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議員インターンシップ参加者のレポート

子育て支援について

立命館大学 法学部 溝口陽子

1.はじめに
 現在、経済的基盤が弱い、子育てに関する不安が強い、など様々な理由から、少子化が目に見えて進行してきている。多くの少子化対策がなされてはいるが、出生率はなかなか上がらないという現状がある。しかしながら、子供が欲しいと思う人は多いため、適切な対策をとることで、少しずつ改善出来ることであると思われる。少子化は、日本における社会システムが大きく影響することではあるが、本レポートでは、茨木市における子育て支援策について、問題点の指摘、および、具体的な提案をしていきたいと考えている。

2.現在の支援策全体の問題点
 様々な支援策が茨木市ではとられているようだが、ここで私が非常に問題に感じているのは、多くの支援策があっても、すべての家庭に行き届いているとはいえない、ということである。例えば、経済的支援策には、年齢制限や所得制限があり、また、留守家庭児童会は小学3年生までとなっているし、保育所の入所要件は非常に厳しいものであるといえるだろう。こんな状況では、いくら支援策があっても、すべての家庭に対策や支援が行き届くはずはない。制限を考えれば、支援策を十分に利用出来ている家庭は、多くはないと考えられる。それでなくても、保育に関するサービスのニーズは多様化してきている。出来るだけ、多様なニーズに応じられるようにしていくことが、これからの子育て支援には必要だと思われる。これらのことから、新たに対策をおこなう前に、現在ある支援策を、より充実、強化させ、多くの家庭が受けられるようにしていくことが大切であると考える。

3.具体的な提案
 2で述べたように、今ある支援を充実させることが、第一であると私は考えている。ここで、上記のことについて、4つの点に分けて詳しく述べようと思う。
@保育所
 女性の就労意欲が高まると共に、就労形態も多様化してきている。待機児童の問題を考えれば、量的な整備も重要な課題であるが、就労形態の多様化により、単に量的に整備するだけではなく、多くのニーズに応えられる機能が求められる。例えば、夜間・深夜の認可保育所制度をつくることである。認可外保育所において、こういったニーズを受け止めている場合も存在するようだが、設備面、人員配置の面では質の問題があり、財政的基盤がないことが、低い水準の保育環境を生み出しているとも言える。次に、保育所の入所要件も考え直す必要がある。保育所は、子供の安全を保護するだけでなく、年齢に応じた発達保障を担っている。家庭に保護者がいる場合、安全は守れても、集団生活を送ることは出来ず、他の子供に対する思いやりや、社会的に必要なことを身につけることが難しい。「保育に欠ける」意味を保護者の都合だけで判断するのではなく、子ども自身の発達の観点から考え直す必要があるのではないだろうか。そして、保育所選択における、本質的な情報の基盤整備も大きな課題である。1997年の児童福祉法改正によって、保育所の選択申請が保育実施の条件として法定化されるのと同時に、市町村への情報提供が義務付けられ、各保育所の名称、所在地、開所時間、定員、保育内容などが一覧にされ、閲覧が可能になった。しかしながら、どの保育所がどういう点で優れ、どういう点で課題があるのかという質に関する情報が不足している。保護者間のうわさによる情報も、一定の役割は果たすが、主観に基づく評価であり、確かなものとは言えない。保育の質の、客観的で専門的な評価に基づく、わかりやすい形での開示が求められる。決して、レッテル的なものではなく、よりよい質のサービスを作り出してゆくための手段と言える。公費負担によって運営されていることからも、保育所が、保育の中身の評価をきちんと受け、開示する義務があるとも言える。また、保育所の地域貢献も求められる。具体的には、地域に対する育児相談や育児学習、交流機会の提供などが挙げられる。保育所を利用している子供だけではなく、地域の福祉資源として活動することが、地域の子供が安心して、豊かに育つまちづくりにつながる。そして、子供だけでなく、地域の高齢者や障害者とも積極的に交流する機会をつくることが、子供の豊かな発達につながるだろう。そういったネットワークの形成は、高齢者や障害者の経験や潜在能力を発揮する機会をつくるうえでも、意義がある。

A留守家庭児童会
 学童保育は、ここ数年、非常に大規模化してきており、時間の延長などもなされてはいるが、まだまだニーズに応えられていないのが現状である。まず、学童保育が小学3年生までとなっている点である。小学4年生以上の学童保育を望む意見は、他市町村でも多く見られる。ニーズの多さや、就労形態の多様化からも、せめて、春休み、夏休み、冬休みの長期休暇の受け入れを検討していくべきである。また、大規模化にともない、指導員の人数が少ないという問題も出てきている。学童保育の意味からも、指導員への十分な教育、研修を実施したうえで、指導員の人数を増やす必要がある。また、冷暖房の充実、畳の張替えなど、施設の充実も検討していく必要がある。

B子育て支援のネットワークづくり
 子育て支援センターが設置され、多くの子育て家庭に利用されているため、これを核として、今後の子育て支援のネットワーク化を進めることが非常に望ましいと考えられる。その際、より地域に根ざした支援とするため、市役所はもちろん、保健所や児童相談所などの関係機関や、NPOなどの活動を含めて、情報提供ネットワーク化を進めていくことが必要である。また、地域の子育て支援という観点からは、時間と体力的にゆとりのある高齢者を含めた、子育て後の世代を活用することが非常に有効なものであると言える。

C経済的支援
 わが国では、児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、扶養控除、扶養手当など、様々な経済的支援が存在する。しかしながら、それぞれ問題もある。例えば、児童手当制度は、支給対象の範囲が限定されており、義務教育終了前児童の12.9%しか受給していない(諸外国では100%が受給)。また、公的な経済的支援は、社会保障と税制と通じる混合システムによって行われているが、累進課税のもとでは、扶養控除は高所得層ほど減税効果が大きく、低所得層は対象にならないなど、公平の視点から問題がある。税制の扶養控除の効果が支配的であり、児童手当の効果を弱めているとも言える。子供の数が制限される主な原因の一つが、子育てコストが大きいということが挙げられているが、現在の制度は、経済的支援としての機能が弱いと考えられる。子育てにかかるコストとして、保育料、児童諸手当、教育・医療・住宅費などが挙げられるが、国の対策として、十分に機能しているとはいえないことを考えると、経済的支援に関しては、地方における、対象範囲限定が緩やかな、独自の制度を検討する必要がある。予算の問題があるが、未来に向けた投資を考えるのであれば、もっと子育てコストに着目した政策が考えられるべきである。

4.結論
 多様なニーズに応えられるようにすることや、ネットワークを作っていくことにより、子育て不安の解消や、育児と仕事の両立は可能なものであると考えている。子育てコストについては、一から考え直し、何らかの支援策が必要不可欠である。

 以上のことを踏まえて、現在ある茨木市の制度を強化し、経済的支援については、独自の公平な制度をつくることが、少子化における子育て支援には有効であると私は考える。

参考文献
国立社会保障・人口問題研究所『少子社会の子育て支援』(東京大学出版会、2002年)




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