オラオラ隊ユーコン奮闘記(4)

川で熊と出会ったら!


よーやく、川に向けて出発だ。サウス・マクウェスタン川というクリアウォーターを数キロ下ってからスチュワート川に出るようにした。スチュワート川は少し濁りがはいっているので、 どうしても、クリスタルウォーターを下りたかったのだ!

カナディアン・カヌー3バイを車に積んでいるディータが見えたので手伝った。 プラスチック製のカナディアンの重いこと重いこと。 これを一人でやっているのか?というくらいの重労働だ。

1日の川下りでこれをやるのは、気が進まないだろうなあ。 昨日、クロンダイク川をやれなかったのは心残りだが、 ちょっとディータの気持ちがわかった。ホステルは11時から16時まで無人になる。

その間に、片道2時間かかるスチュワートリバーの ドロップポイントへ僕らを運んでくれるのだ。

ディータはいつみても働いていて、いつ休んでいるのかと不思議に思うくらいだ。

トランスポートしてくれるジータ。向こうにいるのはアコーディオンおじさん

「10月からはOFFだから南に下って旅暮らしするんだ。  この冬(南半球は夏)は、アコンカグアに登ろうと思う。」

出発点までの搬送の途中で、助手席に乗ったオイラはディータと ポツポツ話しをした。

ヒッチハイクや自転車で世界中を回ったこと。 インドネシアでの旅の話。 日本にもきたことがあって、英会話の先生をやっていたらしい。 「サンダカン八番娼婦館」という映画に出演したとのと。 英語力のなさで、「prostitute=娼婦」がわからなかったが、 有名な映画だと力説していたので、知らなくてごめんと謝っておいた。

カヌーイストの野田さんとも親交があるというので、出会った頃の ことを聞いてみた。 サークルで出会って、バーチクリークの近くで遊んだらしい。

日本に帰って「ユーコン漂流(野田知佑)」を読み返したら、本当だ。 サークルのところで、ディータが登場していた。 (ごめん。すっかり忘れていました!) 同じような会話を交わしたのが面白い。

カヌーとギア、そして食料とビールを満載した車が 出発点のサウス・マクウェスタン川に到着。 記念撮影をして、荷物をカヌーにボンボン放り込んで出航した。

ジータといっしょに記念撮影!

パッキングに時間がかからないのがカナディアン・カヌーの良いところだ。

カナディアンでユーコンの川を下るのは初めての体験だった。 飛ぶようにカヌーが流れていく。メンバーの顔には満面の笑み。 そりゃあ、そうだあ。ようやく、川に出れたんだもの。 クリアウォーターは、あっという間に終わって、スチュワート川へ。

そこで、流れに身を任せるはずだった、、、のだが、 あんまし流れていない!実際は時速5キロくらいで流れているのだが、 進んでいる感じがしなかった。 カヌ

ー3バイに6人だから、いろいろな組あわせが可能。 さっそくジャンケンでチーム分けをして、 初日のオイラは、ローラと漕ぐことになった。 なんとローラはオイラの母上と同じ歳くらいだ。 めっきり弱ってしまった自分の母と比べるとその元気さと バイタリティは、驚くべきことだ。

ちょっと漕ぎたくなって、本格的にパドリングして先頭にでる。 しばし、ユーコンの自然に身をゆだねた。 なんか動いたぞ!? 遠くの左岸で黒いものが動いた! そして川に飛び込んだぞ。

どんどん右へ流れていく。耳が大きい!

「ローラ、熊だ!」

と舟首に乗るローラに声をかけて、パドルを早めた。 なんということだ。ローラはあさっての方角を見ている。

「川です!川!ホラッ、いま正面!」

ようやく気づいてくれた。 

「追いかけよう!漕いで!」

???のローラ。

「大丈夫。泳いでいる時は、熊は何もできないから、    じっくり見ることができるチャンスです!」

ふたりで、懸命に漕ぐが、追いつけない。 なんと熊の泳ぎの速いことか。 中州に上陸して、体をブルブルさせて水を切り中洲を 躍動しながら駆け抜け、中州の向こうの川を泳いで逃げていく。 その逃げっぷりの惚れ惚れすること。 そして、陸上を走る速さよ。 興奮してしまった。 後続のフネたちでも、確認できたようで、一同騒然となった。

実はユーコンといっても、熊に会うことは少ない。 10日から2週間の川下りで1度目にすれば、運が良い方だ。

なのに、幸先が良いというか、ベアカントリーというか、 さすがスチュワート川。人があんまり行かない上に、道路から離れた 区間は、熊密度が多そうだ。

誓約書や遺書まで準備して望んだ今回の旅。 その理由は、熊。

Yukonの川旅が他での川旅と決定的に異なるのは熊の存在だろう。 特にグリズリーと出会ったら、景色が一変する。

今回初めてユーコンに来たノモやんは、熊の本を5冊も読み込んでいて ちょっとした熊博士になっていたので、すかさず、熊隊長として任命した。

熊隊長ののもやん

そして、チエねーさんも、アメリカの先住民族(インディアン)に 弟子入りしていたことがある。

驚いたに、チエねーさんの動物眼はすばらしく、どんな時でも 動物を見つけ出してしまうのだ。 熊をはじめとした野生動物や植物への造詣も深い。 女っぷりも良いので、こちらには熊番長になっていただいた。

熊番長のチエねーさん

初日にしかも川に出て数時間もしないうちに、熊に出くわしたのだから、 「熊隊長」と「熊番長」がすっかり、眼を輝かせてしまった。

まだ早いが、初日ということで、キャンプ地点を探しながら下ったが、 二人の厳しいチェックで熊の足跡が発見されると、そこでのキャンプは却下されるのであった。 広く見渡せる川原で熊の足跡がないところを発見したので、本日の宿に することに決定。

フネ、炊事場、テント場がそれぞれ100m以上、離して設置された。 厳重な警戒のもと、われらの初キャンプが始まったのだが、 お酒とハーモニカの音色に、気分はみんな小学校の夏休みに戻ってしまうのであった。

おしっこにいった折に、熊の足跡を発見したけど、もう動きたくなかったので、 「熊隊長(ノモやん)」と「熊番長(チエねーさん)」には黙っておいた。

やっぱりアリマシタ!

真夜中が過ぎても暗くならない夜空を眺め、オーロラを探す。かろうじて それらしきモヤモヤを認めたが。。。 モヤモヤしたまま眠りにつくのであった。