山のエッセイ3013  up-date 2001.05.12 山エッセイ目次へ

好きな山は?

足しげく山へ通うようになってから13年余になります。

北海道から九州まで、数多くの山を歩いてきました。
どうして山へ登るのですか?と聞かれたことは一度もありませんが、「今まで登った山で、一番好きな山はどこですか」とか「一番良かった山は・・・」いう質問はしばしば受けます。
答えるのがたいへん難しい質問です。

とにかく1000に近い山の中から、記憶や印象を頼りに、さあどの山と答えようか・・・・と考えていると、いくつもの山が錯綜して一つだけをあげるのは不可能と言うことに気づきます。
深田久弥はこう言っています。「一番最近に行った山である。それは山の印象がフレッシュであるからである」と。

彼が日本百名山の選定作業にとりかかったとき、選ぶべき山と落第させなければならない山とを篩(ふるい)にかける辛さを述べています。
選ぶと言うのは大変なことなんですね。 「一番」と聞かれてもなかなか返事が出来ないのです。
日本300名山をすべて登ると、わが国の名の知れた名山と呼ぶべき山は、おおかた登ったことになると思います。いって見れば名山の中から名山を選ぶわけですからこれは至難です。

ただ私が感じますのは、登ったときの季節、天候、体調などで印象が大きくちがって来ると言うことです。以前登ったときは天気も悪く、あまり良い印象が残っていなかったのに、2回目に登ったときは、なんて素晴らしい山だろうか。そんな風に見なおすことも多々あります。
ですから当たっているかいなかはわかりませんが、自分が登ったときの、そのときの条件下での印象を言うより仕方がないわけです。

つまり誰でも納得出きる、最大公約数的なものは無理ですから、きわめて属人的な選び方ということになるでしょう。
したがって“良い”と答えた山の名前を聞いて「なんで?」と思うこともあるでしょう。
逆に言えば、こんな質問はしても意味がないと言うことなんでしょうが、それをわかっていても尋ねるのが人間の面白いところだと思います。

そうした前提で答えることになるわけですが、「一番」ということはどうしても言えません。そこでベストテンに入る山とか、五指に入りますとか言う答え方になります。
私の好きな山を2、3だけあげると
  常念岳(下から眺めてよし、歩き甲斐があり、眺望絶佳)
  鳥海山(姿の美しさならNO.1。残雪のころ、汽車で遊佐町あ
       たりから眺めたら最高)
  ニペソツ(天上へまで上ったという感を深く抱かせる山)
  堂津岳(登山道がなく、残雪を踏んで立った山頂からの眺めは、
       気絶するほどすばらしい−笑−)
など、他にも同列に上げるべき山が10も15も、いやそれ以上あります。
一度時間を見つけて、過去に登った山を総点検して、私の主観で好きな山ベスト30くらいを選んで見るのも面白いかもしれないと思っています。