Prime-Optimus
#10 お開き


司令室の方から歩いてきたアイアンハイドに、ラウンジでたむろしていたメンバーが注目した。

ラチェットが訊いた。「司令官は?」

「メガトロンと話してる。」アイアンハイドは手近な椅子に腰掛けた。

マイスターが言った。「それはまた、早く連絡がついたな。奴らやっぱり、基地にいたのか?」

「そうらしい。こっちが散々気を揉んで世界中走り回ってたっていうのに、奴らは何もしないでボケっと遊んでいたみたいだぜ」

「果報は寝て待てってか?」

「まさにそれだ。俺達は勝手にあれこれ心配して、プレッシャーを受けてたんだからな。俺達は、メガトロンの奴にまんまと乗せられた訳だ」プロールが言った。

「やれやれ、奴らが何もしないことが、一番恐ろしい打撃になるなんて思いもしなかったぜ」

ハウンドが言うと、そこで会話が途切れた。それぞれが思いに耽った。

ラチェットが呆然と呟いた。「ついに戦争も終わりか」

「イマイチ実感が湧かないな」肘掛に頬杖を突いたまま、天井を見つめてアイアンハイドが言った。

「それはそうと、あっちのことはどうなったんだ?」

リジェが振ると、アイアンハイドは彼に顔を向けた。「あっちのことって?」

「ほら、メガトロンが司令官を個人的に手に入れるって宣言してただろ」

「・・・ああ。あれね」

「まだ有効なんじゃないか? メガトロンは、司令官の責任を問わないと言っている。彼を殺すつもりは微塵もないんだろ」

スモークスクリーンの言葉を聞いて、プロールが凭れていた椅子から跳ね起きた。「当然だ。と言うより、そんなことできるはずがない。もし司令官が死刑なんかにされてみろ。またサイバトロンは武装蜂起で1から戦争のやり直しだ」

「それはそうだな」ラチェットが頷いた。

「司令官の気持ちはどうなったんだ?」

アイアンハイドが言うと、マイスターが返した。

「あの様子からすると、まだ奴の本意を信じられないんだろうな。それでも降伏を決心したってことは・・・」

「俺は、司令官が諦めてしまったんだと思うが」ラチェットが苦々しく言った。

アイアンハイドが唇を噛んだ。「俺達はまた司令官に不本意を強いることになるのか」

「わからない。だが今、司令官は今までにない所まで追い詰められていると思う。いつ切れてもおかしくないんだ。滅多なことはないだろうが、注意するに越したことはない」

ラチェットが言うと、アイアンハイドは頷いた。「司令官から目を離さない方がいいな」

しばらくして、リジェが言った。「ともかく、戦争が終わって、俺達もセイバートロン星に帰れるんだ。それは素直に喜ぼうじゃないか」

ハウンドが頷いた。「そうだな。だが油断はできないぞ」

再び話が途切れたが、誰も席を立とうとしなかった。

椅子の背に凭れかかって、アイアンハイドがぼんやりと呟いた。「しばらくは、撤収の準備で忙しくなるな・・・」





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