ。俺達はメガトロンに手加減されてたんだ。そうでなけりゃ、俺は少なくとも100回は死んでると思うね」

「そりゃ、あんまり信じたくない考えだな。」アイアンハイドが口をへの字に曲げた。

「でも実際そうだったかもな。戦いの知識も経験もほとんどなかった俺達が大した被害もなく、何百万年もデストロンの連中から逃げ回っていられたのもよく考えたら不思議だ」

ハウンドの言葉を聞いて、スリングとスカイファイアは顔を見合わせた。スリングが無言のまま首を傾げると、スカイファイアは同じように無言のまま首を左右に振った。現在の彼らのデストロンへの対決姿勢と士気の高さからは想像もつかない話だった。

マイスターがプロールに向かって聞いた。「それで、その有難い手加減の理由は?」

「司令官さえ引き入れれば、彼に付いてサイバトロンのほとんど全員が自動的に投降するだろう。司令官は俺達の希望そのものだったんだからな。司令官の判断だったら、納得する奴も多かっただろうし」

「そうかもな。」トラックスが頷いた。「でも何でそんな回りくどいことする必要があるんだ? 力ずくで征服すれば済む話じゃないか」

「そもそもの奴の望みは、セイバートロン星の統一支配なんだぞ。惑星上に二つある内の一方の一族が滅びちまったら、統一政府とは言わないだろ」リジェが言った。

「でも奴らは俺達に戦争を仕掛けてきたんじゃないか」クリフが憤慨した。

「最初は、もっとずっと早く事が片付くと思ってたのかも知れないぞ」プロールが言った。「奴らはきっと、数年かそこらで惑星全土を制圧するつもりだったんだ」

「でもそうはならなかった」ハウンドが継いだ。

「そうだ。司令官が現れて、俺達サイバトロンがデストロンの侵略に抵抗し始めたからだ」

「じゃあ、戦争を長引かせたのは俺達だって言うのか?!」アイアンハイドが声を荒げた。

「そうは言ってない」

「言ってるだろ!」

「まあ、落ち着けよアイアンハイド」拳を握って椅子から腰を浮かせた彼を、ラチェットが制した。「とにかく俺達が行動を起こすしかない」ラチェットは殊更真面目な声を作って厳粛に宣言した。「そうとなれば、まずはくじ引きだ」

「・・・何だよそりゃ」呆れ顔のクリフに、ラチェットはにやりと笑った。

「決まってるだろ。メガトロンに電話する奴を決めるのさ」





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