大谷光瑞の業績・第三章
第三章・トルファンの出土物
シルクロードにおける大谷探検隊の業績について(H.F氏 論文より抜粋)




 この章では、前後三回にわたって行われた探検での蒐集品、とくにトルファン文化圏より将来された資料に就いて述べたい。



大谷探検隊の蒐集品は大谷コレクションと呼ばれているが、現在それは各国に分散し、また行方不明となっているものもある。なぜ分散したのか、又行方知れずになったのかを・・・その辺の経緯を簡単に説明したいと思います。
 大谷光瑞、自ら参加した第一回探検の蒐集品の一部は京都帝室博物館、今の京都国立博物館で展覧された後、そのまま預けられていた。そして光瑞が京都を去り神戸市外の二楽壮に移った時、蒐集品の一部も移され、そこでも展覧された。だが、直ぐに光瑞は旅順に移り、このとき発掘品の主要部分と蔵書を旅順に運んだ。発掘品の一部は旅順博物館に蔵書は満州鉄道図書館に寄託された。が後に蔵書は旅順博物館の所有するところとなった。この博物館は第二次大戦末期に一時ソ連に接収され、開放後に中国側に渡された。後に敦煌発見の経巻約600巻が北京図書館に移された。以上が現在中国に保管されている大谷コレクションである。


旅順博物舘は中国遼寧省大連市旅順口区寧街42号

 大谷光瑞が日本から旅順へ移った時、かなりの量の発掘品を二楽壮に残していった。後に光瑞は、二楽壮と共に発掘品を久原房之助に売り渡してしまう。
発掘品は久原から、寺内朝鮮総督に渡り、彼はこのコレクションを核に朝鮮総督府博物館を建てる。朝鮮戦争中にコレクションは一時、博物館を離れるが、後ソウルに戻り、韓国中央博物館で陳列される。これが韓国に保管されている大谷コレクションである。
 では次に日本に残されているものに就いて言及したい。
京都帝室博物館で展覧された資料は、第二次大戦末期に木村貞造という人物に売り渡される。そして戦後、国家がこれを買い上げることになる。木村氏以外のルートで買い上げられたものと共に、現在東京国立博物館の東洋舘に所蔵されている。又仏典古写本断片の内五点が京都国立博物館に所蔵されている。そして1947年に光瑞が亡くなったあと、京都の大谷家の倉庫から見つかった資料と隊員が寄贈した日記や記録などは龍谷大学が持つている。又同大学は以前より研究資料として敦煌出土の経典37点を持っている。
 以上が、おおよその大谷コレクションの現状である。しかし大谷探検隊が日本に持ち帰った全ての資料が、所在を明らかにしているわけではない。今まで述べてきたような複雑な経緯を辿る中で、流出してしまったものもあり、又分類、整理がきちんとされていなかった為に、大谷コレクションの全容を解明するのは困難なことになっている。
 本論文はトルファンを中心に大谷探検隊を考察している故に、分散したコレクション中の、わかる範囲でトルファンから出土したものについてリストアップしたい。
まづ、ソウルにある韓国中央博物館に所蔵されているものであるが、同博物館が1986年に発行した図録「中央」によるとカタログに記載されている127点の資料のうち、トルファン、センギム、ベゼクリク、ムルトウク、トユクなどのトルファン文化圏出土のものは、46点あり、次のとうりである。(数字はカタログ、ナンバーとする。)
青色の番号をクリックしてください
 6、壁書供養菩薩像
 7、壁書供養菩薩像
 8、壁書供養王像
 9、壁書悪鬼像
10、壁書供養僧像
11、壁書供養者像
19、佛書断片
27、伏義女?図 
35、塑造人物像
36、塑造天部像頭部
37、塑造天部像頭部
38、塑造天部像頭部
39、塑造天部像頭部
7世紀〜8世紀
9世紀
9世紀
9世紀
9世紀    
9世紀
9世紀
8〜9世紀
8〜9世紀
7世紀後半
8〜9世紀
8〜9世紀
8〜9世紀
8〜9世紀 
8〜9世紀
8〜9世紀  
ベゼクリク
ベゼクリク
ベゼクリク
ベゼクリク
ベゼクリク
ベゼクリク
ベゼクリク
絹本彩色   トユク
麻本彩色   トユク
絹本彩色   トルファン
ムルトウク
トルファン
トルファン
トルファン
トルファン
トルファン

38、塑造天部像頭部

39、塑造天部像頭部
64、明器泥造騎馬武人像
67、明器木芯泥造男女像
69、木製假面
70、木製鳥 
8世紀
8世紀
5〜7世紀
5〜7世紀 
トルファン
トルファン
トルファン
トルファン

69、木製假面

70、木製鳥
71、墓誌
72、蓮花文博
74、手押甌
78、鳳文鐡鏡
79、許由洗耳文鏡
88、陶製鳥頭形注子
89、陶製蓮珠文彩色壺
90、陶製蓮珠文彩色脚杯 
91、陶製蓮珠文彩色三足鉢
100、明器陶製匙
101、木製燈蓋台
104、木製高脚杯
105、木製連珠文脚付容器
106、明器陶製黒彩小壺外
107、明器木製連珠文小壺
   外
112、木製双耳杯
117、絹製靴
118、木製靴
119、木製櫛 
延昌22年(582年)
8世紀
8世紀頃 
3〜4世紀
唐時代
7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀
5〜7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀
6〜7世紀

6〜7世紀
5〜8世紀
5〜8世紀
5〜8世紀
トルファン
トユク
トユク
トユク
トルファン
トルファン
トユク
トユク
トユク
トルファン
センギム
トルファン
トルファン
トルファン
トルファン

トルファン
トルファン
トルファン
トルファン

119、木製櫛

119、木製櫛

次回・第三章Uで東京国立博物館が所有しているものについて公開します

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