山のエッセイ3058 up-date 2002.12.02 山エッセイ目次へ
夜の寝つきに、ときどき昔の山行のことなどを思い出すことがあります。
こんなことを思い出しました。 ある真夏、東京から信州の山へ出かけました。蒸し風呂のような新宿の街を、夜行バス(さわやか信州号)で出発。 ありがたいことに乗客は半分ほどで助かりました。 後ろの座席に座ったのは30才台と見える男二人、11時も過ぎて車内は消灯となり、全員眠りにつこうとしている時間。後の男二人、ビールを飲みながらボソポソ話がいつまでたっても止まない。耳についていらいらが募っていく。 そのうちに 男A「今日の乗客はみんな紳士でマナーがいい人ばかりだね」 男B「静かでありがたいなあ」 この会話が私の耳に入ったとき、ついに私の堪忍袋の緒が切れた。 「明日はみんな早朝から山へ登る人ばかりですよ。早く眠ろうとしているのが君達にはわからないのですか。いつまでしゃっべっているつもりです。登山は初めてではなさそうだが、それくらいのことがわからないのですか。いい加減にしなさい」 怒り心頭に発して、きつくたしなめると、二人はようやく気がついたようだ。 世界は自分のために回っていると勘違いしているのか、あるいは人は見えても自分は見えなくなってしまうのか。 “旅の恥はかき捨て”の思想に通ずるものがありそうです。 日常生活の中では分別ある紳士淑女が、一つ“日常”という垣根を越えると、まったく別の人格に変ってしまう。世の中にはよくあることです。 山を愛する人、山登りの好きな人は、どこか素朴で清貧で、人情味も豊かで・・・・なんてプラスのイメージが湧きがちですが、必ずしもそうとばかりは言えないようです。ただの世間知らずや協調性の欠落した人もけっこう多いというのが、14、5年山を歩きつづけてきた私の率直な感想です。 |