山のエッセイ3007  up-date 2001.03.30 山エッセイ目次へ

苦い思い出
好きな山歩きをしていても、いつもいつも楽しく良いことばかりではありません。苦い思い出だっていくつかあります。

「入山料金」を徴収する山もその一つ。
環境を保護するため自発的な協力金をお願いしたいというような場合は、些少な金額なら協力することにやぶさかではありません。
しかし徴収の根拠もなく、納得的でないと言うか、非常識不可解な取り方をするものもあるのです。山に入るだけで金を取る。たしかに他人の私有地に入らせてもらうことには相違ありません。でも常識的には山へ入るだけで料金を取るということはあまり聞きません。どんな根拠に基づくのでしょうか。どのような名目があるのでしょうか。木や土石を持ち出したり、マツタケを採ったりするわけではありません。山が壊れるわけでもありませんし、山で何か商売でもしようというのでもありません。ただ山にある道を通らせてもらうだけの話です。

一番苦い体験は東北の月山でのことです。
山でお金が必要になるとは思わず、落としたりしたらいけないと思い財布を自動車の中へ残して登りました。ヒナウスユキソウなどの花を愛でながら気分よく歩いて、いよいよ山頂の手前。そこには詰所のような建物があり、ちょっとした物を売っていたように思います。その前を通り過ぎ、残り何歩かで山頂というところで呼びとめられました。 「料金を払ってくれ」というのです。思わず「えっ?」 何の料金かと思ったら、ここから先へ入るなら、料金を払えと言います。よくわかりませんが、山頂は私有地なんでしょう。羽黒神社の社有地かもしれません。

山頂を踏むだけでなぜ料金が必要なのでしょうか。釈然としません。日本百名山として多くの登山者が訪れます。いい実入りになるでしょう。
なっとく出来るわけがあるのなら300円や500円誰も文句は言いません。わけもわからない金を、まさにぶったくりで取ろうという風にしか見えないのです。
「お金は持ってきてない。下山して登山口のどこかに預けるから」と言ったが、払えなければ通さないという強硬な姿勢を崩さず、何回頼んでもがんとして聞いてもらえませんでした。結局山頂は踏まずに引き返しました。

このような理不尽な山には、もう二度と登りたくありません。他の人が良い山だとほめても、私にとっては苦々しい山でしかありません。『月山』という名前を聞くのもいまいましい印象が残ってしまいしまた。
日本百名山を踏破した言うことになっていますが、正確に言えば月山の山頂は踏まずじまいです。つまり99山しか登ってないということになります。

足元を見透かしたようなさもしい根性が、こんな自然の山の中にまでと思うと、何だかやるせなくなります。

実は私の地元の奈良県にもこのような山があるのです。日本三百名山の倶留尊山です。民間所有の山らしいのですが、ここも山頂手前に関所のような小屋を建てて、そこから先へ入るのに500円徴収しています。登山者用の休憩ベンチを設置するでもなく、道標を立てるでもなく、また山道の整備に手をかけなければならないような険しい山でもありません。これも「理由なんかいらない、取れるものは取る」というガメツさにしか思えないのです。

理由があって徴収するなら、大義名分を持って納得出来る形でやってほしいと思います。
願わくば、山くらい自由に出入りさせて欲しい。山でこんなせちがらい話は無しにして欲しい。 山歩きが好きな私は切にそう願います。