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王の剣士4 「かりそめの宴」
【第四章 「生者達の舞踏」】


『レオアリスは私が兄上に会えなくてもいいんだ』
 ファルシオンの言葉が、ふとした拍子に何度となく頭の中に甦る。
 裏切られたような、悲しみを宿した金色の瞳。
 確かに、そうかもしれない。
 ファルシオンはレオアリスにだけ、兄がいる事を告げたのだ。レオアリスなら、自分の望みを叶えてくれると信じて。
 それならば、やはりレオアリスはそのあどけない信頼を裏切ったという事になる。
『レオアリスにはかんけいない!』
 ぎり、とレオアリスは奥歯を噛み締めた。
「…将――、上将?」
 呼ばれて視線を上げたそこに、ヴィルトールの訝しそうな顔がある。
「――ああ」
「お疲れ気味ですね」
「いや、大丈夫だ。それより」
 ヴィルトールは一度レオアリスの瞳を見つめてから、前方の地面を指差した。掘り返され、黒く湿った土が覗いている。イリヤが西海の使隷を埋めた場所だ。
 レオアリスとヴィルトールは、今この西外門辻にいた。周辺を右軍の一小隊が捜索している。
「昨日我々が着いた時は既に陽が落ちていましたが、掘り返した跡があった為すぐに場所は判りました」
 レオアリスは穴に近寄ってしゃがみ込み、湿った土に触れた。肘の手前まで入るほどの深さしかない。
「それほど深くは掘らなかったんだな」
「石や建材の破片が土中に多く埋まっていて、掘りにくかったでしょうしね。あの壺も掌より少し大きい程度です、余り深さもいりませんし」
「うん……。ここに来た時、掘り返した跡以外に気付いた事はあったか?」
 ヴィルトールは立ち上がり、昨日の夕闇の情景を思い浮かべるように周囲を見回した。
「思い出す限りでは、何も無かったと思います。無人で、静かなものでした」
「そうか……」
 膝を付いたまま、レオアリスは瞳を細めてその穴を睨んだ。
 イリヤが埋めた西海の使隷。ビュルゲルが与えた四体の内、残り二体がどこにいるのか。
「法術院からは?」
 レオアリスが読んだ通り、院長のアルジマールは瞳を輝かせて球を受け取ったそうだ。
「今のところまだ連絡はありません。さすがのアルジマール殿も昨日の今日じゃあ難しいでしょうね」
「まあな……」
 レオアリスは土に手を当て、瞳を閉じた。
 土に残っている異質な気配、あの使隷の気配の片鱗が僅かに感じられるものの、そこから掴み取れるものは無い。身の裡の剣にも、反応は無かった。
 レオアリスもまた立ち上がり、ヴィルトールの隣に立って背後を振り返った。疎らな木立の向こうに街道辻がある。昨日、イリヤと出会った場所。
 イリヤはどうしているだろう、とレオアリスはその事を思った。レオアリスを欺く為とはいえ、この時期にすぶ濡れになるまで水を被ったのだ。歯の根も合わないほど震えていたのは確かで、最後に見た時は体調は回復していたようだが、それでも赤の塔は厳しいだろう。
 王に会う、その為に、イリヤは自ら監獄に入った。
 第二王妃の息子だと公然に証明してみせるより、罪を以って急速に、王に存在を知らしめる事を選んだ。
 ただ、会う事、その為に。
『この名を捨てに来た』
 それだけが、イリヤの望みなのだろう。
 だからレオアリスに敢えて自分を捕らえさせたのだ。
 けれど、彼がそうするよう望んだ通り、レオアリスが王へイリヤの事を告げれば、王はイリヤに面会を許すだろうか。
(そんなに上手くいくのか)
 レオアリスが告げる前に、もう王はイリヤの存在を知っているはずだ。
 ファルシオンははっきりと、父王への手紙の中で、イリヤの事を尋ねたのだ。その上で、王はファルシオンに会おうとしなかった。
(俺に、何ができる……?)
 イリヤが、王に会う為に。
 ファルシオンが、兄と会う為に――。
 イリヤの存在という事実を周囲に伏せなければならない状況下で、レオアリスが何を、どこまでできるのか。
 王その人の想いは、どこにあるのだろう。
 剣が騒めく。
 王本人の想い――それが最も根底にあるべきものだ。
 それが知りたい。
 王への面会の申請については、グランスレイが今、王城へ行ってくれている。当然、ラナエ・キーファーの身柄引き受けについて王の下命を得る為だが、もし、面会の許可が下りたら、どこまでを王に問うべきだろうか。
 そしてそれが正しい方向なのか、ただ自分の感傷から来る望みなのか、レオアリスは答えを見つけられないでいた。
(でも、会いたがってるんだ、それなのに会う事もできないなんて、そんな事が正しい訳がない)
 同じ三つの金色の瞳が、同じ場所を見る事ができれば、全てはあるべき場所に納まるのではと思う。
 それとも単なる希望か。
「――」
 レオアリスはまるで出口の見えない思考から抜けようと、頭を振った。
 今、レオアリスができる事は二つしかない。西海の使隷の捜索と、ラナエ・キーファーの身柄の保護。
 せめてラナエという少女の事だけでも、確実に第一大隊で引き受けられるように進めるべきだ。
 イリヤがレオアリスに頼み、レオアリスは頷いたのだ。
 ラナエを第一大隊で引き取ってその後どうするか、決まった答えを持っていた訳ではなかったが、その位は確実にやりたかった。
 それがイリヤの本心からの願いであり、レオアリスが頷いた時のイリヤの表情には、深い安堵があった。
 だから王の下命を受け、まずは第一大隊で引き取る。
 ファルシオンは今度こそ、レオアリスを許さないかもしれないが。

 レオアリスの微かな溜息を聞いて、ヴィルトールはレオアリスの横顔にそっと視線を落とした。先ほどからずっと思考に沈んでいて、本人は溜息をついた事も気付いていないようだ。
(色々気になる事があるみたいだなぁ)
 今回の件の触れざる部分、そこを問えない以上明確な事は判らないが、レオアリスは周囲の事を気に掛け過ぎるのだ、と思う。
 剣士といい、近衛師団大将というには優し過ぎるともいえる性格で、任務と割り切って切り捨てるのは難しい。尤もヴィルトールは、それが悪いと言うつもりはない。
(私は好きだな、この性格は)
 ヴィルトールはゆっくり息を吸い込み、吸い込んだ息と同じくらい、長く盛大な溜息をついた。その深刻そうな溜息に、レオアリスが訝しそうにヴィルトールの顔を見上げる。
「どうしたんだ? 溜息なんて」
「いやぁ……、娘が口をきいてくれなくて」
「娘?」
 唐突な言葉に、レオアリスがぽかんとした顔を見せる。
「――今三つだっけ。口をきいてくれないって」
 ヴィルトールは心底悲しそうに眉を下げて俯いたまま、溜息と言葉を一緒に吐き出した。
「叱るのは親の役目じゃないですか。そう思いますよねぇ?!」
「え? あ、ああ」
 何だか声に妙な迫力がある。レオアリスは一歩、退いた。
「それも男親の役目だって妻が言うもんだから、仕方なく叱るんですよ、私も! 泣く泣くです。判りますよね、可愛い娘を叱らなくちゃならないこの辛さが!」
「いや、あ、そ、そうだな」
 本気なのかどうか、ヴィルトールは半分涙目になりかけている。レオアリスはもう一歩、後ろに退がった。
「それで今朝も叱ったんですが、そうしたら、お父さんなんかだいっきらい! とか言われて……私は……、私はどうすれば」
 三十半ば、六尺あまりの長身の男が、娘が口をきいてくれないと涙ながらに訴えるのは、とても奇異な光景だった。
(ヴィルトール、普段格好いいのに……)
 親になるとこうなってしまうものなのか、と何だか暢気な事を深刻に受け止めたのは、十七歳の少年ならではかもしれない。
「まあ、そんな気にするなって。判ってるよ、娘さんも。ヴィルトールが誰の為に言ってるかなんて」
「……そう思いますか?」
「思う。俺だってガキの頃、良くじいちゃん達に叱られたけど、今になったら何の為に叱ってたか判る。それに怒られた事なんてすぐ忘れてたし――だから帰ったらもう笑って待っててくれるさ」
 情けなさそうに歪めていた顔を、ヴィルトールは安堵に緩めた。
「そう、そうですよね! いやぁ、何だかほっとしましたよ」
 言葉に違わずあまりにほっとした顔を見せるので、レオアリスは可笑しくなって込み上げる笑みをそっと堪えた。
「今日は早く帰ってやれよ、最近また遅かったし」
「そうさせて戴きます。私の分の仕事はクライフに回してください」
「クライフにって」
 ヴィルトールは足取り軽く歩き出し、レオアリスも後を追って街道の方へ向かった。ヴィルトールの情けない顔は珍しいが、愛妻家で娘をこよなく愛するヴィルトールならではの悩みと言えて微笑ましい。何となく、自分まで気持ちが軽くなるようだ。
 そう考えて、レオアリスはふと足を止めた。
(……あれ?)
 何故任務中唐突に、ヴィルトールがあんな事を言い出したのか――。
 その理由が、雲間から覗いた陽光のように、ぱっとレオアリスの中に落ちた。
(――そうか)
 ファルシオンとのやり取りは事務的に結果だけを伝えたつもりだったが、相当面に表れていたのかもしれない。
(心配させたんだな)
 それは情けないと思う半面、ゆっくりと立ち昇るような嬉しさがあった。
「上将、取り敢えず小隊を引き上げますか? 今のままでは捜しようがないですし」
 ヴィルトールが振り返り、立ち止まっているレオアリスに呼び掛ける。
「……そうだな。今は法術院の結果を待とう」
 そろそろ王へ申請した面会について、グランスレイが回答を持ってくる頃だ。レオアリスも頷き返し、少し足を早めて街道に出た。


「グランスレイ殿」
 王城の廊下で声を掛けてきた男を見て、グランスレイはその場に跪いた。
「ゴドフリー侯爵――、先日はお騒がせを致しました」
「いや、お騒がせしたのは私の方だ。せっかく大将殿に園遊会へお越しいただいたのに、とんだ面倒をかけてしまった」
「とんでもございません」
 ゴドフリーはグランスレイに立つように促し、廊下の壁に寄った。
 挨拶だけではなく話があるようだと気付き、グランスレイも彼の傍に近寄る。
 ふと、グランスレイの面に沈んだ色を認め、ゴドフリーは眉を上げた。
「浮かない顔をしているな、どうかなさったか」
 問われて、グランスレイは慌てて顔を引き締めた。
「いえ、お気にかけていただくほどの事では。大変失礼いたしました」
 王に面会の申し入れをしたが、今日は時間が取れないと退けられた、その帰りだった。ロットバルトの言っていたイリヤ・キーファーに関する秘匿が及んでのものなのか、それが気に掛かっていた。
 そうであればこれ以上、この件に関わるべきではない。
 グランスレイの瞳の中にある幾つもの感情に、ゴドフリーはそれ以上は尋ねず、頷くに留めた。
「近衛の任務には色々気苦労も多かろう」
 そう言うと、一見にこやかな笑みを崩さないまま、ゴドフリーは周囲に聞こえないように声だけを低く抑えた。
「不躾な話で恐縮だが――大将殿はまだあの件に関わっているとか」
 警戒の色を出さないよう、グランスレイもまた表情を保ったまま、頷き返す。
「そうか、迷惑を、と思っていたが、どうやら元々貴殿等の分野だったようだな」
 そう言ってから、グランスレイの顔を見て破顔した。
「硬くなる必要はない、含みはないのだ。――しかし」
 口を閉ざし、通りかかった官吏の男達に軽く会釈をして、ゴドフリーはまたグランスレイに向き直った。
「今回、キーファー子爵家とフォルケ伯爵家が抑えられたのが何の故か、もう様々な憶測が飛んでいる。日を追うごとに一層賑やかになるだろう」
「既に……」
「近衛師団が動いたという事は即ち王のご意思という事だからな、それも王の剣士が動いたとあれば、理由が気になりもするだろう。審判がいつ行われるのか、それまでに理由が公開されるのか、皆そこを知りたいのだ。特に三日後には新年の祝賀式典があるだろう、それまでにこの一件が落ち着くのかどうか、私もそれが知りたいところだ」
 ゴドフリーは瞳を細めた。
「――やはり、先日の一件が関わっているのか?」
 グランスレイは目だけで肯定を返し、慎重な眼差しでゴドフリーがそれを見つめる。
「あれが何なのか、師団では掴んだのか? 情けないが当家の調査では掴めなかった。元々おおっぴらにするつもりはない、大した調査ができなかったせいもあるが、現場には全く痕跡が無いのでな」
「明確に判っているのは、こう申し上げては失礼かもしれませんが、あれが起きたのは偶々侯爵の邸内だったという事です。日を違え、場所を違えていても、恐らく同様の事はあっただろうと考えております」
「――ふむ」
 ゴドフリーは暫くじっとグランスレイの瞳を見つめていたが、再び笑みを広げた。
「成る程、それを聞いて安心した。手間を取らせたね」
「いえ、滅相もございません」
 ゴドフリーはこれで会話は終わりだと言うようにグランスレイの肩を叩いた。グランスレイも会釈を返したが、彼がただその為だけにグランスレイを呼び止めた訳ではないだろう。王の意思を測ろうと、そう考えていたのは確かだ。
 それだけ、今回のキーファー子爵家の一件に関心を寄せていると言う事だ。
 ゴドフリーは声音を戻し、にこりと笑った。
「早く落ち着かれる事を願っている。またぜひ、大将殿には宴においで頂きたいと思っているのだ」
 その笑みは裏表なく、グランスレイは深く頭を下げ、彼が離れていくのを見送った。
(憶測か……)
 スランザールや、またアヴァロンがこの件を秘密裡に進めようとしている中で既に城内が騒めき始めているという事は、急速に事態が動く事も想定された。
(陛下はどうお考えなのか)
 近衛師団が動く範囲ではないと判ってはいるが、どう影響してくるかが判らない。
(西海の事もある。ある程度でも先行きが読めればいいのだが)
 少なからず胸騒ぎを感じるのは、現在の状況からというだけではなく、グランスレイのこれまでの経験から齎される感覚でもあった。
 嵐の前夜の、皮膚に絡む湿っぽい風のような。
 ゴドフリーの姿が廊下から消えた後も、グランスレイは暫く思考に落ち込んだようにその場に立っていた。

 士官棟に戻った時、執務室内には幸い、ロットバルトの姿しか無かった。グランスレイの表情を見て、ロットバルトが書類を置いて立ち上がり、机の前に出る。
「陛下は」
 グランスレイはただ首を振った。
「王城で、ゴドフリー侯爵にお会いした。侯爵の話では、既に城内では噂が立ち始めているそうだ」
「噂が?」
 ふ、と引かれるように、ロットバルトが視線を上げる。
「……噂が出るのは当然、仕方ない事ですが、ゴドフリー卿がわざわざ探りを入れてくるほどとは……」
 思った以上に早いかもしれないな、とロットバルトが呟き、何が、とは問わずにグランスレイも頷いた。
「ラナエ・キーファーの件、暫く静観すべきかもしれん」
 ロットバルトはすぐ同意するだろうと思っていたが、返ったのは少なからず考えあぐねた答えだ。
「――難しいですね」
「上将か? だが、今は距離を置く事が」
 問いかける視線を受けて、ロットバルトはグランスレイを見つめた。
「上将が納得されない、その点もあります。しかし一番の問題はラナエ・キーファーがいる場所です。それが殿下の館でなければ、この件は随分楽なんですが」
「西海か」
「それもありますが、殿下の近く、という事自体に問題があります」
「――」
 グランスレイはそれまで耳を塞いだままにするべきか迷っていた事を、尋ねる事にした。そこが判らなければ、この件は判断しようがない。
「具体的な事を口にする必要はない。だが、この後の判断には重要だ」
 ロットバルトは瞳を細め、続く言葉を待っている。
「今回の根底にあるのは、我々近衛師団が触れざるべき事――、近衛師団が守るべき事か」
 王家に関わる事か、とグランスレイは聞いているのだ。
「――そうです」
 ほんの僅か沈黙があったが、想像以上にロットバルトの返答は早かった。その沈黙と回答の早さが、よりこの件の深く重い部分を示しているとも言える。
 ただ、グランスレイとしては、そこが判れば十分だった。任務上、真実を押し隠したまま動かなくてはならない事など、少なくは無い。重要なのは、彼等が何の為に動くかだ。
「判った。これ以上は聞かん」
 頷いて、ふと、ロットバルトの複雑な表情に視線を止めた。そこに含まれているのが安堵だと気付いて、意外な思いと共にグランスレイは微かな苦笑を浮かべた。
「……さすがに、疲れているようだな」
 グランスレイの指摘に、ロットバルトもまた苦笑を返す。
「貴方が状況を認識されているのといないのとでは、だいぶ違いますからね。本来は隊として、少なくとも中将以上は共通理解を持って動くべきところです。それができないのは厳しい」
「確かにな。しかし、それが仕方のない事はある。――お前にばかり負わせて悪いが」
「私のは単なる愚痴です、お気になさらず。しかし――」
 声音から笑みが消える。
「上将には、難しい選択ばかりでしょう」
 ファルシオンに対して内心とは違う行動を取らなくてはならなかったように、この件に於いてはレオアリスは、近衛師団としての立場を貫こうとすればするほど、自らの想いに反した選択をしなければならない。
「近衛師団大将として、か」
 レオアリスを大将に強く推したのはグランスレイだ。剣士という突出した存在である事が大きかったが、レオアリスにはそれが務まると考えたからでもある。
 そして何より、王への深い思慕があった。
 ただその想いは時として、レオアリスにとって二律背反の迷いを抱かせる。特に今回のような場合には、それは顕著に彼の上に現れている。
 若く、経験が少ないと、その言葉だけでは収められないものだ。
「我々が補佐すればいい。そういう配置をしているからな」
 その為にいるのだ、というグランスレイの言葉に、ロットバルトも頷く。
 グランスレイはふとロットバルトの机の上に置かれていた書類に視線を落とし、少し驚いた顔をした。
「祝賀式典か……そう言えばもう三日後だったな」
 三日後に、この国も新年を迎える。年が明けて最初に行われるのが祝賀式典だ。内政官房が中心となって取り仕切り、今頃慌しさを極めているだろう。
 ただ、今の状況からは、その書類を見ても自分達とは別の場所で行われる事のように思えた。
「ちょうど書類をご確認いただこうと思っていたところです。例年通りの事で、我々師団は準備と言っても警護の再確認程度ですが。すっかり紛れていましたね」
「そうか」
 グランスレイは書類を手に取り、項を捲って内容に眼を通す。
「――式典は」
 ふと、項を繰る手を止めたが、結局その先は口に出さずに、再び書類に視線を落とした。



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