山のエッセイ3034 up-date 2001.12.15 山エッセイ目次へ
自分の登山紀行に目を通していたら、こんなことが書かれていました。 古い話です。 大都会の真中には山はありません。それはあたりまえです。 登山ですから、出かけるのはもっぱら田舎です。12年前に長野、新潟県境あたりにある雨飾山へ登るために妻と出かけました。 午前中に東京を発ち、小谷村で国道と分かれて狭い谷あいへと入って行きました。一つ二つ小さな集落が点在しています。集落と集落の間は田んぼだったり畑だったり、あるいは山だったりです。歩道もない田舎道を、学校をひけた小学生が道草を食いながら歩いています。 センスなどとは無縁な服を無造作に着て、ただ何となく石を蹴飛ばしながら歩いている子、棒切れをもて遊びながらの子、またある子はしゃがみこんで虫でも見ているのでしょうか、そうしたくて何かをやっているのではない。それは無意識に呼吸をしているのに似て、その子たちは家路へ向かって歩く行為に付随した、ごく自然な動きをしているだけでしょう。 見ていると実にほほえましいのです。 大人顔負けのブランド品で身を固め、色彩センスも見事に着こなした大都会の子供とは格段の違いがあります。 都会の子供には見ることのできないそんな姿が新鮮で、はるか過ぎ去った遠い昔の自分が重なるようでした。子供らしい無垢、無邪気が溢れていて、これが子供なんだなあと思ってしまいました。 12年たって、あの村の子供ちもきっと変っていることでしょう。 |