Prime-Optimus
#14 All or Nothing
自分の後を追って来る気配が遠ざかったのを感じても、オプティマス・プライムは速度を緩めなかった。
彼はサイバトロンメンバーの元に戻る気はなかった。無闇に回転数を上げて走り続けたエンジンはオーバーヒート寸前まで加熱していたが、思考は不思議と冷えていた。
彼は都市の区域を渡す橋に差し掛かった。これを越えればその先は打ち捨てられた広大なスラムで、一度入り込んでしまえば容易に見つかることはないと思われた。
これから自分はどうしたらいいのだろう、と彼が思った瞬間、轟音と共にレーザーが行く手の橋脚を吹き飛ばした。
「?!」
トップスピードが出ていた彼が急に止まれるはずもなく、オプティマス・プライムは崩壊する道路と共に落下した。セイバートロンの微弱な陽光の届かない谷底は金属製で、まともに衝撃を受ける自分が助かるとはとても思えなかった。
死を覚悟した彼の体を、空中で捕まえる腕があった。接触の衝撃から回復した光学センサーに映ったその姿に、オプティマス・プライムは呆然とした。
「メガトロン! どうして・・・」彼の言葉はそこで途切れた。
メガトロンが口を開いた。
「なぜ逃げた? 誰もお前を糾弾したりはしないということを、お前は知っているだろう。儂の言葉がまだ信じられないか?」
オプティマス・プライムは自分を抱えたまま話すデストロンのリーダーから視線を逸らした。
「私は最低だ。・・・だってそうだろう! 私はお前の言葉を信じながら、その実お前の気持ちを心から信じてはいないんだ! ・・・私はお前の愛情を受けるに相応しくない。」
搾り出すような声でオプティマス・プライムは訴えた。メガトロンは彼の言葉を黙って聞いた。
「マトリクスはロディマスを継承者と認めた。サイバトロンは彼の下で上手くまとまるだろう。お前との約束を反故にするような真似は決してしない、それだけは保証する。・・・だからもう、私のことは忘れてくれ。頼む。メガトロン、お前は早く、皆の所へ戻るべきだ。皆お前が戻るのを待っている。こんな所で時間を無駄にすることはできない筈だ。」
オプティマス・プライムは居たたまれない気持ちで、一方的にまくしたてた。
「そうだな」メガトロンは頷いた。「だがその前にまだやることが残っておる。・・・儂の望みはまだ半分しか叶っておらん」
オプティマス・プライムは彼の意図することが理解できずに動きを止めた。
「お前だよ。司令・・・いや、もう司令官ではなかったな。」メガトロンはオプティマス・プライムを片腕で抱え直し、空いた方の手で彼の顔をそっと上向け、彼の青色の双眸を覗き込んだ。「オプティマス・プライム。儂はお前が欲しい。」
オプティマス・プライムは視線を外せないまま、左右に首を振った。「私・・・私は・・・」
「お前を愛している、オプティマス。・・・まったく、何度言わせるつもりだ?」メガトロンは揶揄うようににやりと笑った。
オプティマス・プライムはようやく気付いた。
メガトロンは笑った。「それで? 今回は信じてくれるか?」
「”Yes”・・・”Yes”、メガトロン・・・」
メガトロンは目を細めた。「その言葉を、儂は長い間待っていた。」
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