ときめきDiary Ten After Year
〜早乙女優美〜
 久しぶりの実家で。
 久しぶりの自分の部屋で。
 優美はこうして懐かしい机に向かってる。
 誠のうちの生活ももう慣れて、逆に実家が違う家みたい。
 ここで勉強していたんだよなと思うと、懐かしい。
 
 一人自分の部屋で懐かしむ優美。

「懐かしいなぁ……」

 言葉はそれしか出ない。
 教科書類はもう無いけど。
 それでも、脳裏にはちゃんと置いてあった。

「優美、ここで頑張ってたんだよなぁ…」
 感傷に浸っている。

 きらめき高校で過ごした三年間。
 お兄ちゃんとお兄ちゃんの友達と過ごした二年間。

 もう、もうここには帰ってこないんだろうあぁ…。

 優美、こういうの似合わないよね。
 寂しいけど……。
 あしたは彼との新居に引っ越す。
 現実問題はいろいろ大変だけど。
 不安も多いけど……。
 でも、でも……。

 コンコン。
 とノック。
「優美?入るぞ?」
「うん」
 そう言って入ってきたのはお兄ちゃん。
「何?」
「優美。あいつは俺の親友にして、大切な妹の彼氏だ」
「うん」
「大変だろうけどな。これから。頑張れよ、二人で」
「うん。ありがとう」
「あいつならお前を幸せにできるだろうし、お互い幸せになれるさ」
「うん」
「なんといっても、お前らは伝説のカップルなんだぜ?」
「お兄ちゃんもでしょ?」
「そうだな…。まぁ、それは今日は置いておいてだ。優美、お前あいつにちゃんと
飯食わせてやれよ?」
「大丈夫だよ、もう…」
「俺はなぁ、それだけが心配なんだ……」
「大丈夫だって。もう……」
「本当かぁ?お前の料理はひどいからなぁ…」
「大丈夫!優美、克服したんだからっ」
「おおっ。強気だっ。なら大丈夫なんだな」
「うん」
「優美?」
「なーに。お兄ちゃん」
「俺は嬉しいやら、悲しいやら複雑だぞ……」
「でも……」
 一呼吸置いて。
「でも、優美が一番好きな人だし、一番大切な人だから」
「俺の親友でタメだったりもするんだよなぁ…」
「関係ないよ、お兄ちゃん」
「まぁ、あいつは気にしてないみたいだけどな」
「お兄ちゃんだけでしょ?そんなの気にしているの?大体、
お兄ちゃんたち職場も一緒でしょ?毎日会っているんじゃないの?」
「それもそうだな。まぁ、心配は要らないってか」
「もう、お兄ちゃんたら」
「優美」
「何?」
「あいつが浮気したら俺に言え?殴ってやる」
「もう、お兄ちゃんじゃないから大丈夫。彼はそんなことしないって」
「でもなぁ、そういうやつに限って危ないもんだぜ?」
「お兄ちゃんの方がよっぽど危ないよっ!もう、出て行ってっ!」

 そう怒鳴って優美は好雄を部屋から排除した。
「もう、お兄ちゃんったら……」

 でも、あれはあれでもお兄ちゃんなりに心配してくれているんだろうなぁ…。

 あした、優美は二人の新居に引っ越す。
 実家から持っていきたい荷物もあったからそれをとりに、そして
一日だけ過ごすために。
 彼は何日でもいいって言ってくれたけど、甘えちゃダメだよね。
 だから、一日だけって言って、一日だけここに別れを告げに来た。

「優美は新たな一歩を踏み出します」
 誰に言うでもなく、そう呟いた。
「彼と一緒に、二人で」


「優美たちは伝説の樹の下で生まれたカップルなんだもん。
それにお兄ちゃんたちだってそうなんだもん。二組いれば幸せは倍以上だよね?」

 そう強く自分にいい聞かせる。

 電子音が静かな部屋になった。
「彼からメールだ…」
『優美の美味い料理、食わせてくれー』
「もう…。大丈夫って言ったのは彼なのに…」
 そう呟いて、メールを返信する
『あしたになったら、虹野先輩の料理も食べられるから、今日は我慢しなさい!
お休み。またあしたね

 そう、何を隠そうお兄ちゃんの彼女は虹野先輩で、優美は虹野先輩
から料理を密かに教わっていたんだもん。
 まずいわけないよ。

 しばらくしてメールが届く。
『あした、楽しみにしているよ。新居で一緒に幸せを作っていこうね』

 …ちょっと照れるなぁ…。
 そして、またメールの返信
『二人で永遠に、ね』

 しばらくして。
『お休み、優美』
 
「よし、優美、頑張るぞー!」

あとがき
10周年記念、第1弾。優美ちゃんです。
どうにかこうにか日記風になったかなと……。
って、なんか、日記風というより独り言ですな…(汗)

まぁ、こんな感じで古式さん以降も書いていきますのでよろしくです。

じつは、これの前に、書きかけのボツSSがありまして。
納得いかずということで、書き直ししました。

基本的には一緒かなぁ…。
あとは、ボツのほうのあとがきを読んでください・・。
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