2003年初夏・バンクーバー島北東部
ジョンストン海峡・オルカの海を旅する

Western Johnstone Strait
オルカの海を漕ごう!
カナダ・バンクーバー島北東部、ジョンストン海峡の報告。

往路はあまりにも、天気がよかったので、 グランビル島のエコマリンで、海図とトポを仕入れて ポートハーデイまでPCA(Pacific Coastal Airline)で 飛ぶことに決定! 重量オーバーも1kgあたり1Ca$ととっても リーズナブルだし、感じいいぞ。PCA。 ブリテッシュ・コロンビア沿岸水路の鳥瞰を堪能。ラッキー。

ハンソン島鳥瞰(手前がジョンストン海峡、奥がBLACK FISH入江

ポートハーデイで、タクシーの運ちゃん宅にやっかいになり、 バスとフェリーを乗り継いでアラートベイへ。

アラート・ベイのトーテムポール

オンボロK1を組み立て、オルカの群れる(であろう)海へ と船出したのであった。

しかし、オルカの気配がまったくしない!
ポートマクニールのホエールオウッチツアーに情報もらい にいくと

「オルカ?まだ北にいて、おりてきてないわよ! 再来週くらいじゃないの?」

とツアーすら出ていない。ガガガーン。 やっぱり早すぎたか!

でも、いいのさ。このタイミングでしか休めなかったし、 オイラの様な気の早い「ハグレオルカ」も、少しはいるだろ。 自分の勘と運を信じよう!

遠くカナデイアン・ロッキーの山々を眺めつつケルプの海を行く

ピーカンのジョンストン海峡は、天国のように美しい。

午後遅くの出発になったけど、オルカ研究で有名なスポング博士の 住むハンソン島へ渡る。ヘロヘロになり、テントに倒れ込んだ。

2日目は、朝から雨。
ファルトを引きずってきた疲れからか腰痛で立ち上がれず、 熱も少しあるようだ。SARS!??? 朝寝を決め込むと悪夢にうなされた。 クイーンシャロット島で闘っているハズの村田選手がでてきて 困り顔。無事にいろよお。ヘンテコ夢たちをハシゴして 起きたら夜8時!なにやっとんじゃー。

家庭や仕事をあんなに苦労してやりくりして、やってきたザマがこれか? コレがオレのやりたかったことなのか? 孤独と疲労と、湿っていく寝袋テント。 濡れていく体に心もすっかり後向き。とほほのほー。

3日目は、痛む腰をいたわりつつ、そぼ降る冷たい雨の中 ハンソン島北部をジワジワと這うように移動。 一頭のアザラシが心配そうに付いてきて、心が和む。 BLACK FISH(シャチ)湾と名の着く、ハンソン島北部は、 オルカの通り道のハズだが、やっぱりオルカの気配すらない。 スポング博士のオルカラボに到着。 ボランティアのおねいさんが暇そうに磯で、たむろっていた。 エコマのトポに、ラボには、緊急時以外はいってはあきまへん と書いてあったので、訪問は見合わせる。

調子があがらないので、ラボを過ぎた浜で、一泊することに。 ワザワザ、この場所に研究所をつくったのは、理由があるハズ。 ここで、オルカに出遭えなければ、諦めもつくさ。

ハンソン島の浜は、必ずといっていいほど、ハチドリが 居て、目の前に来て挨拶してくれる。

「やあやあ、一晩ごやっかいになるよ」

と挨拶。ふかふかのコケの カーペットの上で、まどろんだ。

黎明、まだうす暗いがただならぬ気配に目が覚める。

「キュィーン、キュイーン」

となにかが泣いている声が こだましていた。水面をバシャバシャとかきまわす音。

「ややか??、コレは、もしやシャチ君たちか?」

飛び起きて長靴を鳴らして浜にでたが、海にはなにもいない。 声の主は、ホッパーウィル。「夜鷹」だった。 すっかり、目がさめたので、メシをたべることに。 米をたきはじめると、白頭ワシのつがいが、飛んできて スプルースのてっぺんに止った。 海を見ている姿が凛々しい。

つられて、海を見ていると、雲間から光が射し、神々しい 光景が展開されていくではないか! なんかいるぞ。この気配は。。。

心臓がどきどきする。少し前まで、あちらこちらで聞こえて いた船のエンジン音もすっかり消え、鏡のように静かになった 海。米の炊けける音とMSRの息遣いだけが聞こえる。

その時、大きな音が海から聞こえた。 目の前の岩かげから、巨大な背鰭が。

「ブフォオー」

潮が吹き上げられる。 でたあ!でたでた、オルカだ。 しかも、50mと離れていない! 興奮しているともう一頭現れた。 思わず、動きがとまる。

いてもたってもいられず、K1を文字どおり 引きずってHEAD ON WATERへ。
腰の痛みは???えーいかまうこたない! カランコロンいうので、みたら、ラダーがぶちとれてる。 ゆるせ、相棒!

水面に滑りだすと、さすがはオルカ、もう彼方に去って しまっていた。しかし、その時、ブロゥのコーラスが。

黒い群れが潮を吹き上げるのが見えた。潮流にのり、 近寄ると、違うクジラの群れだった。
それは、それで、興奮するのだが、ひょっとして、さっき見たのも このチビクジラかい?あれは、オルカに恋焦がれる オイラが見てしまった夢幻だったのか?

と疑心暗鬼。そろそろスラック(潮止まり)の時間域だが、 まだまだ残る逆潮流に抗ってキャンプサイトに戻ろうとすると、 違う群れが、進行方向から、潮にのってやってきた。

4頭つのイルカのような背鰭。ジャンプすると あのブラック&ホワイトの模様があらわれた。 可愛いサイズのオルカ達だ。 目の前を悠々と横切っていく。

「あれえーまってくれー」

時速60kmにも達する彼らの速度にまともについていけるハズもなし。 一瞬の邂逅だったけど、もうお腹いっぱいだ。

「遭っちゃったー。シャチに遭っちゃった〜」

と小躍りしながら、海岸へ引き返した。 その日から、旅の模様が一変した。

なんでも前向き。なんでも、なりゆき。いいではないかあ。 余裕もでて、釣りも調子がでてくる。

残念ながら、もうひとつの目的のサーモンはゲットできなかった が、スズキ、フッコ、メバル、アイナメ、カサゴと 日本では考えもできないくらいの巨大サイズの魚たちを次々と ゲット。

(サーモンは、バンクーバ島側の河口でないとなかなか つれないとのこと。島周りを攻めたので失敗しちまった) ROCK FISH達は、入れ食いなので、大きいやつだけキープ。

干潟で、レッドロッククラブ(カニ)を蹴飛ばして確保。

干潮時に、胸まで水につかってウニ(なんとバフンだ!!!) をゲット。うめい。うめい。うめぃ!

毎日、晴れ間が少しでる3時に、刺し身とBlue Beerで、 一杯やって、笑いながら夕寝。 夜は焚き火の前で、ムニエル、鍋、煮付けを肴に、 Canadian Beerで、一杯が日課。嗚呼、幸せの日々よ。

あー、ワサビ持参してよかったあ。
あー、醤油たっぷりあってよかったあ。
あー、ビール、1ダースもってきてよかったあ。
少ない日差しにがんばって干したコンブがいいダシだあ。
肴のアラがいいだしだあ。
カサゴの刺し身がこんなに旨いなんて。
豊饒の海に乾杯。

あとは、再びの邂逅を求めてオルカの進路を、回遊したけど、 再会は叶わなかった。だけど、他のクジラたちや、 アザラシ、オットセイにたくさん遭遇するので、 飽きることはない。


オルカの回遊コース

地元のシーカヤッカー達となかよくなったり、 やっぱり、コレですよ。コレ。旅の醍醐味は。

ニコニコのまま、帰りは、グレイハウンドで、のんびり バンクーバーに帰還したのでありました。

カナダは人も自然も最高!!! テレグラフコブまで、車で行けば、カヤックをすぐ借りれてオルカの 海に浮かべるなんてうらやましい限り。

いつか、300頭もオルカが居るというシーズン(7月後半から8月) に、再訪してみたい。 その時は、彼らが食してるサーモンもゲットできるだろうしね。

人が居住しているところまで、1日漕げばつけるし、 キャンプ場もそこそこあったりして、女性にもいい。 なかなかお手軽なフィールドです。

潮が早い場所、時間には、難所もできるけど、家族連れでも ぜんせん平気だと感じた。 ブラック・ベアも少ないし、グリズリーは皆無。 今回はじめて、ベアスプレー(いつも買い捨てに なっちゃってたのよ)も購入しなかった位。 みんなで、繰り出せれば楽しいだろうな。

あー、アレで、 天気がもっとよくて(これからは良いみたい)、
暖かくて(これからは暖かいみたい)、
水温が温くて(これは寒流だからいたしかたない。。。)、
ビキニのおねいさんがたくさん(あくまでもただの欲望、いやもとい願望)
いたら、文句は何もないなあ。

おしまい。

クラクワット・サウンド