ときめきDiary Ten After Year
   早乙女優美
「優美ー。お前なぁ……」
「もう、なによ、お兄ちゃん!」
 兄妹喧嘩。どこにでもある風景かもしれない。
 食事の後、お兄ちゃんと喧嘩になる。
 理由は簡単。お兄ちゃんが優美の作った料理にいちゃもんをつけてきたから。
「だからなぁ。お前、もっと料理できるようになれっての!」
「ぶーっだ。誠は美味しいってたべてくれるもん」
「だから、それはだなぁ……」
 久々に帰ってきた実家と久々の兄妹喧嘩。
「誠は美味しいってたべてくれるもん。お兄ちゃん味覚おかしいんじゃないの?」
「だぁー。誠に言ってやれよ。味覚おかしいって。大体だなぁ、優美、お前の料理は
食えたもんじゃないって……」
「ええい。久々の、優美……」
 ボンバーと続くはずだった。
「優美、まった、やめろ!」

 そうお兄ちゃんはさっと飛びのいた。
 スカッとはずして優美のは空振り。

「お兄ちゃん、逃がさないからね」
 と、そのとき、優美の携帯電話に着信音がなった。
「あ、誠からだー」
 優美は追いかけるのをやめて、机の上に置いてある携帯電話を取った。
「どれどれ、俺が見てやろうか」
 と覗き込むのをすかさずガード。
 優美のメールの内容を見ようなんて100年早いんだからっ。
「やめてよね、お兄ちゃん。プライバシーの侵害、反対!」
「へいへい」
 ちょっと邪険に追い出した。
 
 一人、静かになった部屋。
 優美は椅子に座ってメールを確認。
『そっちはどう?こっちはちょっと寂しいかな……。いつもは優美と二人
なのに、いるはずの人がいないのはちょっと変。あした、迎えいに行くの何時くらいがいい?
こっちは何時でも大丈夫だよ。』

 ……あしたはいよいよ引越し。
 今までは誠のうちに一緒に住んでいたけど……。
 
 準備はもう出来ている。あとは、誠のうちにある荷物を持っていけばいいくらいだ。
 
 嬉しいようで、寂しいようで、複雑な気分。
「優美は……」
「おーい。おわったかぁ?」
 としびれを切らしてお兄ちゃんが登場する
 でも、優美はちらりと無言で返しただけだった。。
「で、なんだっていうんだ?」
「あ、あした何時に来ればいいかって」
「あん?早いほうがいいんじゃないのか?楽しみにしていただろう?
二人っきりだ〜って」
「うん。それはそうなんだけど……」
「そうだなぁ……」
「なに?」
「とりあえず、あいつは俺とちがって定職にきちんとついているし、心配する事無いだろ?」
「そうだよね。お兄ちゃん、未だにぷータローだもんね」
「フリーアルバイターと呼んでもらおうか?
とりあえず、久々に3人で遊ぼうぜ。ってことで、早く来いと、メール
いれておくんだな」
「……」
「どうした?優美」
「3人で遊ぶなんて、久しぶり……」
「ああ、そうだなぁ…」

 高校の頃はよく3人で遊んだものだった。
 お兄ちゃんと、そして、お兄ちゃんの友達と。
 高校も同じ学校へ通った。
 
 そして、お兄ちゃんの友達は同じクラブに入っていた。
 ……優美のほうが一つ後輩だから、正確には優美が同じクラブに入っただった。

 そして、お兄ちゃんの友達と遊ぶようになって、段々とそのお兄ちゃんの友達
から、優美の中では気持ちが変わり始めていた。
 いつの頃からか、お兄ちゃん抜きで、二人でデートという形に変わって優美の
気持ちも確信へと変わっていったのだった……。

 そして、お兄ちゃんの友達、優美の大好きな誠さんが卒業するとき、
優美は思い切って告白をした。

 そう、ときめきメモリアルの伝説。
 卒業式の日、女の子からの告白で生まれたカップルは永遠に幸せになれる


 そのことを信じて、そして好きという気持ちだけを頼りに。

「なぁ、優美?」
「何?」
 携帯電話を片手にお兄ちゃんに顔を向ける。
「お前らは伝説のカップルなんだぜ?」
 ちょっとくすぐったい言葉だった。……そう言っているお兄ちゃんも実は
その伝説のカップルだったりする。
「だろ?」
「うん」
「信じてやれよ。あいつを。あいつは俺の親友にして、大切な妹の彼氏だ」
 ちょっと恥ずかしい言葉が並んでいる。
「俺は信じるぜ。あいつの事。お前を優美を、お互いに幸せになれるってな」
「うん」
「それに、お前の一番愛している人だろ?」
「うん」
「よし、そうと決まったら、俺があいつに久々に電話してやろう」
「えっ…」

 そういうや否や、お兄ちゃんは自分の携帯電話で誠に電話した。

 ……しばらくして。
「もしもーし。俺だ〜。お前の義理兄貴(あにき)だぞ〜」
「………」
「おう、久しぶりだなぁ。どうだ?優美の料理は」
「あー。お兄ちゃんっ!」
「…………」
「やっぱり、本音はまずいらしいぞ?」
「えーーーーー。おとといのカレーだって、美味しいって言ってくれたのにー。優美……」
「………」
「あ?隣に優美、いるぞ?」
「代われってか?ああ、んなの、優美の携帯電話があるんだからそっちにかけろ」
「……」
「それもそうだな。お前は一つしか持ってないもんな」
「ほれ。お前に代われって」
 そう言ってお兄ちゃんは自分の携帯電話を優美に渡した。




「もしもし」
「・………………」
「うん。大丈夫。あしたなんだけど……」
「あしたはなぁ、久しぶりで3人で遊ぶぞー。だからお前は早く来い、兄貴命令だ」
「なにーそれー。勝手に決めないでよね」
「…………………」
「相変わらずだよ、お兄ちゃんは。うん。とりあえず、あしたは早めに来て大丈夫だよ」
「・…………………」
「え?」
「・…………………」
「うん…。でも、あれは…………」
「どうした?優美」

 ……初夏。
 優美が高校時代のとき……。
 お兄ちゃんが誠に、女の子からお弁当をもらったという情報を得て、
負けずにとお弁当を作っていったことがあった。
 後から聞いた話だと、どうも、味付けを間違っていたようで、それ以来優美の手料理は
あまり評判が良くない…。でも、今は…。

「おい、優美って」
「え?なに?」
「どうしたんだ?」
「昔のことを想い出していたの!」
「そうか?」
「……………」
「え?そう?」

「うん。大丈夫だよ、誠。優美と二人は伝説のカップルなんだから。
永遠に幸せになるんだよね」
「…………………」
「お前、よくそんな恥ずかしい台詞が出てくるなぁ…」
 受話器をふさいで。
「お兄ちゃんがさっき優美に言ったんでしょ?」
「お?そうだっけ?」
「もうボケちゃったの?」
「おいおい、冗談は好雄君だぜ?」
「もう…」
「………」
「なんでもないよ?え?聞こえた?」
 ……聞こえちゃったみたい。
「…………」
「うん。まってるね。お兄ちゃんに代わるね」
 奪い取るようにお兄ちゃんが自分の携帯電話を取った。
「もしもーし。代わったぜ?とりあえず、お前はあしたさっさと来る。いいな?
なんだったら今からでもいいんだぜ?」
「………」
「飲んじゃってるってか?一人酒とは悲しいねぇ」
「優美がいつもいるもん」
「ハイハイ…」
「…………」
「え?優美の手料理?」
「………………」
「前よりは良くなったけどなぁ…」
「………………」
「え?マジか?あの優美が?」
「………………」
「なぁ、優美本当か?いつの間に沙希に料理教わっていたんだ?」
 そう、今の私は違うもん。
 昔はライバルだったけど。今は優美がヒロインだもんね。
「へっへーんだ。優美だって、ちゃんと料理できるんだからっ」
「………………」
「そりゃなぁ…。沙希に教わっているんじゃ、まずいわけないよなぁ…」
「………………」
「そうそう。優美、虹野先輩の弟子だもん」
「…沙希もひどい師弟を持ったもんだ…」
「虹野先輩、優美にいろいろ教えてくれるから…」
「……………」
「え?ああ…。誠が沙希を呼ぶとき『先輩』つけなくてもいいんじゃないかだってさ」
「先輩は先輩だもん」
「だったら、誠呼ぶとき先輩つけるのか?」
「……つけるわけないでしょ?優美の彼氏だもん」
「……………」
「やっぱり変なのかなぁ…。お兄ちゃんの彼女を先輩って呼ぶの?」
「優美らしいってさ」
 そういうところが優美大好き。
「……………」
「おう、あしたな。まってるぞ」

「さてと、風呂入るかなぁ〜」
 お兄ちゃんはそう言って立ち上がって風呂場に向かった。



 一人だけになった部屋で優美は携帯電話を手にとってメールをする。
 
『優美、頑張るからねっ。誠が好きな料理いっぱい作るからねっ』

 送信。

 そして、机からたって、大きく背伸び。
「優美も寝よう」

 メールの着信!
 
『優美の料理は美味いよ。一緒に頑張ろう』

 これからも二人で歩いていく。
 いや、二人じゃない。
 お兄ちゃんと、虹野先輩と。
 そして、誠と。
 四人で。

 優美は大丈夫。
 だって、伝説の樹の下で生まれたカップルなんだから。
 それにお兄ちゃんたちだってそうなんだもん。
 二組いれば幸せは倍以上だよね?

あとがき
えっと。
まず。
日記になってません。
ええ。日記風じゃないですとも。
優美ちゃんって、日記、三日坊主で終わりそうだし……。

最後の方が若干苦しいけど、微妙だけど日記のようでもないかなと。


キーワードはお弁当ですかね。優美ちゃんのイベントの中にある、虹野さんに
対抗して弁当を作るけど、味はいまいちというもの。

最後まで読みゃわかりますが、虹野さん、好雄君と伝説のカップルになっているという
設定で、密かに優美ちゃんが虹野さんから教わっていたと。
みのりちゃんに教わっているというのはドラマシリーズでありましたけど、
本家の虹野さんですもの。さすがにあの優美ちゃんの手料理でも矯正はされていると思います(苦笑)

設定としては、彼の実家ですんでいて、いいかげん二人の新居に引っ越そうという設定です。
んで、荷物まとめに優美ちゃんが実家に帰ってきていると。

結婚は……。
してるんでしょうか?
してないんでしょうか?
この段階ではしてないと思います。
以上。ここまで書いて、やっぱり違うわという事でボツにしました。
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