グレイシアー・ベイ紀行(その4・パフィン)

晴れた!
クジラもやってくるLeland Islandsの
キャンプサイトにて。

旅に出て3日目。Leland Islandsの朝。呼吸音で目が覚める。聞き覚えの有る音だ。
そう、ザトウクジラだ!テントから出て、海に目をやるとすぐ目の前の浅瀬に大きな物体が浮上する。穏やかな入り江でのんびり潮を吹いていた。
ぼんやり見とれていると、ガスが晴れ、どんどん明るくなっていく。久しぶりに青空が広がった。二日酔いで頭が重いが、青空だ!直射日光が差し込み、みるみる体が熱くなる。
たまらず、Tシャツに短パンだけになる。風が心地よい。
本日、上げ潮に変るのは午後2時過ぎ。のんびり出航すればいい。
起きてきてクジラに驚くカズに午前中はゴロゴロすると宣言。
読書に入る。開口健がアラスカの“怪物“ハリバットに挑戦する「オーパ・オーパ」。
痛む体に鞭打って世界釣り歩き物語のカナダ・アラスカ篇だ。でかいのになると400ポンド、ダブルベットくらいの大きさになるという。

そろそろ出発準備をしようかと思った頃、カズが久々に竿を持ち出して海へキャストしにいった。
出発してから今まで釣果はなし。時々、ピンクサーモンが大ジャンプするのだが、それほど魚影が見えず、釣れないものだと思い込んでいたのだ。
なにせ、帯のように水面に群がった鮭の見釣りをジュノーで堪能して以来、見えないものは釣れないと変な思い込みができていたのだ。

「かかりましたあ〜。ピンクですう〜」

という声に視線を海に飛ばすと、ピチピチ跳ねるピンクが、のんびりしたカズの隣にいた。5回なげて来なかったら、あきらめるつもりだったのだが、スケベ根性で6回なげたその時にかかったという。

「食い気ありますよう。ここのピンク。岸からほんの少しのところで食いつきましたもん」

きれいなメスのピンクサーモンだ。よおーし、今夜はイクラ丼だあ。気合が入る。
オイラもまけじとキャストすると2度ほどかかるがどちらも逃げられてしまった。
このまま、この島を去る訳には行かなくなったぞ。

ピンク・サーモンをさばくカズ。
アブラが乗っていてうまいのなんの。

さっそくさばいて、刺し身とビール。胃袋につまっていた小魚の釜揚げが上手い!
いい気分だ。もう動きたくない。

「よおおーし、本日は停滞!」

と高らかに宣言すると、

「わあ〜い。やったあ〜」

心から嬉しそうなカズ。
よっぽど昨日のパドリングが堪えたらしい。
そのまま夕方までのんびりして、うめき声の聞こえてくる西の島へ航海にでた。目的は釣りと動物ウオッチング。テントサイトの島から、目的ののSouth Marble Islandまでは約4km。海鳥の繁殖地となっており上陸は禁止されている。うめき声の正体はアシカの集団。1頭のオスが数等のメスを囲ったハーレムを形成しているのだ。
二人乗り艇に、二人で乗り込み、ゆっくりトローリングしながら島を目指す。シルバーサーモンがカズの竿にかかったが取り込み直前で惜しくもバレた。
South Marble Islandには鳥だらけ。いるわ。いるわ。カモメのマンモス団地だ。そそり立った岩だなに気持ち悪いくらいのカモメが騒いだり旋回したり。まわりの海に浮いている変な顔をした鳥は、人気者のパフィン、日本でも北海道で目にできるツノメドリだ。顔はまるでサーカスの道化師。なんでこんな面白い顔をしているのだろうか。

人気者のパフィンがプカプカ浮いていた。

趣向を代えて底釣りに仕掛けを変えてる間に上げ潮に流され、岩に寝転がっていたアシカの昼寝岩の近くにフネが運ばれてしまった。いかーん。ここは50m以内に近寄ることが禁止されている。しかし運悪く、ルアーが底に根がかりしたらしく、外そうとすったもんだしている内にどんどん向っていってしまった。
とうとう、驚いたアシカ君たち全員海へ飛び込んでしまった。アウ〜。
なんとか根がかりから自由になって、島の北側へと流れに乗ったまま回り込む。
そのまま一周の旅に出た。高い木の天辺に白頭鷲。くるりと廻って集団で遊びにきたアシカと遊びながら、帰り道についた。釣果はカレイとドンコ。島にもどってからキャストするとメスのピンクをゲット!やったぜ。ピンクサーモンの刺し身、ソテー、炭火焼き。イクラの醤油&ビール漬け。2匹とカレイとドンコの煮漬け。熊の心配も無く豪華な晩餐にあいなった。

好きな本を読むこと、
好奇心を満たすこと、
獲物をとること、
のんびりすること、
ドキドキすること、
美味しい料理を食べ酒とを飲み、焚き火の前にすわること。
自分のしたいことだけで一日が過ぎた。幸せで満ち足りた一日だった。