山のエッセイ3031 up-date 2001.11.05 山エッセイ目次へ
東北地方の名山「月山」の山頂で、関所のような番人に山頂へ入る料金を請求されたのですが、たまたま財布の持ち合わせがありませんでした。事情を話し、下山したら指示したところへ払って行くからと頼んだが聞き入れてもらえず、結局目の前のてっぺんに立つことが出来ませんでした。そんな苦い思い出をこのエッセイに書いたことがあります。 しかし月山は別にして東北の山は今でも大好きだですし、東北の山で行き合う東北人も大好きです。 今日は名誉回復の話です。 ●秋田県の300名山「太平山」へ登ったときのことです。 山頂は濃いガスと冷たい強風。そこに休憩小屋がありました。一休みしたくて小屋へ入りました。このときも財布は自動車の中へ置き忘れて無一文、休憩料金は200円ということです。 「お金を持ってきていませんので」 と言って外へ出ようとすると 「いいよ、いいよ。寒いからあたって休んでいきな」 という親切な言葉。赤々と燃えるストーブに手をかざし、年老いた管理人としばらく話をしてから何度も礼を言って小屋をあとにしました。 下山したとき、これから山頂をめざす登山者がいました。 200円を小屋の管理人に渡してくれるように頼みました。 ●福島県に一等三角点の大戸岳(1416m)という山があります。 一つ山を登り終えたあと、夕刻近く大戸岳登山口の集落に着きました。そこに小さな公園があったので、テントを張らせてもらおうと思いました。誰に許可を受けたらいいかわからず、近くのおばさんに尋ねると集落役員の家まで連れていってくれました。 役員は 「テントは寒いから公民館に泊まれ」 と言って、鍵を持ち公民館まで連れて行ってくれました。 布団も台所のガスも、鍋も自由に使っていいということです。火の元とあと片付けだけはきちんとしてくれと言うだけで、料金もなしです。 役員宅は表札を覚えて帰りましたので、帰宅後感謝の気持ちを書き送らせてもらいました。 私のつたない山の体験ですが、山では苦々しい出来事より、嬉しいこと、心温まることの方がずっと多いように思います。 |