アブラクサス以外に、「アブラサクス(Abr
asaks, Abrasax)」、「アブラクシス(Abr
aksis,
Abraxis)」とも呼称される。二世紀初葉、アレクサンドリアで教説したとい
われる、初期グノーシス主義の宣明者、バシレイデース(
Βασλειδης, ho, Basileidees)の創造神話に登場する
アルコーンの名前。ヒッポリュトスの『全異端反駁』において報告されてい
る処によれば、バシレイデースの宇宙創造神話においては、「汎種子 pansperma」
と呼ばれる独特の概念が現れる。しかしその体系においても、「宇宙」と「超
宇宙」の分断が起こり、「宇宙」に取り残された愚かな支配者は、自己を至
高者と錯誤し、世界創造の業に着手するが、まず最初に、息子を創造した。
この者は、自称至高者よりも遙かに優れ、叡智と美を備えていたので、至高
支配者は喜びに満たされ、彼を自分の右手に座らせた。この「座=場」を、
バシレイデース派では、「オグドアス」と呼んだ。
このオグドアスの場には、無量無数の事物や生き物が生成され、そこに、
365の天があったとされる。そして、これらすべてを支配するのが、至高
支配者のかの聡明な息子であり、彼は、365天の支配者として、その数
字の名前を持っており、「アブラサクス」と呼ばれた。……ギリシア語は、
他の多くの古代語同様、「文字数字」システムを備えており、アブラサク
ス(
Αβρασαξ)を構成す
る七つの文字(つまり、
α, α, α, β, ξ, ρ, σ)の数
を合計すると365となるのである……。アブラサクスは奇妙な姿をしてい
た(頭は鶏、両脚は蛇で、胴体は人間、そして両手に楯と鞭を持っている)。
彼は、ユダヤ神秘主義思想のカッバラーに取り入れられ、諸至高霊=アイオー
ンたちの王とされた。また、「abracadabra」と云う呪文は、アブラサクスの
名より派生したとも云われている。アブラクサスの名は、宝石や石などに刻ま
れていることが多く、そのような石を「アブラクサス石」とも称し、それら
は、護符・魔除け・まじない等の目的で使用された
参照 : 〈
アブラクサス・アイオーン詳細説明〉