追想の山々1341  up-date 2003.03.25                                           山岳巡礼のトップへ  山名索引表へ

早池峰山=はやちねさん(1914m)登頂日2000.08.04 単独 曇り 妻同行
小田越(9.00)−−−5合目御金蔵(10.25)−−−早池峰山(11.10-4-11.40)−−−5合目(1215)−−-小田越(13.10)
所要時間 4時間10分 1日目 ***** 2日目 *****
ハヤチネウスヤキソウ
12日間の東北山旅最後の早池峰山登頂。

私には遠く及ばない妻の脚力を考えて、宮古市を早朝5時に出発。 7時には歩き始めたい。
国道沿いを流れる閉伊川の流れが、濃い赤茶色で水量も多い。上流部でかなりの雨が降ったようだ。何となくいやな予感がよぎった。
国道と別れて小田越への道へ入ると、乱暴な字で書かれた「通行不能」の急ごしらえの看板がある。「もしかすると雨による被害でも・・・」と想像したが、詳しいことは不明、とにかく行って見るほかはない。
道幅の狭い山間を、何の障害もなく進んでゆく。もう小田越も近いと思われるところで『この先通行不能』の表示、そして道はロープで封鎖されていた。やはり・・・・、と思ったもののどうする術もない。
その少し手前に人の住んでいそうな一軒家があった。普通の民家ではないだろうが、もし住人がいれば何か聞けるかもしれない。 幸い老夫婦がいた。やはり昨日の集中豪雨で道路が決壊していると言う。
小田越への回り道があることを教えてくれた。
やれやれ、救われたという思いで教えられた道を進んだ。こちらもそろそろ小田越が近いと思われるころ、向かって来る自動車がある。「この先決壊で道路がなくなっている」と言う。地元民宿の主が様子を見に来たのだった。
こうなると方法は一つ、遠野市へ下り、大迫町から岳集落を経由して入るほかはない。小田越へ着くのが大幅に遅くなってしまう。時間的に登山は無理かもしれない。途中まで登るだけでもと割り切り、岳集落へ向かうことにる。
民宿主人の先導で、遠野市側の麓にある早池峰神社まで下り、そこからは速度違反を繰り返しながら岳集落を目指した。

小田越に着いたのは9時ちょっと前、予定より2時間も遅い。小田越から河原坊へと回るコースは無理、小田越からの往復にすれば、妻の足でも何とか山頂に立てるかも知れない。
とんだアクシデントに遭ってしまったが、かろうじて登山を始めることができた。
さすがは人気抜群の早池峰山だ。大変な数の登山者。もう下って来る人も多い。
地元の植生調査をしているおじさんと、しばらく話しながら歩いた。植生についていろいろと詳しい。早池峰山は植物の垂直分布も面白い山だと教えてくれた。
前回登ったのは9月に入ってからで、高山植物も時期を過ぎていた。今回は豊富な花々をふんだんに目にすることができる。 ナンブトウウチソウ、サマニヨモギ、チシマフウロ、ナンブトラノオなど貴重な高山植物にもお目にかかることができた。 またホタルサイコ、ミヤマウイキョウなどの花も教わることができた。
妻の足も思いのほか快調で、1時間半で御金蔵まで登れた。これなら山頂まで行く時間はありそうだ。

山頂
小田越コース独特の御門口上部の岩塊群の景観、御金蔵から先の竜が馬場のハイマツと岩のコントラストと高山の花々に彩られた眺め、背後には薬師岳の緑濃い山体。 さすが多くの人を魅了する良い山である。
次々とあらわれる花をメモに取り、長い鉄梯子で岩場を乗り越え、やがて厳しい傾斜が緩むとお田植場の平坦地となる。
前方に見える岩の積み重なった高みが山頂だ。
お田植場には木道が敷設されているが、荒れて湿原の面影は薄れている。登山口から2時間10分で山頂に立った。予定よりずっと早い時間だった。

山頂は生憎の雲で遠望はきかない。前回につづいて、またもや展望からは見放されてしまった。
早池峰山特産種ハヤチネウスユキソウには少し遅いかと案じていたが、山頂部にはまだかなりの数咲いていた。ふっくらと綿毛に覆われた花びらが、いかにも氷河期の生き残りを感じさせる。この花を目にしたくて訪れる登山者も多い。
岩かげで食事を取り、ハヤチネウスユキソウを観賞して、ゆっくり休憩したのち山頂を辞して、同じコースを小田越へと下っていった。
途中これから山頂を目指す登山者に何人も行き違った。指導員らしいおじさんが「今日もこれから激しい集中豪雨になりそうだから、早く山を降りるように」と呼びかけながら登って行った。

通行止めで一時は諦めた早池峰山登頂が実現して、これで予定の山はすべて登り終わり、また温泉も10湯を目標にしていたが、今夜の宿「鉛温泉」で11となり、これも予定を上回る成果となった。
1軒宿の鉛温泉は、東北温泉祭りの大きなポスターになったこともあるという由緒ある温泉で、建物にも往時を偲ばせるものが残っていた。 深さ150センチという「立ち湯」も珍しいもので、今回の「東北−山と温泉の旅」をしめくくるにふさわしい温泉に満足、川の上にせり出した客室で、せせらぎを耳にしながら最後の夜を過ごした。

翌日は一路仙台港へ向かい、フェリーで名古屋港へと帰途ついた。
1990.09.01 河原の坊---早池峰山---小田越の記録はこちらへ
  
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