富士山

(3775.6M)

二度目の富士山

日程

このところ低山続きだった兄弟登山。さすがに弟もいい加減高い山に登りたくなって来たのだろう。奥穂高岳はかつて登ったのでそれより高い山、つまり富士山か北岳に登りたいと言って来た。当然ここは無難に富士山だろう。富士山なら一度登った事があるし、お盆過ぎなら渋滞も少なく余裕をもって行動できるに違いない。前回は吉田口から登って宝永山をピストン富士宮口へ降りたのだった。お勧めは吉田口を一合目から。森林限界の上だけ歩いても魅力は半減である。そして下りには御殿場口を利用し宝永山経由大砂走りで新五合目へ。きっと富士山を楽しめるに違いない。しかしトレーニングのつもりのお盆の東北登山で足を痛めてリタイアし、登山靴を新調。それからわずか二週間、体調はまだ万全ではなく、靴の調子も全く不明である。内心はこの欲張った計画にしまったと今更思っていたのだった。

 8月27日  八王子駅(7:48)富士吉田駅(9:22)馬返し(10:00)=三合目(11:10)=車道(12:10)=新五合目(12:40-13:35)=七合目(15:15)=八合目蓬莱館(16:50-23:30)
 8月28日  =本八合目(1:10-2:10)=吉田口頂上奥宮(4:50)=剣ヶ峰(7:00)=頂上浅間神社奥宮(7:30)=砂走館(9:00-9:30)=大石茶屋(10:40-55)=新五合目(11:10-11:20)御殿場温泉会館(11:55-13:50)御殿場駅(14:10-15:55)新宿駅(17:29)

山行記録

仕事を終え、最終列車で弟の家へ。飲みはほどほどにして寝る。早朝出発。日頃の疲れか体調不良なのか体がだるく電車ではほぼ寝てゆく。座って移動できたのは幸いだったが乗り換えで何度か寝過ごしそうになる。八王子駅で朝食の弁当を買い、あずさ号の中で食べる。大月駅で乗り換え、予定通り富士吉田駅に到着。9年ぶりに来たが駅前を見てもあまり記憶にない。トイレを済ませてタクシーで登山口へ移動。前回は駅から歩いたものだが今回は足も完治しておらず新品登山靴でもあるので弱気である。浅間神社に寄らなくても良いかの問いに弟は寄らなくてよいとのこと。寄り道なしで登山口の馬返しへと向かう。車窓を眺めながら途中の直線道路がなかなか終わらなかった記憶を思い出す。

  
左:富士吉田駅
右:登山口のゲート

馬返しでタクシーを降りる。駐車場はそれなりに埋まっていてこのコースの人気の高さが窺える。すぐに出発。階段を登り、鳥居をくぐる。登山道は幅が広く、走っている人がいても余裕で追い越しが出来るほどある。良く歩かれているせいか歩きやすい。10分ほどで一合目に到着。鈴原天照大神と書かれた看板のある建物がある。今は使われてないのか閉まっている。吉田口登山道はこういう歴史を感じる遺構が多いのが良い。一方、登山道には前回記憶にない石の入った枠が出来ていた。たぶん泥濘防止用の物だろう。登山道の整備はよく使われている道だけに賛成だ。

         
登山道

吉田口では五合目より上が森林限界で直下までは景色を得られる場所がない。ずっと樹林帯を歩く。登山道は石畳の道だったり、階段状だったり、後半は斜度が増してくるので左右に曲がりくねった道となり、階段を歩く事が増える。二合目、三合目、四合目、五合目(四合五勺)と廃墟となった建物があってかつての繁栄を偲ばせてくれる。残っている小屋が全くないというのも寂しいのだが馬返しから五合目の佐藤小屋まで二時間余りで来てしまう以上仕方のない事かもしれない。意外だったのはすれ違った三組ほどの登山者の内、過半数が外人だった事だ。御来光を見て山頂を出発なのかスバルラインからなのかは分からなかったがこの道を選んで来ている事に感心した。

  
左:吉田口スバルライン五合目
右:渋滞

弟が足を痛めたというので撤退を視野に入れてスバルラインを目指す事にする。心配するのは自分だけじゃなかったとがっかり。佐藤小屋を目前にして車道をターミナルへと向かう。いきなりものすごい人、人。お盆過ぎてもこの盛況、これは読みが外れたか。ここでトイレ、食事、休憩を取る。正直、撤退する気は全然なかったので弟が登る気になった時点で出発。速度も弟に合わせるつもりで行くが渋滞のおかげでその必要はほとんど無かった。見た感じ全く大丈夫そうである。どうやら百人はいるであろうアジア系の外国人ツアーの間に入ってしまったものらしい。さすが富士山は世界的な山だ。七合目の手前まではかなり広い道なので切れ目を縫って何とか追い越した。

  
左:七合目から六合目を眺める
右:八合目蓬莱館

七合目を過ぎると登山道は岩場に入り、登山の格好をした人ばかりになる。ここで道が急に狭くなる為か渋滞で全然前に進まなくなってしまった。追い越しも出来ず時間だけが過ぎてゆく。そろそろ山小屋をどこにするか考えなくてはならない。深夜出発になるのは確実なので早めに宿で休みたいところだ。七合目ではまだ時間が早いような気がしたので八合目へと向かう。結局、五時前がリミットと言う事で蓬莱館に入った。中は思ったほど混んではいなかった。布団一つに二人だ。前回はどこの小屋だったか忘れたが三人だったので大変だった。宿が混んで来るまでの時間が貴重とばかりすぐに寝る。夕食は定番のカレー。ここもおかわり自由じゃないので不満だ。

       
左:吉田口頂上
右:御来光

夜十一時前になると御来光目的の客が一気に動き出す。山小屋もそれに合わせて起こしに来るのであっという間に人が消えて行ってしまった。しかしここで慌ててはいけない。前回はそれで出発したおかげで二時半に山頂に着いてしまいとても寒い思いをしたのだった。それなら布団の中でゆっくりした方がいい。しかし弟が今度は高山病を訴えたので酸素を買うために出発する事にした。前回の登山で山小屋に酸素缶が売っているのは知っていたが蓬莱館には無かったのだ。途中の山小屋で酸素を買ったが後から聞いたところによるとあまり効果は無かったらしい。本八合目の広場で時間調整し、剣ヶ峰に日の出30分前に着くように出発する。しかしここでも読みは外れた。渋滞で全く前に進まない。追い越しできるような半端な人数ではなく登山道が埋まっていてどうしようもない。吉田口頂上まで一時間少々のはずが二時間半以上もかかってしまったのだった。何とか御来光の三分前に頂上近くの景色の良い高台へ移動する事が出来た。雲海から登る太陽を見る。

  
左:影富士
右:剣ヶ峰

御来光目当てで弟とはぐれてしまったので小屋の前で待機。それにしてもすごい人の数だ。どうなるかとも思ったが20分ほどで合流できた。中でうどんを食っていたらしい。元気なさすぎるぞ。まあ足を痛めて高山病じゃ仕方ないか。それでも予定通り剣ヶ峰へと向かう。前回富士山からの景色をよく見ていなかったので景色の見える場所を探しつつ御鉢を歩く。意外と景色の見える場所は少ない。何カ所か転々として雲海の上に八ヶ岳から南アルプスらしき連なりを見て、別の場所からは影富士も見る事が出来た。雲が多かったのが残念だったが十分満足出来た。そして剣ヶ峰に到着。すごい並んでると思ったら山頂写真の列だった。20分以上かかってようやく順番が回ってきて写真を撮ってもらう。

  
左:剣ヶ峰
右:頂上浅間神社奥宮

写真の後、休憩もそこそこに頂上富士館裏にあるトイレに直行。ここでも並ばなければ入れない。早めの行動は必須。そしてようやくゆっくりと浅間神社奥宮に入りお守りを買う。前回来たときは郵便局からはがきを出したが今回はなし。富士宮口と御殿場口の入口は神社を挟んだぐらいで隣り合っているので御鉢巡りは前回とほとんど変わらない。出来るなら御鉢一周もいいかと思っていたが高山病の人を忘れていた。往復一時間なんだがムリか。早々に下山を開始する。

  
ガレ場の下り

鳥居をくぐり御殿場口登山道に入る。まずはガレ場の下り。正面に宝永山を眺めながらつづら折りに下りてゆく。なかなか絶景。御殿場口登山道は人が少ないと聞いていたがなんの、かなりの人が歩いていた。もっとも宝永山経由富士宮口の人や須山口に向かう人も同じルートなので全部がそうとも言い切れないが下山に利用する人が多いのは分かる。頂上から次の山小屋、赤岩八合館はすぐ手に届きそうなくらいよく見えるのになかなか近づいて来ない。さすがに腹が減ってきて力が出なくなって来た。夜、寒かったせいか体調がよくない。

  
左:砂走館
右:宝永山

赤岩八合館で再び長い列を並んでトイレ。小屋前がとても混んでいたので一つ下の砂走館まで直行して朝食、休憩にする。小屋の前は結構スペースがあって前日の宿で頼んだ弁当を広げる。さすがに遅すぎる朝食で空腹のピークは過ぎていたが渋滞でゆっくり出来る場所がなかったのも確かだ。次の目的地は宝永山。山ひとつ砂礫の火山灰という感覚も宝永火口の景色も富士山に登ったら是非とも紹介したいポイントだったがやはり弟にそんな余裕は無い様だった。寄り道なしで下山する事に決定。ブルドーザー道が小屋の近くを通っており、音を立てて一台のブルドーザーが走っていた。

       
大砂走り

宝永山との分岐を過ぎればいよいよ大砂走りに入る。初めは所々石が出ていて登山道も広くなく走りにくい感じだが、それらは徐々に解消し走りやすくなる。とは言っても既に足に疲労を蓄えている状態なので二百メートルぐらい走って歩いてといった感じ。登山道には杭が並べてあったり、ロープが引いてあったりして迷わないようになっている。登山靴の中に砂が入ってきて時々脱がなければならないのが面倒だったがそれなりに大砂走りを堪能できた。スパッツは必須か。後半はガスが出て来た事と斜度が緩くなった事で変化のない道が続き、さすがに飽きて来た。二ツ塚も全く見えない。

  
左:大石茶屋
右:御殿場口新五合目

登山道に植物が増えて来るとやがて大石茶屋に到着。かき氷を二人で分けて食べる。ガスのせいか暑さはあまり感じなかったが水ばかり飲んでいても味気ないので気分転換だ。登山口の新五合目まではあと一歩。やはり砂礫の道が続く。最後に鳥居をくぐると新五合目に到着した。時間的にはそうでもなかったのだが単調な道だけに長く感じたルートだった。次のバスまで小一時間あり、天候も怪しい状態のままだったので休憩もそこそこにタクシー乗り場にいたタクシーを利用する事にした。これで浮いた時間で日帰り温泉に入ろうという魂胆。あては無かったが運転手さんに聞いてごてんば市温泉会館へと連れて行ってもらった。

  
左:ごてんば市温泉会館
右:御殿場駅

ごてんば市温泉会館で温泉、昼食、そしてゆっくり休憩する。富士山が見える大浴場はやはり天候が悪く全く見えなかった。少し離れた国道のバス停から路線バスを利用し、御殿場駅へ。新宿行きの特急の本数が少ないのでまだ時間には余裕があった。駅前の土産物屋などをぶらぶらして時間を潰すがさほど大きな店は無いので早々に駅のベンチで休憩、電車が来るのを待った。特急は時間通りに到着し、新宿駅へ。新宿で一杯飲んで弟と別れた。東京へ出て最終特急で富山へ。今回の富士登山は前回の経験を生かしたつもりが思わぬ渋滞に巻き込まれ、体力的には助かったもののほとんど思い通りにならなかった登山だった。もし次があるなら残っている須走口に挑戦してみたい。

 余談 無難に富士山という割に計画が欲張りだった。
前回の経験に頼りすぎるところがあった。
富士山の渋滞は全く想定外だったがいい経験になった。
登山靴の調子は良く全く問題にならなかった。
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