追想の山々1411  

 白馬三山(2933m)・裏旭岳(2726m)・清水岳(2590m)
登頂日1998.07.23-24 単独
●猿倉駐車場(8.15)−−−白馬尻(9.05-9.10)−−−葱平(10.10)−−−避難小屋(11.10-11.15)−−−村営宿舎(11.45)−−−白馬岳往復・・・村営宿舎泊
●村営宿舎(4.50)−−−裏旭岳(5.35)−−−小旭岳(6.15)−−−清水岳(6.35-6.40)−−−小旭岳(6.50)−−−裏旭岳(7.35)−−−村営宿舎(8.05)−−−杓子岳巻き道−−−鑓ケ岳(9.15-9.30)−−−鑓温泉入浴(10.35-11.00)−−−サンジロ(11.50)−−−猿倉駐車場(13.15)
1日目行程 3時間30分
2日目行程 8時間25分
新潟県・長野県 白馬岳 一等三角点
清水岳 三等三角点
鑓ケ岳 三等三角点
白馬岳もこれで4回目の登頂となるが、91年の夏以来7年ぶりということになる。何といっても高山植物の種類、量ともまさに日本一の山であり、これを見るのが第一の楽しみだった。
それと併せて今回は清水岳登頂も目的の一つにしていた。
初日は白馬山頂の山小屋に宿泊の予定。夕方までに着けばいいので、急ぐ必要はさらさらない。
白馬尻で水を補給してから雪渓へと取りつく。近年にない少雪に加え、春の訪れが早かったため、
 
 右奥が清水岳 旭岳
例年なら白馬尻の小屋から少し登れば雪渓に乗ることが出来たのに、今年は雪渓に取付くまでにずいぶん上まで行かなければならなかった。

ようやく雪渓に取付くと冷蔵庫に入ったような肌寒さで、猛暑が嘘のようだ。
雪渓上の登山者が蟻の行列のように見える。ほとんどが軽アイゼンを着装しているが私はアイゼンなし。おかげ登るスピードがちがう。倍近い速さで登ってゆく。早く着きすぎてしまいそうだが、早いに越したことはないだろう。

猿倉から休憩なしで約3時間、新しくできた避難小屋に到着。ここではじめて5分間の休憩を取る。雪渓周辺の高山植物も例年より少ないようだ。頂上付近もこんな様子だと淋しい。
避難小屋から村営宿舎までは30分だった。まだ12時前、3時頃着けばと思っていたのに、とんでもなく早く着いてしまった。白馬岳には村営宿舎と白馬山荘があるが、白馬山荘の方は頂上直下という好条件と、収容規模の大きさに比例した設備で人気が高く、それだけに最盛期の混雑はひどいことでも有名、少しでもゆっくり寝られた方がいいと思って村営宿舎に宿泊の手続きをとった。

一休みしてからカメラ片手に、花を見ながら山頂まで行ってみる。思ったとおり花は少ない。雪解けが早くてすでに最盛期が過ぎてしまったということだろう。それでもイブキジャコウソウ、エゾシオガマ、シコタンソウ、イワツメクサ・・・・・などかなりの種類を見ることができた。ガスで山頂での展望はない。
白馬山荘下のミヤマオダマキは今年もまったく同じ場所に咲いていた。記憶の場所のウルップソウは、すでに花期を終わっていたのが残念だった。
村営宿舎近くまで降りてくると、雪渓に近い斜面でウルップソウを見つけた。一株、二株、探すと次々と見つかった。

続々と登ってくる登山者は、村営宿舎で小休止をしてから、ほとんどが白馬山荘へと登ってゆく。見るからに青息吐息という婦人も、無理しなくてもいいと思うのに、やはり上へ登って行った。
思った通り村営宿舎の方はゆったりとしており、楽々と寝ることができた。

さて、今日は清水岳の往復だ。
明るくなるのを待って小屋を飛び出す。ガスが濃い。風が冷たく強い。ウインドブレーカー代わりにレインウエアを着込む。
白馬山頂への登路と分かれ、ゆるく下って行くと、旭岳の肩を巻くようになる。瓦礫の道が裏旭に向けてほぼ水平に延びている。巻き終わったところから、急な下りに変わった。清水岳までは標高差で約300メートルの下りだ。300メートルというのはかなりの下りである。

目指す清水岳が見えてきた。ハイマツだろうか緑におおわれたなだらかな山容をした山で、登頂意欲をそそるような際立ったピークではない。
帰りの登り返しの苦労を思いながら、岩のごろごろした急な傾斜を下ってゆくと、一人の青年に出会った。これから祖母谷へ下りるのだという。自然保護の仕事をしているいう。感じのいい青年だった。
瓦礫の急坂を終わり、緩い尾根道に変ると高山植物が次々と顔を出してきた。思いがけずコマクサの群落を発見。群落の中を登山道が走っている。登山者が少ないからこんな形でも絶えないでいられるのだろう。
思ったよりコースははっきりしているし、状態も問題ない。
ゆるやかになった道を快調に歩き、1時間45分で清水岳へ到着した。円頂のピークは、どこが山頂かはっきりしないが、登山道を外れてハイマツや潅木の中を掻き分けて、取りあえず一番高いと思われる地点へ立った。

300メートルの標高差を登りかえすのは、結構体力を使ったが、村営宿舎近くまで戻ったのは、まだ8時を回ったところだった。大雪渓を下る予定でいたが、時間に余裕があったので、白馬鑓から鑓温泉を経由して下山することとした。
一瞬ガスが晴れて、清水岳方面が見通せたが、写真を撮る間もなく、ふたたびガスに閉ざされて、二度と姿を見せなかった。
杓子岳は巻き道で通過して、次のピーク白馬鑓への急登にかかる。昨夜同宿の中年おじさんが、まだこの登りでうろうろしていた。写真器材を背負って重いことはわかるが、それにしても何というスローペースか。これでは今日中に猿倉まで下るのは容易ではない。

鑓の頂上にはおおぜいの登山者が休んでいた。風は強く、休んでいるとどんどん体が冷えてゆく。朝食代わりにパンを半分かじって山頂を後にした。
前回、前々回とも、この白馬は絶好の天気に恵まれたが、幸運はそう何回もつづかない。縦走路から鑓温泉への分岐に着くころには、雨が落ちてきた。急坂を足に任せてピッチを上げて下ってゆく。雨粒が大きくなり、ついにレインウエアを着用。途中何ヶ所か鎖場があったりして、あまり歩きいい道ではない。

稜線分岐から50分ほどで鑓温泉へ着いた。コースタイム1時間10分だが、あれだけ飛ばして20分しか短縮できなかったということは、普通の登山者はコースタイムで歩くのはまず無理だろう。飛ばし過ぎて汗びっしょりになってしまった。この鑓温泉は日本一高所にある温泉だという。ぜひとも入っておきたい。この後まだまだ歩かなくてはならないから、ここで温泉へ入ってもしょうがないが、まずは話しのタネに入浴することにした。
脱衣場とは名ばかり。雨の降る中、広々とした露天風呂に体を浸ける。湯加減は程よい温かさ。この後歩くのがいやになりそうだ。

湯から上がった後、汗でびしょぬれの衣類を着る。この先猿倉までが長かった。雪渓をいくつも横切り、小さな上り下りを繰り返し、予想外の時間を要した。ガイドブックでは、温泉から猿倉まで2時間となっていたが、飛ばせば半分近くで下れると思っていた。ところが1時間を過ぎ、なお歩けど歩けどいっこうに猿倉に近づいている感触がない。間もなく2時間、まだ着かない。どうもガイドブックの時間はおかしい。あれを信じて行動する人は、予想外のアクシデントに 見舞われる可能性もある。結局2時間15分を要して、ようやく猿倉まで下った。

1990.07.14〜15 白馬乗鞍岳・小蓮華山・白馬岳・杓子岳・唐松岳 はこちら
1991.08.14〜15 単独朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳はこちら