北岳・間ノ岳

(3193M・3189.5M)

南アルプスへの第一歩

日程

北岳は言うまでもなく富士山に次ぐ日本第二の高峰である。そしてすぐ近くにある間ノ岳は奥穂高岳(3190M)に次ぐ第四の高峰になる。二年前、富士山へ登る際に候補に上がっていたが、まずは楽な富士山を選択。行きたいと言った弟が不甲斐なかったので、もう少し真剣になってもらおうとさらに延期して白山に登った。しかしあまりずるずる延期も意味がないので今回決行する事にした。南アルプスに入るのは今回が初めてである。車で行くにしろ公共交通機関を使うにしろアプローチが長く中々手が届きにくい南アルプス。その中では北岳は行きやすい山である。今回は伊豆以来の弟の車でのアプローチとした。またデジカメをもらったのでこれまでのようにフィルム不足で苦労する事もなくなるだろう。市民講座の立山旧街道を歩く会(略)に入ったのでほとんどトレーニングは出来なかったがそれなりに歩いているので何とかなって欲しいところだ。

7月28日 川崎(02:20)芦安駐車場(04:30-05:15)広河原(06:15-06:45)=二俣・白根御池分岐(07:20)=白根御池小屋(09:00)=小太郎尾根出合(11:50)=北岳肩の小屋(12:20-12:45)=北岳(13:20-13:40)=北岳山荘(14:30)
7月29日 北岳山荘(05:10)=中白根山(05:40)=間ノ岳(06:25)=北岳山荘(07:30-07:55)=吊尾根分岐(08:25)=八本歯のコル(08:40)=八本歯ノ頭(09:00)=八本歯のコル(09:20)=二俣(10:35)=広河原(11:55)芦安駐車場(12:45-14:45)川崎(17:20)

山行記録

定時に会社を出て家で荷物を取り、すぐに富山駅へと向かう。越後湯沢駅まで約2時間、上越新幹線に乗り換えて東京駅まで約1時間半、眠り込む訳にいかないので目だけ閉じる。川崎の弟の家に到着したのは23時少し前。いつもなら一杯やるところだが今回は車なのですぐに寝る。2時起床、準備をして出発する。弟は定時で帰って寝ていたはずなので大丈夫だろう。川崎から中央道に行くのは大変なんだ、とか横で聞きながら私は車で寝てゆく。4時10分頃芦安村の駐車場に到着した。正規の駐車場が満車だったので1kmほど戻った砂利の臨時駐車場に停める。林道南アルプス線は夏季マイカー規制でここからはバスでの移動となる。バス停には多くの人が並んでいたが、バスも数多くあり余裕で始発のバスに乗り込む。登山口の広河原まで約1時間、もう少し眠って行けそうだ。

    
左:芦安駐車場(バス乗り場)
中:広河原(バス乗り場)
右:登山口の吊橋(北岳が見える)

バスを降りて車道をそのまま歩き始める。しばらく行くとゲートがある。北沢峠へ向かう道は通年マイカー規制となっている。ゲートを過ぎるとすぐに登山口の吊橋と背景に北岳が見える。思ったよりかなり近くに見えるが標高差は1660m、どうなる事やら先が思いやられる。吊橋を渡るとすぐに広河原山荘がある。ここでトイレを済ます。登山道はここから始まる。まずは樹林帯を行くが最初から本格的な登山道、歩いている人も多いので追い越さずゆっくり歩く。二俣・白根御池分岐では多くの人が休んでいた。良く見るとほとんどの人が二俣の方へ進んでいる。山頂へはそっちの方が近いのだ。しかしそれだと帰り道と被るので自分達は白根御池へと向かう。小さな木のハシゴがあったり斜度は増したが人が少なくなったので歩きやすい。沢を越えると白根御池小屋はもうすぐだった。

    
左:登山道
中:白根御池小屋
右:白根御池と鳳凰三山

突然現れた白根御池小屋は2005年に建てられた新しい小屋だ。小屋を越えたところに白根御池がある。池の畔がキャンプ指定地なのかテントが一基残っていた。この脇に小太郎尾根へと向かう分岐点がある。振り向けば鳳凰三山が見える。

    
お花畑:シナノキンバイ?

白根御池小屋から小太郎尾根までの標高差は600m、草スベリと呼ばれる直登の登山道という事でかなりの急坂を予想していたが、考えてみれば3時間で600mなら一時間200mなので思ったほどひどくはなかった。弟も苦しそうだったが昼食をはさみ休み休み歩いた事でいつもほど足が止まる事もなく登る事が出来た。木立の合間に所々広がる草付きは大小のお花畑になっていてわざわざ遠回りしても来る価値があると思った。

    
左:尾根に出て北岳方向
中:小太郎山の向こうに甲斐駒ヶ岳
右:北岳肩の小屋

稜線に出るとさすがに寒くなったので上着を着る。鳳凰三山だけでなく、甲斐駒ヶ岳や仙丈岳も見える。しかし、朝あれほど晴天だったのにいつの間にかガスが流れて天候は次第に怪しさを増している。トラバース気味の快適な稜線歩きだったが肩の小屋に着くころには北岳の山頂あたりはガスに覆われてしまった。小屋前のテラスでコーヒーを飲んで休憩。予定では肩の小屋で泊まるつもりだったが、まだ時間が早い事と小屋で聞いた翌日の朝の天気予報が雨だった事から山頂での御来光を諦めて北岳山荘へと向かう事にした。

    
左:北岳山頂
中:山頂付近のお花畑
右:北岳山荘

肩の小屋からガスガスの北岳山頂へと向かう。登山道は岩稜を縫い、尾根に沿って登って行く。景色がないのが残念だが高山植物のお花畑があちこちで見られる。最後に岩場の尾根を登ると山頂だった。山頂にはたくさんの人がいて、頼んで写真を撮ってもらう。時間はあるのでガスが晴れるのを待ってみようかとも思ったが残念な事に風が出て小雨がパラパラ来始めた。天気は下り坂なのでこれ以上の長居は無用だろう。山頂を後にして北岳山荘へと向かう。幸い、雨が本降りになったのは小屋に着いた10分後だった。駆け込んだ人々で小屋は大混雑だった。朝が早かったせいもあり、夕食後すぐに寝てしまった。

    
左:北岳山荘
中:間ノ岳
右:間ノ岳山頂

朝起きると雲はまだ残っていたが晴れていた。雨は通り過ぎてしまったのか。小屋で頼んだ弁当を食べて小屋を出るとちょうど日の出の時間だった。視界は良好、北岳の山頂もはっきり見える。山頂での御来光を諦めた判断が少し悔やまれるが間ノ岳へ向けて出発する。気持ちの良い高山の尾根歩き。高山植物の花々を眺め、中白根山を越えて登山道を歩いて行くと広い間ノ岳の山頂に到着した。山頂には20人以上の人で賑わっていた。農鳥岳が見える。いつの間にか北岳はガスに覆われており、10分もせずに間ノ岳山頂もガスに包まれてしまい何も見えなくなってしまった。ここで北岳山荘へ引き返す。

  
左:トラバース道の鎖場
右:連続する梯子

    
左:八本歯ノコルと頭
中:八本歯ノコルを見下ろす
右:北岳

ガスの流れる中、北岳山荘まで戻り、小屋の中でコーヒーを飲んで休憩。時間は十分ある。行きとは違う道という事でトラバース道を選択。これが梯子あり、桟道あり、鎖場ありで変化に富む登山道だった。崖に人工的に道が付けられている。主尾根からの登山道分岐に出るとあとは八本歯ノコルへ一気に下ってゆく。急な岩場に階段。追い越しも難しいのでゆっくり歩く。渋滞に飽きたので、地図の展望良好の文字に誘われて八本歯の頭へ寄ってみる事にした。岩場の登山道を梯子やロープを伝って登って行く。頭からの北岳は堂々として素晴らしかった。山頂の人々が見えるぐらいの距離、下りて来た登山道もはっきり見える。もう少しガスが晴れてくれたら良かったが。

    
左:階段
中:基本左岸を歩く
右:雪渓歩き

八本歯ノコルに戻り、下山にかかる。階段もあるザレの登山道。すぐに疎らな樹林帯に入る。歩きにくい登山道に登山者が集中しているので渋滞していた。少しずつ追い越しながら前に進む。やがて大樺沢左俣の左岸を歩くようになる。ガレた登山道は追い越しが出来るので何とか渋滞を突破する。一部雪渓歩きを交えながら二股に到着。追い越しでかなり疲れたがここまで来れば一安心だ。休憩して下りて来た雪渓を眺める。ガスで稜線は見えない。

    
左:二俣
中:沢を渡る橋
右:木の橋

二俣から先は主ルートでもあり、斜度も緩くなって来るので歩きやすくなる。それでも一部、雪渓や河原を通る。崩壊地を避けるため、登山道は一時的に右岸へ渡り、再び左岸へ戻るが鉄パイプで仮設の橋が架けられている。枝沢には木で橋が作られており難なく歩いて行く。

    
左:最後の樹林帯
中:乗合タクシー
右:金山沢温泉

やがて沢から離れ、樹林帯に入る。少し歩くと昨日白根御池に向かった分岐と出合う。空腹を感じて来たが今回は昼食の用意がないので行動食でしのぐ。ここからは昨日歩いた道。余裕で登山道を歩く。広河原山荘でトイレ休憩、それから登山口の広河原まで歩いた。バス待ちで少しゆっくり出来るかと思ったが乗合タクシーが呼び込みしていたのでそれに乗る事にした。あと一人で満席になったので5分程であっという間に出発。芦安駐車場へと向かった。バスより若干早く50分で到着。思ったよりも早く帰って来れたので日帰り温泉に寄る事にした。駐車場が近くだったので目星は付いていたのだ。車に荷物など投げ込み、軽装で金山沢温泉へと歩いて向かう。夏の日差しが温泉で温まった体をさらに暑く感じさせる。それでも幾分はさっぱりする事が出来た。再び弟の運転で川崎へ向かう。談合坂あたりも通常の込み具合で特に問題なく弟の家に到着。近所の居酒屋で一杯やって別れた。東京駅に出て越後湯沢経由で帰宅。今回の登山は景色に今一つ恵まれなかったが、シーズンだけあって高山植物の花々には恵まれた。いつか南アルプスの縦走もやってみたいがアプローチをどうするのか難しい問題だ。

余談  南アルプスは北アルプスほど整備されていないと聞いていたが北岳に関しては全くそのような事はなく快適に歩く事が出来た。
アプローチでも登山でも順調で前倒しの余裕のある登山が出来た。
ガスに覆われてあと一歩景色には恵まれなかったがお花畑が見事だった。
弟が車を手放したのでもうこの手は使えなくなってしまった。
 
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