Prime-Optimus
#16 Steel Bride
主役が失踪した劇場は、演説で場を持たせるのは無理と判断したロディマスの暴走により、屋外ライブ会場と化していた。要するに彼が歌っていたのだが、その反響は、これが意外に良かった。
「クソッタレ共、もうそろそろウチへ帰って寝る時間だぜ!」
ロディマスが叫ぶと、客席からは猛烈なブーイングが返された。
「勘弁してくれ。俺は不眠症じゃないんだ。それに明日も仕事なんだぞ」
更にブーイング。
ロディマスはオーバーアクションで困ってみせた。
「誰か、明日の新聞配達を代わってくれる奴は?」
歓声が上がった。
ロディマスはギターを片手で振り回した。「今返事した奴、忘れんなよ・・・1、2、3、4!」
唐突な彼の合図に他のパートの演奏が重なり、会場は再び爆音に包まれた。ちなみに、彼以外の演奏メンバーは各自で適当にご想像願いたい。
それから2曲をこなした彼らが更に次の曲に雪崩れ込もうとした時、上空から降ってきた声に、全員が頭上を見上げた。
「待たせたな、諸君」
声の主はメガトロンだった。問題は彼が連れた、というか、より正確に言えば、彼が腕に抱えた人物の姿だった。思わず目を疑うその光景に、人々は動きを止めた。
「司令官!」
サイバトロンのメンバーから、驚きと落胆の入り混じった悲鳴が上がった。
決まり悪げなオプティマス・プライムは何か言いたそうな顔で、しかし大人しくされるままになっていた。
ロディマスも唖然として言葉を失った。
「な、何をするんだメガトロン」地面に足がついて解放されたオプティマス・プライムが、小声で抗議した。
「わざわざ入り口から入って通路を通り、階段を上がってくるのは時間の無駄だと言ったのだ、オプティマス」メガトロンが何食わぬ顔で答えた。
「そ、それはそうだが、何もこんな・・・」
「細かいことを気にするな。」メガトロンは手を伸ばし、オプティマス・プライムの項をあやすように軽く叩いた。
「さあ、続きを始めるぞ。ロディマス・プライム!」メガトロンは議定書の広げられた机の方に歩いて行った。
その場に残されたオプティマス・プライムはそれ以上言わず、やれやれというように首を振った。
ほんの数十分前とはまるで違う、彼のメガトロンへの態度に、再びサイバトロンのメンバーから野太い悲鳴が上がった。
観客席の最上段に近い場所で、リジェが笑った。
「何だ。彼ら、すっかり上手く行ったようじゃないか」
「ああ。」サンダークラッカーが暢気に感心して頷いた。
「ボスの馬鹿力も、こういう時は様になるなあ」
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