第5号 小住宅設計(第11図より第14図に至る)
階下坪数 30坪7合5勺
工費ー1、537円50銭 坪當りー50円
階上坪数 21坪
工費ー672円 坪當りー32円
総工費=2、295円

第11図は書斎及び椽側(たるき)を示したもの、即ち西北面建図で、


第13図は玄関正面を現したもので、中程にある3個の円形の部分は空気抜き穴で、之には金網を張ります。室内の空気は天井に抜け、此所に導かれるので、換気の点に於いても申し分ありません。
第13図正面図共黒色の部分は硝子障子を示したものです。

上記の小住宅の解説は、内外部に西洋風を加味し、最もローコストを旨として設計しました。屋根は瓦葺きで、外部はセメント漆喰塗りです。
セメントは叩き塗り、或いは掃け目入りに致すべきです。
第12図、第14図中の黒色の部分は壁であります。柱は室内に於いては描(えがく)も粉はしきを以って、壁と同様黒塗りとしました。
玄関、広間、書斎等の天井は廻り縁のみ木製とし、平らな部分は漆喰ぬりにいたします。
この種の建築に在りては、天井板に上材を用いることは経費の上より許さず、さりとて杉の無節赤板位は使用したいと思うも、是亦案外高価ですから、いっそ前記の如く漆喰塗りにした方が宜しい。漆喰の色は、白が厭味がなくて宜しいが、好みにより適宜の薄色を配しても悪くはありません。
この間取りに於れば、客は玄関広間より階段を昇りて、直ちに階上の客室に至り、婢僕(はしため、しもべ)は裏階段より茶菓を運び得るのです。
それから都合によっては階下の夫妻寝室を階上寝室に移し、下の方を客室に用いても宜しいのです。
平成16年1月3日
|