べさはや第2話
「九十九島シーカヤッキング」

2002/07/27

2日目(九十九島シーカヤックトレーニング)

予定では出発日。朝から風が強まってきた。 こちらにむかって接近してくる台風11号の影響だ。 雲仙に雲がかかる。

「雲仙に雲がかかると風が強くなる」

という昨日の原田さんの言葉、Ryuさんの調整池の水を顔 にかぶらないでねというメールに、本日の航海延期を決定した。

やってやれないコンディションではないが、ウサギが飛び始めた 調整池に真っ向から立ち向かうのは、気分が乗らないし、初めて 漕ぐ小野ちゃまや、ちゃわんやさんに、ここまで、ひどい条件で 漕いでもらうのは、忍びない。

悲痛な決意でバトル体制を整えて現れた山崎さんと、、 忙しい時間をやりくりして来て下さった原田さんに、中止を伝える。

「雲仙に雲が、かかっとるもんな。。。しょんなか。  越える時、風に煽られると危険やもんな」

と原田さん。二人とも、明日は予定があって同行できないので、 本日の出航を見合わせるのは残念そうだった。 気持ちが痛いほどわかる。僕も残念でならない。

だけど、自然に逆らうことは、諫早干拓や、川辺川ダム推進事業と 同じだ。僕は自然には逆らわず、恵みだけを受けたかった。 勝てない喧嘩はするものじゃない。

雲仙普賢岳の山頂を、すっぽり覆う雲、それが答えだ。 中止になって、ぽっかり空いた本日のスケジュールをどう埋め ようか?と考えていたら、時津さんたちの干潟ツアーに参加して 元気な干潟に触れにいく旅と、野元さん提案の風の影響を受け ない九十九島でのシーカヤックトレーニングのふたつが候補に あがった。

僕は、生きている干潟で、元気に跳ね回るムツゴロウ達を、是非、 一度目にしてみたかった。けれど、小野ちゃまと、野元さん、 ちゃわんやさん、ひらめちゃんの隊員一致で、九十九島で シーカヤックという案が通ったので、九十九島にバカンス、 いやもとい、トレーニングに向うことにする。

シーカヤックを漕ぐものにとって、長崎県の九十九島は魅力的 なフィールドのひとつだろう。決定してしまうと、初めての長崎だった こともあり、楽しくなってきた。

ムツゴロウ達には人力で会いにいった方がいいと変に納得して、 逆方向の佐世保へ。

佐世保には、ちゃわんやさんの友人のぎんちゃんも住んで いるので、仕事を抜け出してもらって、シーカヤックトレーニングに 同行してもらう。ムツゴロウとの出会いは惜しことをしたが、 今回サポートに人吉から、足を運んでくれたひらめちゃんや、 ぎんちゃんも楽しんでもらえたようで、良いアクティビティになった。

九十九島のアイランドホッピングを楽しんだ帰り際、ぎんちゃんから エビスビール1ケースの差し入れ。 この時を境に、べさはや隊の公式燃料はビールへと変貌を 遂げるのである。

夕方、諫早の身障者施設「でてこいランド」に、ごやっかいになる。 駅前で道を尋ねていると、国土交通省がつくった巨大防災スクリーンが 目にとまった。災害情報と称する笑止千番のプロパガンダだ。

バカな税金の無駄使いに怒り爆発。 後ろめたい事業、無駄な事業さかげんに比例して、 こげんアホな施設が雨後のタケノコのように作られる。

でてこいランドで、山崎さんや原田さんらと再会。

原田敬一郎さん。「僕らにやれることはやります!」

明日から行程に参加予定の親分、ウエムラさん、清川さんの3人と合流。 ご馳走をいただきながら、時津さんたちの干潟観察の一行と懇親会。 これも本日の出航を延期したために、出現した素晴らしい宴だ。 干潟や自然環境の保護へ想いを語りあった。

「諫早の人は、ほとんど反対でした。でも、反対とは表明しません  でした。だげん、あんなモンができるとは、誰も信じてなかったん  です。反対と言わなければ、賛成とみなされたんです。  地元の熱い要望にこたえて事業を推進と。。。。  反対の声をあげないことは、賛成していることと同じなんです」

山崎まさゆきさん。「子ども達になんて言えばいいんでしょう?」

子供たちが遊んだ干潟があっというまに殺されてしまった山崎さん の言葉が、胸を刺す。 川辺川ダム問題で揺れる球磨川、川辺川流域の人々のことを 思った。この言葉を、きちんと伝えなければならないと。

勢ぞろいした「べさはや海の部隊員」も、諫早、川辺川に対する 想いを語った。 そんな想いが届いたのか、干潟観察団の女性3名が、明日の出航を 見送りに来てくださるという。

就寝前、昨年参加して、調整池を漕いでいる親分の話に、 明日の行程の恐ろしさを、あらためて思い知る。

「あそこでは、飲み物とか口にする気にならん、なんにも  持たんと空身でいかんといかん!  今年は漕ぎたくなかったのになー、なんで、九十九島で  遊んどるのよー。君たち、ダメではないか!」

と言う親分のつっこみに、

「いや、アレは、トレーニングです!」

と、九十九島漫遊の一行は、頑なに主張したのであった。

(なかなか出航せんなあ。。。つづきます)

川辺川巨大ダムはいらない!この美しい川をいつまでも守ろう!
県民の会のHP。