「わあ、きれいね、この泡。」とサンガル姫は言ってしまいました。

口に出してから、姫は船頭のことばを急に思い出しました。

なにか悪い事が起きるかもしれない。そう思うと胸がどきどきしました。

 その時です。突然、川が波立ったかのように船が大きくゆれました。 

 サンガル姫はあたりを見まわしましたが波はたっていません。  

すると次の瞬間、突然、姫は乗っている船が少し沈んで重くなっていると感じました。

見れば船首に美しい服を着た若い娘が座っているではありませんか。

まったく信じられないことが起きたのです。

「私は妖精のジン・パクです。」とその若い娘はいいました。

「私も一緒に乗せていってください。」サンガル姫は何といっていいかわからず、

黙って船をこぎ続けました。

やがて、とうとう船は河口につき、海がはてしなく広がっているのが見えました。

風がますます強く吹いてきました。サンガル姫は後ろに座り、ジン・パクは前に座っています。

西風が吹いてきた時サンガル姫は歌い出しました。


西風よ、海流よ

私を中国へ連れて行って

本当のフィアンセに会うために

そしていっしょにふるさとへ帰りたい。


偉大な神のおかげで、サンガル姫の船はすいすいと風に乗って進みました。

 

つぎへ
チェリタラギの部屋へ

5