虹の雲

板をはがすぞ!


キャンプの朝は早い。 4時ころから、ウグイスの大合唱。 4時半ころから、目の前のテントのおじいちゃん、おばあちゃん軍団だ 朝ごはんの用意の音と談笑の声。

かんべんしてよーと、起きだしてテントサイトを歩いた。 すり鉢状の広場に色とりどりのテントが並ぶ。

3連休の初日ということもあって、アウトドア義援隊の参加者は約60名。 老若男女いろんな人が来ていた。 特使は、本日、浮気して義援隊のボランティアに参加するという。

受付に行くと、腕章を貸してくれて、タンブラーをいただいた。 ボランティア保険にその場で申し込み。一人500円也。

義援隊のとりまとめの長谷川さんが、 朝礼でボランティアの説明と 安全の注意事項伝達。

そのあと、班分けがはじまった。 アウトドア義援隊がやっているのは、 河川敷の清掃、排水溝の泥さらい、民家の片づけ。

ツナギに地下足袋、金髪メガネのいかにも現場監督ふうの人が リーダーになった班から人数募集を開始。

そこにこれまた現場仕事の達人風のひとが加わって 業界用語ばんばん使って道具の打ち合わせはじめた。

面白そうだったので、さっそく立候補。 まっちゃん、特使も加わってくれた。

金髪メガネの人は、村山さん。 ハイエースにはモトクロスバイクと高圧洗浄機が 積まれている。 てっきり、その道の人だとおもっていたら、小学館の 週刊スピリッツの編集者だった。 担当の漫画家を次々ボランティアにつれてきたり、 震災後すぐに、救援物資を満載しかけつけたり、、、 GWでボランティアは3回めという、男義のある人だ。

現場仕事の達人は、山口さん。 板橋で鍵屋を営んでいて、若いころは現場仕事の 調整を務めたり、鉄骨建造の会社に勤務して独立。 こちらもハイエースに工具を豊富に積載。 趣味はバイクツーリングとダイビング。 明るく優しい人で、いつしか、みんなから「棟梁」 と呼ばれるようなる。

僕が勝手に村山組と名付けたチームが誕生した瞬間だった。

村山組

車3台に分乗して、東名地区のNKさん宅のお手伝いに出動。 NKさん宅そばの東名駅は線路が脱線し、90度まがって 柵のように立ってしまっている。津波が2.5mほどの高さまで 到達していて民家の1階は壊滅状態。土台ごと動いている家もある。

今日の仕事は1階の床板はがしと床下の泥かき。 さっそく、村山さんと、棟梁が、バールとハンマーで 床板をはがし始めた。危険そうだったので、迷わず そちらの作業に入った。これでも現場仕事は本業みたいなものだ。

最初はハンマーが滑って指をたたいたりしてたけど、そのうち慣れて 熟練二人の3枚はがすうちに、2枚はがせるくらいになった。

床板はがして泥かき

NKさんは、昔、遠洋漁業の漁師をやっていて、 今は牡蠣の養殖をやっていたとのこと。 ポツリポツリいろんなことを話してくれた。

東名は全国に牡蠣を種付けして出しているそうで、気仙沼や 広島の牡蠣もほとんど、ここで種付けしているという。 いつ復活するのか、、、そんな問いが喉まででてきたけど飲み込んだ。

集中してやっていたので、すぐにお昼に。昼に、雲が虹色にそまった。 彩雲と暈があわせて現れる珍しい現象だった。

瓦礫の上にかかるふしぎな虹。

NKさん宅が終わったので、NKさんから紹介されたKKさん宅と、 朝の作業中に依頼のあったKNさん宅に歩いて移動。

アウトドア義援隊の基本スタイルは独立だ。 民家の片づけのお手伝いをしていると、その周辺からも 注文をいただく口コミで、基本的にどこからきたどんな オーダーも受ける。

この自由さのすばらしさ。お役所しごとのような取り決めもない。

マスメディアでは報道はあまりされていないが、泥棒や、 お手伝いした人がお金を請求したりする事故が頻発している から、信用第一なのだ。

お手伝いしていた人が紹介してくれたり、 みていた人が問い合わせてきてくれるので、村山組は ひっぱりだこだ。

石巻でトラックの運転手をしていたKKさん、オートバイ (FZR)を収納していたガレージが泥まみれ。 KNさん宅は、家の中に泥や家具が積み重なった状態だった。

村山さんの高圧洗浄機も大活躍で、泥まみれのものを みるみるきれいにしていく。

泥だらけのオートバイがぴかぴかになり、 ガレキとゴミの山積みだった家の中がみるみるきれいになっていく。

掃除自体は大変だが、確実にきれいになるし、 そうすると被災された方々の顔も笑顔がでてくるのがまた、嬉しい。

一日に何度、ありがとうをもらったことが。

いえいえ、こちらが、ありがとうです。

仕事を終えて、村山組の、 棟梁、アオヤマ山ノボラー、特使、まっちゃんの5人で 松島の絶景温泉へ。最高の気分に、一足お先にプチンプファー。

飲めない、まっちゃんが運転手をしてくれたのだけど、 慣れない特使の車を、買いだしにいったスーパーで 被災されて避難所にくらしているSさんの車に接触してしまった。

これでは、本末転倒ではないか。 修理代を払いますという僕らに、いいよいいよと、Sさんは 許してくれた。

作業初日は、棟梁のBBQセットで宴会で幕を閉じました。 盛りだくさんすぐて、長い長い1日でした。