第二十一話「タウンパニック


放送日:84年8月23日
脚本: 塚本裕美子
絵コンテ:小鹿英吉
演出:小鹿英吉
作画監督: 土器手司


起動したゴーグは、格納庫から抜け出ると、滑走路のヘリを破壊しながらGAILタウンの巨大ドームに侵入する。

その騒ぎをタワーの個室で聞きつけるレイディとデヴィ。

「何事だい?」
「たいへんですぜ、外で人型が・・・!」
「 ええ!?・・・おやまぁ・・・不始末をしてくれたこと。坊やをつかまえてるくせに、ロッドは何をしてるのさ?」
「・・・あの若大将は頼りにしすぎない方がいいみたいですぜ。」
「おだまり!・・・何よあたしのやり方に文句があるっての!?」
「い、いや、そういうわけじゃ・・・ただその、GAILと取引するったって、一体いまさら何を?」
「黙って見てりゃいいのさ。フン・・・誰が頼りになんてしてるものか、あんなヤツのこと・・・


外の混乱に乗じて、牢を脱出する船長。これを待って、わざと捕らえられたのだ。

「船長!どこ行くんい!?」
「何とかして悠宇を探し出す!さもないと、我々もゴーグにやられるかもしれんぞ!?」


一方、悠宇の病室に入ってきたMrゴトーは、医師団に命令する。

「移動だ。トラブルが起こった。」
「移動?しかし調査は・・・・。」
「人型が動き出した、グズグズはできん。」

(ゴーグが!?)

がぜん元気になる悠宇。 そこに入ってくるロッド。

「どうするつもりだ、ミスター。」
「見ての通りです。やはり検体はニューヨークの本社に移さねばなりません。」
「ニューヨークだと?・・・Mrゴトー、君はいつからこの俺に指図できるような身分になったんだ?」
「い、いえ、ロッドさま。はじめから、このプロジェクトは、本社の指示に従って・・・」
「支社長は俺だ。この子の搬出は俺が許さん!」
「で、ですが・・・」

とりつくしまも無く、ゴーグへの対処のために出て行くロッド。それを確認したMrゴトーは、顔をゆがませて笑う。

「フ・・・フハハ・・・ハ・・・」

びびる医師団と悠宇。

「何を見ている?非常通路を使って、早く運び出せ!人型に気づかれるな!」
「しかし、支社長が今しがた・・・」
「ン、ン〜・・・・?なにかね?キミたちは、私の言うことが聞けんと・・・?あんな青二才に何がわかるというんだ!!さっさとせんか!文句あるヤツはクビだーーーっっ!!」


タウンに入り込んだゴーグを迎撃する、ベームの戦車隊。

しかし、例によってゴーグにはキズひとつ負わせられず、町の被害は甚大になりつつあった。


ドリスたちと合流した船長らは、医務室にたどり着くのが一歩遅かった。ヘッケルを脅迫して、悠宇の後を追う一行。
だが、追いついた時には、すでに悠宇を乗せた救急車が発車しようとしていた。

「悠宇!」
「あぶない、行っちゃだめ!」

たまらず飛び出したドリス。機関銃の砲火を受けて、気絶、階段から落下する。
一瞬の判断で、周囲の兵士を迎撃し、落ちてくるドリスを受け止め、ジープとカートを奪い、救急車を追って急発進する一行。
ドリスが何秒間かの気絶からさめると、すでに 滑走路に続く道路上であった。


Mrゴトーの造反の報告を受けるロッド。

「なんだと!?そうか、わかった・・・・。タヌキめ!」


タウンでおお暴れのゴーグ、悠宇の位置を追うように、方向を転換する。ますます広がる被害。


悠宇の救急車を載せた輸送機が、滑走路を走り始める。
ギリギリの差で追いつかなかった一行。後ろからGAIL軍からの砲火を浴び、トメニクとドリスを乗せたカートが横転する。

「ああ!ドリスーーッ!」
「アニキ!」

輸送機の中では、そんな外の修羅場を知ってか知らずか、Mrゴトーはひとりほくそえむ。

「この島とも、しばしのおわかれだ。あの青二才が来てから全てが滅茶苦茶だ。会社にかけあって、なんとかしてもらわないとな・・・。孫だか何だかわからんが、間違っとるよ!人事に私情をさしはさむとは・・・そう思うだろ、キミ!
「はあ・・・」
「まあ、いい。ヤツもこれまでだ・・・フッフッフッ・・・・」

離陸し始める輸送機。それを見て舌打ちをする船長。
だが、突如海側からロケット弾が飛来し、輸送機の足を止めた。原住民ゲリラがやってきたのだ!


「何、それでは誰なんだ!?輸送機を止めたのは!」
「不明であります!海側からの砲撃が確認されているだけです」

報告を受けるロッドに、レイディとデヴィがからんでくる。

「なんてザマなのさロッド。巨人はあのぼうやの言うことを聞くんだって、言ってたじゃないのさ。あの子はどこにいるのよ?」
「うるさい!女の出る幕じゃ無い!」
「!?ナマ言うんじゃ無いよ!・・・何さ!ドジばっかりのくせに!」

突然、地鳴りと共に、彼らの真上の壁をぶちやぶるゴーグの腕。大小無数の破片が落下する。
とっさにレイディをかばうロッド。
ゴーグは、そんな彼らをまたいで、滑走路に歩いていく。

「・・・・」
「・・・・・」
「・・・女はじゃまだ、引っ込んでろ!」

そう言い捨てて、ロッドは仕事に戻る。


「旧島のみんなだ!」
「来てくれたんだね・・・!」

と目をうるまして感動するアロイとサラ。一方ゲリラたちは、はじめてまざまざと見るゴーグの威容に興奮を隠せない。

「見ろ!ゴーグだ!」
「おおおお・・・っ!」
「神の使いだ!」
「神の使いが味方してくださるぞ!」
「ホツ・マツァの言ったとおりだ!」


一方、輸送機を制圧した船長たち。ドリスは救急車のベットの上の悠宇と再会する。

「悠宇!しっかりして、目をあけて!」

だが、悠宇は死んだようになっていてドリスの呼びかけにも答えない。不安になり、涙をこぼすドリス。

「ね、お願い、悠宇!」

涙が悠宇のほほに落ち、意識が戻る。

「あ・・・わ、わかる・・・あたし、ドリスよ!」
「・・・・ドリス・・・・。」
「ああ、悠宇、よかった!よかったぁ!」


外では、ゲリラたちを殲滅しようと、戦闘ヘリ・バッソーが飛来していた。

Gooorg!

ゴーグはしかし、付近の街灯を引き抜いて投げ、あっという間に撃墜していく。


「ぼうやの好きなお友達が、来てくれたようだな?」

船長にうながされ、輸送機を降りた悠宇。たまらずゴーグのもとに駆け出す。

「ゴーグーっ!!」

・・・GOOOOORG・・・・

夕日をバックに、走っていく悠宇。それを迎えるようにかがむゴーグ。呆然となるGAIL兵、そしてゲリラ兵たち。

「来てくれたんだね、ゴーグ!ゴーグ!」

GOOOORRG・・・

その光景を見守るホツ・マツァに話しかける船長。

「どういう風のふきまわしかね?あんたが直々にあらわれるとは。」
「・・・お告げじゃ・・・」
「ほう、けっこうなタイミングだったよ。なかなか気の利いたお告げだな?」
「ふっ・・・。」


「感動のご対面、というわけね。」
「ヤレヤレ・・・とんだ道化役だぜ、俺たちは・・・。臭い芝居は、これまでだ!」

ロッドの指令でベームが戦闘命令を下す。

「旧島の山猿ども・・・一匹も生かして帰すなーーっ!」

圧倒的物量での砲撃が再開され、ゴーグはともかくゲリラたちは窮地に陥ってしまう。

だが、この時、突然火山が再び噴火し、戦闘は水入り。
黒煙たなびかす火口を目を細めて眺めるホツ・マツァは、 「不吉な・・・神がお怒りだ・・・。」と一人ごちるのだった。


「な・・・なんだって・・・!?火口付近に動くものだって・・・?」

報告を受けたロッドは、司令室へ急いで到着する。

「どこにだ!?」
「人型のようです!多数の・・・・」
「のけ!」

自らモニターの倍率を上げるロッド。

「ああ・・・・」

モニターに写った火口には、巨大な人影が無数に建ち並んでいる・・・。 ついに異星人の侵攻が開始されたのである!

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感想

全編とことんアクションにつぐアクションの回。

ともかく動く動く。最近のアニメーションでも、ここまで動く回はそう無いのでは?
とくに、ドリスが気絶してから起きるまでの一連のアクションシーンは、モノクロとはいえ、ものすごいカット数を瞬時に切り替える手法を使用していて、すばらしくスピード感がある。

ラストシーンの、火口にズラリとならぶラブルガーディアンの群れ。これも印象的なカットだ。たしか、昔、子供心に「あんなに強いゴーグの仲間が、あんなにたくさん・・・!もうだめだ!」と絶望しかけた。

また、ストレスを溜めに溜め込んでいたMrゴトーが、この回、ぶちキレてしまう。 以下は半分想像だが、Mrゴトーの心境の代弁。


(社命により、妻と子供と別れ、ど田舎中のど田舎・オウストラル支社への単身赴任。正体不明の事故(くらげメカとか)にもめげず、2年の歳月をかけてようやく軌道に乗り始めたところに、いきなりやってきた社長の孫のボンボン青二才!あの野郎、資金を湯水のように使った戦争まがいのおお暴れの挙句、社員に死者を何人も出し、しかも自分は有能ぶって、俺だけ無能扱い・・・。捕虜にした子供にはコーヒーぶっかけられるわ、話しかけても無視されるわ。それでも支社長補佐の任の責任で、夜中に何かあったら真っ先にたたき起こされる毎日だ。胃潰瘍はますますひどくなるが、病欠なんざ許されない。ああ、俺これで何年休んでないんだ・・・どうせ俺なんかいなくてもいいくせに・・・・そういえば最近好きなゴルフにも行ってないなぁ・・・・みんなが影で俺を笑ってる気がする・・・日系二世だからってバカにしやがって・・・広島の母ちゃん元気かな・・・。)

そら、キレるわな・・・。他人事と思えん・・・。



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