オグドアスとは、ギリシア語で、「八個のもの」或いは
「八組体」、また「八番目」の意味である。プトレマイオス派を代表として
(または、ヴァレンティノス派一般において)、プレーローマのコ
ア圏域とされる。
プトレマイオス派の創造神話に従えば、原初、あらゆる認識を越えた、
完全なる至高アイオーンのビュトス(深淵)別名プロパテール/プロパトール(原
父,先在の父)が存在した。プロパテールは栄光の原理であり知られざるアイオーンであ
った。プロパテールの本質よりして、存在の「流出」が起こる。それは最初、
「種子」として彼の伴侶たる女性至高アイオーンのシーゲー(沈黙・静寂)
別名エンノイア(思考)に置かれ、彼女を通じて、第三アイオーンのヌース
(理性)別名モノゲネース(独り子)或いは「万物の父」が生み出された。
またヌースと共に、対となる女性アイオーンのアレーテイア(真理)が生み出
された。こうして、原初の「テトラクテュス(四つのもの)」が生まれた。
ヌースは、その父にもっとも近く、父なるプロパテールの知られざる本質を彼
のみは理解できたとされる。このテトラクテュスより、更に、それぞれ対にな
る、四つの至高アイオーン、即ち、ロゴス(言葉)とゾーエー(生命)の
対、そしてアントローポス(人間)とエクレーシア(教会)の対が生
み出され、流出した。こうして八つの至高アイオーンが原初存在したのであり、
これを「オグドアス」と呼ぶ。オグドアスは真の存在の栄光に充ち満ちており、
それ故、「プレーローマ(充満)」と呼ばれた。八個の至高原理たるアイオー
ンは、それぞれ男性アイオーンと女性アイオーンの対になっており、それら
は「両性具有(アンドロギュノス,
ανδρογυνος,
andr
ogynos, ho)」であり、完全な存在であったとされる(ただし、
以上の概説説明は、エイレナイオスの報告によるもので、ヒッポリュトスは、
これとは幾分異なる、先在の父=ビュトスからのプレーローマの流出過程を報
告しており、その報告においては、「オグドアス」は成立しないことになる。
参照 : 〈
テトラクテュス〉, 〈
オグドアス・プレーローマ構成表〉