磐梯山

(1816.2M)

日頃の行い

日程

天候に恵まれず、散々だった去年の兄弟登山、八ヶ岳。次は百名山で三千メートル級という事で海の日の三連休に二泊三日で五竜岳へ登る計画だった。しかし突如として弟の海外出張が決まり、計画が流れてしまった。計画は九月以降にずれ込む事になる。結局、秋が深まればそれだけ条件が悪くなるので次の三連休を待つより別の対案を考えるべきだと意見が一致した。土日で登れる百名山という事で検討した結果、磐梯山と安達太良山へ登る事に決定。さて、東京を当日出発すると猪苗代駅到着は9時9分が最短であり、コースタイム通りだと休憩なしで下山は16時過ぎ。旅館の送迎車は17時まで。そして日没は18時である。考えてみれば今年に入ってから全く登山らしい登山はしていない。しかも崩壊地の通過は土砂が毎年流れて踏み跡が消え、迷いやすいという。お盆前から近所の呉羽山に登ったりトレーニングに努めたが、お盆を過ぎた頃から天候の悪い日が続き、思い通りにならず。またエアリアだけでは不安と前日になって国土地理院の地図を用意する。日頃の行いなのか一週間雨が降り続く中、この日だけが晴れの予報だった。景色は多分大丈夫。あとは何とか旅館の送迎に間に合わせたい、それしかなかった。

9月4日 富山駅(21:20)東京駅(23:32)
9月5日 上野駅(06:46)猪苗代駅(09:09)猪苗代登山口(09:20-09:30)=天の庭(10:50)=沼ノ平(11:30-12:00)=弘法清水小屋(12:55)=磐梯山(13:25-13:50)=弘法清水小屋(14:10)=猪苗代・渋谷登山口分岐(14:30)=噴気口分岐(15:20)=川上(上・下)分岐(16:15)=川上登山口(16:40-16:55)沼尻温泉(17:20)

山行記録

最終列車に間に合わせる為、仕事を途中で切り上げて会社を後にする。本当はもう一時間半早い電車に乗れば郡山泊りも可能だったのだが仕事の都合もあり無理だろう。家で夕食後、荷物の確認をする間もなく富山駅へ。席はそこそこ空いていた。電車の中で暇つぶしに読む本を忘れた。明日の朝が早いのは分かっていたのでなるべく電車の中で寝るよう心掛ける。北陸新幹線は定刻通り東京へ。そして総武線快速に乗り換えて弟の家へ向かう。地理院地図を印刷しつつ一杯やって寝たのは一時半だった。朝、五時過ぎに起床。総武線、京浜東北線で上野駅へ。コンビニで朝食、昼食を用意する。朝食、トイレは新幹線で済ませる。東北新幹線で郡山へ行き、磐越西線に乗り換えて猪苗代駅へ向かう。会津地方を結ぶこの路線が単線とはちょっと驚きだ。列車から猪苗代湖が見えなかったのは残念だったが磐梯山は良く見えて期待が膨らむ。定刻通り猪苗代駅に到着。すぐに駅前のタクシーへ乗り込んだ。とりあえずは旅館の送迎車に間に合わなかった場合に備えてそれとなく下山口に迎えに来てもらえるか確認する。裏磐梯に大抵待機している車がいると聞いてまずはひと安心。天候の悪い日が続いたので、最近は観光客も少ないといった話をしながら猪苗代登山口へと向かった。タクシーは登山届のある猪苗代ふるさと交流センター前まで行ってくれた。タクシー代は2230円也。

    
左:猪苗代駅
中:まずはスキー場の林道を歩く(中央に磐梯山)
右:ゲレンデを歩く

まずはトイレ。特にしたいわけではなかったが磐梯山はトイレのない山なのである。唯一、弘法清水小屋に携帯トイレスペースがある。たまたまいた人に聞くと下の駐車場の公衆トイレまで行かなければならないらしい。シーズンオフの猪苗代スキー場、やっている施設が少しはあるかと思ったが甘かった。まあ携帯トイレはあるし何とかなるだろうと出発。登山道の道標に従い林道に入る。すぐにスキー場のゲレンデの中を歩くようになる。猪苗代スキー場の西ゲレンデ、葉山コースは林道、林間コースはゲレンデの中の登山道を行く形でスキー場の西側を歩いて行く。3人ぐらいに抜かされるが休憩を入れつつマイペースで歩く。ゲレンデ歩きはかなりの急坂だった。背後には猪苗代湖、このところの天候からして願ってもない景色に苦しいながらも良い気分だ。

    
左:スキー場上部からの景色
中:赤埴山分岐手前の岩場から
右:少し歩いて磐梯山

ゲレンデの上部まで来ると道は一旦右へ折れて水平道になるがすぐに登山道の登りになる。岩がゴロゴロしてきてようやく登山らしくなってきたと思ったのも束の間、尾根に出て天の庭に到着した。予定ではここで昼食だったが、弟のまだ早いの一言で却下。期待した景色もスキー場上部とさほど変わらず。そこから斜度はいくらか楽になるが、岩がゴロゴロする登山道になるとまた登り始める。やがて少し開けた岩場に出た。ここで何人か休んでいる人がいた。景色も良くて中々良い休憩ポイントである。そこを過ぎるとすぐに赤埴山との分岐点に到着した。赤埴山も展望ポイントなので寄りたかったのだが今回は時間がないのでトラバース道を行く。時々岩場が現れるが傾斜も少なく気分的には歩きやすい登山道だ。

      
左:沼ノ平の登山道
中:沼ノ平の湿原と磐梯山
右:渋谷口分岐を過ぎた登山道

反対側の赤埴山分岐を過ぎると登山道は遊歩道のように歩きやすくなる。沼ノ平に入って来たのだ。しかし期待した池沼は樹林に囲まれて全然見えない。樹林帯の中を時々磐梯山を眺めながら快適に歩く。見る方向が変わると全然違う風貌だ。そろそろ昼にしたい、沼ノ平と言うくらいだから休憩スペースぐらいあるだろうと歩いていると道標のあるちょっとしたスペースに4人ほどが休んでいた。湿原の向こうに磐梯山が見えるのが良い。ここで昼食、休憩とする。そしてついでにここで翌日の安達太良山からの帰りに使う奥岳登山口から岳温泉までのシャトルバスを予約した。まだまだ登って来る人達がいて10人以上の団体に抜かされる。予定通り30分休んで出発。時々小川を渡ったりしながら快適な登山道を行くが渋谷口分岐あたりからガレ場となり急坂が始まる。すぐに樹林帯を抜け、正面に櫛が峰、背後には沼ノ平の景色が徐々に広がって来る。ここまでの疲労と合わせ、さすがに限界なのか弟の足が止まり始めた。今のところ良いペースで来ているが今回は下山の方が心配なので登りで遅れる訳にはいかない。とにかく頑張ってもらうしかない。

  
左:沼ノ平の後ろに赤埴山、遠景は川桁山?
右:爆裂火口(合成)

櫛が峰に続く尾根に出ると反対側は爆裂火口の火口壁で裏磐梯が一望できる。磐梯山と言えば爆裂火口、この景色が見たかったのだ。巨大な崩壊地に感動。銅沼は赤土の中に淡緑色の水面が映えて異様な感じ。裏磐梯を代表する桧原湖は圧倒的な存在感だ。その奥右手に見えるのは吾妻連峰だろうか。自分も足が止まりそうになるがここから山頂はピストン、また来るので適当に切り上げて歩き出す。

    
左:いよいよ磐梯山を正面に歩き出す
中:弘法清水小屋
右:弘法清水

ここまでは磐梯山を横に見ながら歩いてきたが登山道はようやく磐梯山を正面にして向かい始める。軽く九十九折りを切りながら再びの急坂を登る。後ろの弟の様子を見ながらゆっくりペースなので楽ちんだ。一段上がるとやや傾斜が緩くなり、黄金清水という水場がある。そこから少し登ると八方台から火口壁経由で来る登山道への分岐点、主ルートの八方台コースの一つに入ったので楽になるかと思いきや逆に岩がゴロゴロして歩きにくくなる。若干人が増えたようだ。やがて弘法清水小屋に到着。小屋の前の広場で休んでいる人が20人以上いた。隣の岡部小屋の前には弘法清水がある。看板に水温5度と書いてあるが確かに冷たくておいしい。すぐ傍が八方台登山口分岐でいよいよこここから山頂に取り付く。階段あり、岩場ありのかなりの急登、しかもこのところの雨のせいか登山道が濡れている。そして主ルートに入ったせいもありすれ違う人が多い、なかなか前に進めないが弟には調度よいだろう。時々現れる裏磐梯や沼ノ平の景色を楽しみながら登ってゆくと人の声が聞こえ、磐梯山の山頂に到着した。


磐梯山山頂、360度の展望(パノラマ合成)

    
左:磐梯山山頂
中:櫛ヶ峰の向こうに東吾妻山、安達太良山(右)
右:存在感ある猫魔ヶ岳

山頂には40人ぐらいの人がいた。さすが百名山、人が多い。山頂は広くて場所は十分余裕があり360度の展望を楽しむ。まずは猪苗代湖、全景を望むと意外と小さく感じる。この景色も見たかったので満足。その西側には会津盆地があってその手前に猫魔ヶ岳、北は桧原湖を中心とした裏磐梯、その東側には吾妻連峰、安達太良山が連なっている。そして川桁山があって猪苗代湖である。山頂看板は直下の売店の横にあったのでそこで写真を撮ってもらった。絶景を前に山頂を離れ難かったが迎えの時間があるのであまりゆっくりする事は出来ない。慌ただしく山頂を後にする。

    
左:沼ノ平の向こうに安達太良山(左奥)、川桁山(右)
中:正面に吾妻山
左:磐梯山を振り返る

さすがに下りになると弟も調子がいいらしい。快調に登山道を下りてゆく。弘法清水で水を補給し、さらに元来た道を戻ってゆく。小屋を過ぎると人は疎らになった。ガレの急坂を時々人を抜かしながら下りてゆく。そして再び火口壁の絶景を眺め、猪苗代登山口と川上登山口の分岐まで戻って来た。川上口はあまり歩かれていない道かと思っていたが前の方に十人ぐらいの集団が歩いているのが見えた。どうやら心配するほど難コースではなさそうな雰囲気。しかしここからが今日の核心部であることは間違いない。休憩を入れて気持ちを切り替える。

          
左、中:火口壁の下り
右:崩壊地


火口壁(パノラマ合成なので分かりにくいが火口壁なのでほぼ半円形である)

さてこの険しい火口壁のどこから降りるのだろうと恐る恐る足を踏み出す。まずはガレ場を下りてゆくが案外斜度は緩い。このままガレ場を急下降するのかと思いきやすぐに草付きとなり、樹林帯へと突入する。そして急下降が始まった。登山道は整備されていて階段あり鉄を曲げて立てられた手すりありで普通に歩けば全く危険なところはない。景色もないので容赦なく下ってゆく。階段が終わると傾斜も緩くなり、樹林帯の中をひたすら前に進む。前を歩いていた人達をここで抜かす。そしてようやく樹林帯を抜け、開けた崩壊地に出た。今度は下から火口壁を一望できる。素晴らしい景色だ。休憩して暫し景色を楽しむ。

    
左:噴気口分岐
中:踏み跡のない崩壊地
右:明るい林を歩く

ここからが迷いやすいという所。ここをクリアしなければ先が読めない。リボンやロープといった目印を見失わないように歩く。崩壊地を過ぎるとすぐに裏磐梯登山口との分岐点、噴気口分岐に出た。このままあっけなく樹林帯に突入かと思いきや土石流の流れた崩壊地はこれからが本番だった。現在進行形で土砂が流れているのか踏み跡のない場所を歩いてゆく。まるで川底を歩いているような雰囲気。目印は途切れずにあるので天候次第ではあるが注意していれば迷う事はない。途中で気が付いたがロープの右側を歩くのが正解のようだ。周囲より若干高いところは樹林帯になっていてそこは踏み跡がある。崩壊地と樹林帯を繰り返し越える。やがて崩壊地はなくなり、明るい林の中に入る。日本庭園の様な気持ちの良い場所で軽くアップダウンがあるのも楽しい。

    
左:草に覆われた登山道
中:川上登山口(上)(下)の分岐
右:川上登山口(上)

気持ちの良い林も束の間、やがて登山道まで緑に覆われた樹林帯へと突入する。やはりこのコースはあまり歩かれていないのだろう。しかし踏み跡はしっかりしているので全く問題はない。延々と樹林帯の登山道を歩く。特に後半は顕著なアップダウンもないので現在地を掴みにくい。しかしとりあえずは旅館の送迎時間に間に合いそうなので電話を入れる。今回の宿は沼尻高原ロッジ。登山口送迎をやっている所がポイントでした。川上登山口から宿まで3000円也。やがて川上登山口分岐に出るが(下)コースはエアリアで点線になっているので(上)コースを選択。ここまで来ればもうあと一歩と思いきや意外と登山口は遠かった。実はまだ崩壊地から2/3しか歩いていなかったのでした。緑に覆われた登山道をさらに25分ほど歩いてようやく登山口に到着。何とか予定内に登山を終わらせる事が出来た。登山口には山の駅食堂があって店の表では流水でトマトを冷やしていた。迎えの車が来るまで少々時間があるのでトマトを肴にビールで乾杯。南郷トマトと言って会津特産らしい。美味しく頂く。その間に旅館のお迎えが来て慌ただしく車に乗り込んだ。宿に到着後、温泉に入り、夕食後、日本酒のせいもあり爆睡。温泉は草津温泉みたいな泉質、夕食も素朴ながら凝った感じで良かった。今回の磐梯山登山は天候に恵まれ、予定も順調にこなせて文句の付けようがない登山だった。

 余談 前後雨続きの中でこの日だけが降らなかった。列車の遅れもタクシー待ちもなく、本当に奇跡的な一日でした。
見たかった裏磐梯の火口壁や猪苗代湖が見られて最高だった。ただ飯豊連峰など遠景は見えなかった。
時間が限られていたので赤埴山に行けなかったのが残念だった。
携帯トイレは結局使わずに済んだ。
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