Prime-Optimus
#8 Finishing Blow


結局、何の進展もないまま時間だけが過ぎた。

サイバトロンの幹部達がその異変に気付いたのは、最後にメガトロンから通達のあった時から数えて20日後だった。

「おかしい」

オプティマス・プライムがテレトランワンのパネルに手をついたままモニターを見上げる姿勢で呟いた。「デストロンの動きが静か過ぎる」

「平和に越したことはないじゃないですか」マイスターが言った。

そこへバンブルがスパイクと一緒に外から戻ってきた。

「やあバンブル。何か変わったことは?」

オプティマス・プライムが訊くと、バンブルは肩をすくめた。「なーんにも。大陸中のどこを探しても、デストロンの影も形もありません。」

週に一度は世界のあちこちで問題を起こすデストロンに振り回されていたのが嘘のように、平穏な日々が続いていた。メガトロンからの通告もぷっつりと途切れていた。

「今まで、デストロンの活動にこんなに間が空いたことはない」オプティマス・プライムが訝しんだ。

「何も面倒がないのはありがたいけど、今までうるさい位活発だったのが急に大人しくなるなんて、反対に気味が悪いですね」

マイスターが言うと、バンブルも首を捻った。「あいつら、一体どこで何してるんだろう」

「メガトロンの奴、周到に準備して、またとんでもないことをしでかそうとしてるんじゃないよね」スパイクが心配そうにオプティマス・プライムを見上げた。

「かもしれん」

彼は顎に片手をやって考え込んだ。

「このまま何事もなければ良いが、スパイクの言う通り、油断は禁物だ。我々にできるのは、油断のために警戒を怠ったりしないことだけだ。もうしばらくは向こうの出方を見ることにしよう」




ところが、それから半年が過ぎても一向にデストロンは姿を現さなかった。そして、問題は思わぬ処からやってきた。

「司令官」外部との通信を終えたマイスターが困惑顔でオプティマス・プライムの元へやってきた。

「どうした?」

「アメリカの議会が、我々サイバトロンへのエネルギー供給を70%カットすると言ってきました」

「それは本当か?」

「ええ。自分達の身は自分達で守れるから、我々サイバトロンの助けはもう必要ないと。それが嫌なら、例のレーダー撹乱技術をそっくり提供しろと言っています。」

「・・・それは以前はっきり断ったはずだ。」

「あれは、対デストロンというよりは、人間の兵器に対して効果を発揮するものですからね」プロールが言った。

アイアンハイドが苛立たしげに唸った。「人間共め、ちょっともしない内にデストロンの脅威を忘れて、人間同士の争いを思い出したって訳か。まったく何て勝手で好戦的な生物なんだ!」

「いずれにしても、我々が人間同士の戦いに口を挟む訳にはいかない。どうしたものか・・・」

「我々のソーラー発電施設だけでも、通常のエネルギーは賄えます。しかし、以前のように連日朝から晩まで戦闘となると・・・」プロールは首を振った。「とても足りないでしょうね」

マイスターが続けた。「それからもう一件。中近東にある某国が、彼らの土地へのサイバトロン基地の移転を打診してきています。費用はすべて向こうで負担すると言っています」

「何だって?」アイアンハイドが変な顔をした。「どうしてそんなことを?」

「おそらく、我々を敵国への牽制に利用しようというんだろう」プロールが説明した。

オプティマス・プライムはしばらく黙り込んだ後で、小さな声で呟いた。「メガトロンの狙いはこれだったのか」





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