序
石造りの家並みはどれも無残に崩れ、焼け爛れてあちこちで煙を上げていた。
周囲を取り囲む鬱蒼とした森を照らし出す紅連の炎の中に、赤子の泣き声が響く。
足音が近づき、瓦礫の中を覗き込んだ。
瓦礫の周囲には、炭化した幾つもの黒い影が倒れている。
男は燃え盛る炎の中に、無造作に手を差し入れた。
瓦礫に隠されるように埋もれていた包みを、ゆったりとした腕が拾い上げる。
そこだけ炎が避けて通ったかのように、包みには焦げ跡一つ無い。
布に包まれていた赤子は男の腕に抱きかかえられると、ぴたりと泣くのをやめて自分を覗き込む黄金の瞳を見上げた。
途端に瓦礫が最後の支えを失って音を立てて崩れ落ち、激しく炎を巻き上げた。
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