比良山地

(1214.4M)

比良山系Y字縦走

日程

五月の連休は前年の秩父の様にどこか日帰り縦走が出来ればいいなと考えていた。まず思いついたのが六甲全山縦走であったがろくにトレーニングもしていなかったので無理と判断。練習用に目を付けたのが比良山地だった。琵琶湖の西に連なる比良山地は比良山系ともいう。一般的には比良山地という事だが、山系の方が山脈らしい感じがしてイメージに合っている気がする。比良山系は南比良から北へ北比良と奥比良に別れ、ちょうどYの字に山が連なっている。南比良の主峰は蓬莱山、北比良の主峰は釈迦岳、奥比良の主峰は最高峰の武奈ヶ岳。別にちゃんと比良岳もあるのでややこしい。初めは軽装で麓に泊まりながら各山地を縦走する計画でいたのだが時間的にも金銭的にも面倒なのでテントで縦走する事にした。と言っても幕営地らしきものが八雲ヶ原しか分からなかったので最後まで迷う事になってしまった。結局、南比良から北比良、リトル比良へと縦走し、下山して湖西線で移動、奥比良を縦走する言わばY字縦走計画となった。体力的に不安がないでもなかったがエスケープが容易なのもこの山系の良いところである。

5月3日 富山(02:25)出町柳(07:04-07:45)花折峠口(8:20)=折立山(09:40)=権現山(10:15)=蓬莱山(11:30-12:20)=比良岳(13:20)=烏谷山(13:55)=金糞峠(15:10)=八雲ヶ原(15:55)
5月4日  八雲ヶ原(06:15)=釈迦岳(07:10)=ヤケ山(08:20)=鵜川越(09:40)=岳山(11:40-12:10)=近江高島駅(13:25-13:39)比良駅(13:54)=出合山荘(15:05)=カモシカ台(16:20)=北比良峠(17:10)
5月5日 北比良峠(07:10)=武奈ヶ岳(08:25-08:45)=釣瓶山(09:30)=地蔵峠(10:45-12:30)=ボボフタ峠(13:10-13:35)=蛇谷ヶ峰(14:10-40)=くつき温泉てんくう(15:45-17:15)朽木学校前(17:25-44)安曇川駅(18:10-18:35)マキノ町近江今津駅(20:27)富山(22:52)

山行記録

深夜、富山からきたぐにで出発。さすがに連休とあって座れる席がない。これは初っ端から幸先が悪いとザックを下して座り込む。実は京都で宿泊する手もあったのだが金銭的にも時間的にもこの夜行列車の方が良いと判断したのだった。京都駅に着いた時は思考能力が相当低下していたのだろう、地下鉄では途中の四条で降りてしまい次の電車を待つ。地下鉄を烏丸御池で東西線に乗り換え、三条で京阪電車に乗り換え、出町柳駅に到着した。早速バス乗り場へと移動するが連休だけあってもう人が並んでいる。バスに乗り切れるのか心配したがどうやら臨時便が出るようだ。バスは二台増えて三台になった。疲れたのでバスで座って寝てゆく。思ったよりも登山客が多い。花折峠口のバス停で降りたときでもまだほとんどの人が乗っていた。

  
左:出町柳駅
右:通行止めの旧道

一人花折峠口のバス停を降りる。とりあえず国道を旧道に向かう。かつての峠越えの道らしい。しかし、舗装工事中で通行止めになっていた。強行突破か、いや止めておこう。トンネルの反対側に向こう側の入り口がある、そっちに回れと言われたら無駄になる。20分はロスになったろうが国道を歩いてトンネルをくぐり旧道の反対側の入り口に移動する。少し先に見える平の集落は皆子山の登山口で見覚えがある所だ。しかし旧道の反対側も通行止めになっていた。もう行くしかないだろう。砂利道の旧道に入ってゆく。誰もいない。10分ほどで道標があり登山口に到着した。

       
左:登山口
右:折立山

  
左:権現山
右:比叡山方向

初めは植林地を行く。急登が続くがマーキングも多く、よく整備されている感じで歩きやすい。アラキ峠からまずは折立山をピストン。あまり歩かれていないのか落ち葉が邪魔でやや歩きにくい。思った以上に登るのでザックをデポすれば良かったと後悔。樹林帯の山頂は展望もなく早々に引き揚げる。再び峠から出発。登るにつれて笹が増えて木々がまばらになってくる。山頂近くは腰ぐらいに伸びた笹の中を歩く。さすがに景色がいい。権現山の山頂からは比叡山や琵琶湖大橋などが良く見えた。ようやくここから縦走が始まる気分である。比良山系の端っこが花折峠なのか霊仙山なのかさんざん考えて分からなかった。霊仙山はアプローチが悪くて却下した。あまりこだわってもしょうがない。

  
左:権現山からホッケ山、奥に蓬莱山がわずかに見える
右:ホッケ山

    
左:蓬莱山山頂、後ろは武奈ヶ岳
中:蓬莱山から琵琶湖、鈴鹿山系
右:琵琶湖大橋

樹林帯を抜けると笹原のすがすがしい稜線が続く。天気のせいもあるのだろうが何といっても明るい。琵琶湖を展望しながら歩くのも最高である。、ホッケ山のピークを過ぎガレ場の横を通り過ぎると分岐点のある小女郎峠に出る。腹がそろそろ減ってきたがエアリアの360度の大展望の文句に釣られて蓬莱山まで頑張る事にした。山頂近くまで来て人の気配がするなと思っていたら山頂には30人以上の人がいた。ここにはゴンドラとリフトを乗り継いで簡単に登って来る事が出来るのだった。聞きしに勝る絶景。人が来るのも分かる。とりあえず景色を写真に納める事にする。親切な人が写真を撮ってくれると言われたので武奈ヶ岳を背景に一枚撮ってもらった。ここでゆっくり昼食。

  
左:打見山から蓬莱山(雪が見える)
右:打見山

蓬莱山からびわ湖バレイスキー場のゲレンデを通ってゴンドラ駅のある打見山へと向かう。途中、人工なのか雪が残っている場所があって子供が大勢スキーを楽しんでいた。こんな場所で五月にスキーが出来るなんてとびっくりした。遊具などもあってちょっとした遊園地な感じである。たぶんこのびわ湖バレイだけで数百人の人がいるだろう。比良山系でここだけは別世界な感じがした。打見山からの景色も絶景である。


蓬莱山から奥比良(武奈ヶ岳)、北比良(釈迦岳)のY字を望む

 

         
左:烏谷山山頂
右:縦走路は堂満岳をトラバース

ロープウェイ駅のある打見山を過ぎてスキー場の林間コースの様な場所を下る。少し離れただけでぐっと人が少なくなった。それでもここはまだびわ湖バレイのハイキング路なのでたまに歩いている人を追い越す。無人のキャンプ場を見ながら分岐を曲り峠道に入ると縦走路への分岐点である木戸峠に出た。急に道が細くなり、倒木があったりしてあまり歩かれていない感じ。南比良の展望の良い縦走路とは打って変わって樹林に囲まれて展望の得られる場所も限られている。たまに残雪も残っていて冬枯れたままの草木と合わせて何だか暗いイメージだ。南比良と北比良の対照的な雰囲気を楽しめるのも縦走の醍醐味だろう。最初のピークは比良岳。縦走路上に看板があり平坦な山頂だなと思って通過したが後から調べたら山頂は別の場所だった。かつて葛川村に通じていた峠道のあった葛川越を通過。次のピークは烏谷山だったが急な登りで存在感があった。山頂からは蓬莱山や堂満岳方向の景色が得られた。一汗かいたので一休みにする。

  
右:ヤクモ池と八雲ヒュッテ
左:湿原

さらに縦走路を進むと堂満岳が目の前に迫って来る。景色がだんだん限られて来てどこを歩いているのか分からなくなってしまった。アップダウンを繰り返すうち荒川峠も南比良峠もいつの間にか通り過ぎてしまったようだ。少し気持ちが焦り始めたころ金糞峠に到着。ここもほとんど景色がない。ここまで来れば幕営予定地の北比良峠まであと一歩。最後の登りと前山に登ると東屋があった。ここまで来れば今日の予定はほぼ終了、予定よりも早く着いたので一安心、余裕をもって休憩した。背後の堂満岳がなかなか立派だ。少し歩くと北比良峠に到着。ここは2004年まで比良ロープウェイの北比良山上駅があったところだ。2004年の比良スキー場廃止と同時に八雲ヶ原のキャンプ場も廃止され比良山系からキャンプ場がなくなっているのは分かっていた。そこで水場なりトイレなり残っていればここに幕営するのもアリかと期待していたのだ。しかし山上駅は廃墟となっており水もトイレも期待出来そうになかった。ここは少々縦走路から外れるが八雲ヶ原まで足を伸ばして様子を伺うしかないだろう。広くて歩きやすい登山道をどんどん下りてゆく。やがて沢の横を歩くようになり八雲ヶ原に到着。既にテントが8基ほどあり、期待が膨らむがやはりここも廃墟となっていた。池の水は油膜が光り虫がうようよ泳いでいる。ヒュッテも閉鎖されている。トイレはそこら辺でするとして水はある分でやりくりするしかないだろう。気が抜けてしまったので北比良峠に戻るのは諦め、ここで幕営することに決めた。

       
左:スキー場跡と八雲ヒュッテ
右:比良明神

夜が明けてから行動開始。山の上部がガスっているが水が心配なので涼しく歩ける方が有難い。朝食を済ませ、すぐに出発する。今日は長丁場なので出来るだけ早めに行動したい。しかし踏み跡が交錯する八雲ヶ原、道を探すのに少々時間をロスしてしまった。廃墟となったスキー場跡を抜け、緩い坂道を登れば縦走路に出合い、比良明神まで広い登山道が続く。比良明神はかつての山岳信仰の名残という。ここで登山の無事を祈り先を急ぐ。縦走路に入っても快適な道が続く。稜線とはいえ登山道の両側に灌木が生えているので展望はない。もっともガスが出ているのでそもそも展望は期待できない。アンテナ塔の立つカラ岳も順調に通過。写真は撮らない。前日写真を撮りすぎてフィルムが残り少ない。節約しなければ。

     
左:釈迦岳
右:釈迦岳から少し先の崖

快適な稜線歩きが続く。冬枯れの木々ばかりが目立つ登山道。軽く登ると北比良の主峰、釈迦岳に到着した。木々に覆われ、ガスもあり展望はない。ここで一息入れる。ここが本日の最高峰、これからしばらくは下りになる。気持ちを切り替えて出発。釈迦岳から縦走路を下りて少し行くと登山道脇が崩壊した崖になっている。悪天候の際には要注意だろう。展望のないヤケオ山を過ぎると本格的に下りとなる。

        
左:溝のある登山道(奥はリトル比良)
中:鹿ヶ瀬方向(奥は蛇谷ヶ峰)
右:ヤケ山

ヤケオ山からヤケ山まで標高差250mを一気に下る。しかも急斜面のガレた道。階段も無くとても滑りやすい。ここは相当な足の踏ん張りが必要だ。また一部登山道の真ん中が水の流れで溝になっていて足の置場に難儀する。歩きながらかつて難儀した氷ノ山を思い出す。ただ急斜面だけあって景色は良い。リトル比良を一望。オトシの平坦部を見てこの先は楽になるだろうと楽観的な気持ちになったが騙されたと気付くのはもう少し先の事だ。標高を下げるに従いガスを抜けたのか青空が広がって来た。木々も芽吹いてきて春の様相である。急下降が終わると大岩があり、琵琶湖が望める。そのまま快適な稜線を歩きヤケ山に到着。暑くなったので一枚脱ぎ写真を撮って休憩。ヤケオ山、釈迦岳を振り返る。よく頑張った、しかしまだまだこれからだ。

         
左:滝山山頂
右:鵜川越

樹林帯の登山道をアップダウンを繰り返して下ってゆくと寒風峠に到着。ここから先がリトル比良である。しかし既にヤケ山で植生の変化に気付いていたうえに樹林帯で周囲が薄暗くパッとしないせいもあって特に思う事はなく少々休んで通過する。登り返して快適な縦走路を歩いてゆく。展望のないまま滝山に到着。ここらでもうリトル比良に入ったと名実ともに実感しても良いだろう。同じ樹林帯でも北比良と違って木々が芽吹いて春の様相、何気に雰囲気も明るく感じる別の山域に入ったのだ。そこから再びアップダウンを繰り返し快適な登山道を下ってゆくと林道に出た。林道鵜川村井線を横断するこの峠が鵜川越だ。

         
左:岩阿沙利山山頂
右:岩の稜線を歩く

鵜川越から樹林帯の急坂を登る。いよいよリトル比良の核心部に入ってゆく感覚だ。本日最大の登り、いや今日はまだ最後に最大の登りが控えている。こんなところで消耗するわけにはいかないのだ。しかし容赦なく水はなくなってゆく。朝早かったせいかもう空腹を感じ、ゼリーを出して凌ぎつつマイペースに徹して登った。やがて岩阿沙利山に到着。軽く息を整えて岩阿沙利山を下りると再び手応えのあるアップダウン。鳥越峰に取り付く。肩まで登ると登山道は岩場になり、岩を乗り越えつつ前に進む。鳥越分岐から鳥越峰の山頂を目指すが反射板まで行ってしまった。地図を確認してかろうじて引き返す。結局、探してはみたものの鳥越峰の山頂を見つける事は出来なかった。

         
左:オウム岩から岳山、高島市、琵琶湖方向
右:岳山山頂

鳥越峰から少し山を下りた肩の部分にオウム岩がある。岩の上は地図に書いてあるとおりの絶景ポイントだ。武奈ヶ岳から蛇谷ヶ峰、そしてこれから向かう岳山の向こうには琵琶湖も望むことが出来る。景色を眺めているとあっという間に20分が過ぎてしまった。しかし予定よりも一時間半以上早く来ていて先も見えてきたのでまあいいだろう。そろそろ腹も減ってきたが場所もないので岳山まで我慢する事にした。樹林帯の中を鞍部まで下ると岳山までは割と緩やかな登り。登山道に岩がゴロゴロ目立つようになってくると岳山に到着した。ここで昼食。水を使い切って辛うじてラーメンを作る。休んでいると麓から太鼓の音が聞こえてきた。どこかでお祭りをやっているようだ。

    
左:岳観音堂跡
右:白坂

岳山の山頂を後にすると琵琶湖方面の展望が望めるザレ場に出る。樹林帯の尾根を下ると岩場の登山道となり岳観音堂跡に到着。建物はなく基壇だけが残っているが登山道にも石段があったり弁慶の切石という岩があったりその名残は残っている。このまま参道で終わりかと思いきや再び歩きにくい登山道になって白坂の横に出た。珍しい景観に驚くが花崗岩の崩壊地というから要は御影石のようなものだろう。

        
左:登山道
中:大炊神社
右:近江高島駅

少し歩くと石燈籠のある庭園の様な場所に出る。そこを過ぎて一部がえぐれて溝になっている登山道を気を付けて下りてゆくとようやく幅の広い登山道に出た。道はまだ良くないが、傾斜も緩くなり歩きやすい。道の両側をビニールテープで囲ってあるのは私有地だからだろうか。ひたすら登山道を行くと道は林道になり、大炊神社の横に出た。やはり祭りの日らしく神輿が出ている。道路を歩いていると山車も出ていた。日差しが強く道路歩きがとても暑い。何とか暑さに耐えつつガリバー像のある近江高島駅に到着した。これでY字縦走の一筆はまず達成した。何はともあれ自動販売機で水分補給。しかし駅にフィルムの売っている場所はなさそうだった。とりあえず次の電車に乗って比良駅へと向かう。まだこれから幕営予定地まで本格的な登りが控えている。しかし予定より一時間以上早く動いているので休み休み行っても何とか行けそうな雰囲気だ。

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