山のエッセイ3009  up-date 2001.04.18 山エッセイ目次へ

おばさんたち
とにかく良く喋るのです。
その女性4人グループは、よくも疲れないものと感心するほど、次から次へと、バトンタッチも軽快に会話のリレーがつづき、常に誰かの口が動いています。
周囲のことなんか、まるで気にする風もないようです。
開放感もあるのでしょうが、おくするところのない話しぶりで、内容も筒抜けです。
旦那がどうした、隣の○○さんが海外旅行をした、××の料理番組がどうの、この間行った△△温泉の料理がよかった、私が行く美容院は安い・・・・・
ビディオの早送りのように、次から次へと話題が出てきます。口下手の私にとっては奇跡を見ているようです。

それは前に黒百合ヒュッテ(八ヶ岳)へ泊まったときの光景です。
4月初旬、北八ヶ岳はまだ残雪のシーズンでした。おばさんたち4人は赤々と燃えるストーブの前の特等席を占めて、実に楽しそうにリラックスしています。
4人とも40才台か、もしかすると50歳前後かもしれません。
家事に追われ、旦那のお守に気を使い、溜まったストレスを一気に爆発しているようにも見えます。 それはそれでけっこう、たまにはこうしたガス抜きもしないとやってられません。他人の睡眠の妨げになるほど続けられるとかないませんが、これも山を楽しむ一つのパターンのようです。

しかし・・・・、ちょっと待てよ、と首を傾げたくなるのを感じます。
2日間の貴重な時間を工面し、汗をかき、せっかくここまで登って来たのに、あまりにも俗っぽい話だけでは勿体ないじゃないですか。山では山の、山小屋では山小屋にふさわしい話題もあるような気がします。
以前登った山の思い出とか、この日残雪の道を登ってきた感想とか、趣味の話とか、雪山の景色の素晴らしさとか、備え付けの高山植物の図鑑を開いて見るとか、そんなところから場所柄にふさわしい話に発展して行きそうに思います。また山小屋のかもし出す雰囲気を静かに味わってひとときを過ごして見るなんていうのもいいものです。

何も汗をかいてここへ来なくても、喫茶店でも、日帰り温泉でも、どこでも出来そうな話です。
これは価値観、個人差の問題ですから他人がとやかく言うべきでことではありませんが、そんな4人のおばさんを見ていると、少し考えてしまいます。
おばさんたちは、そうたびたびは来られないでしょう。せっかくですから、ここでしか味わえないものを味わって行ってほしいと思います。ここでしか残せない思い出作りをして帰ってほしい。 お節介にもそんなことを心の中でつぶやいていました。

どれが良くて、どれが悪いと言うことはありません。いろいろですね。