黒部五郎岳・三俣蓮華岳・鷲羽岳・水晶岳

(2839.7M-2841.4M-2924.4M-2986M)

そろそろ中高年登山

日程

今年の兄弟登山は昨年断念した五竜岳と思っていた。しかしテレビの影響を受けた弟が雲ノ平にするという。雲ノ平は19年前に行っている。その時は高天原経由で行ったので今度は黒部五郎岳経由で行く計画とする。お盆休みを利用し、久々の三泊登山。心配なのは体力だ。昨年は一回しか登山に出ていない。他は城跡巡りが数回。そして8月の演劇の準備に時間を取られて結局一回もトレーニングをする事が出来なかった。登山もしない練習もしないで無理は出来ないだろう。先週まで全く準備に取り掛かれなかった事もあり、三日前から慌ただしく荷物を整える。ぜんちさんにお盆の予定を話したところ、やはり雲ノ平に行かれるという事で途中まで同行する事になった。初日の折立から太郎平小屋まではコースタイムで5時間、ぜんちさんでも無理なく登る事が出来るだろう。有峰林道のゲートが開く時間をめがけて行くほどではないだろうと思われた。

8月13日 富山(05:35)旧有峰少年自然の家(07:10)=遊歩道入り口(07:25)=折立登山口(08:45)=三角点(10:30-11:00)=五光岩ベンチ(12:35)=太郎平小屋(13:25)
8月14日 太郎平小屋(05:40)北ノ俣岳(07:20)=赤木岳(08:20)=黒部五郎岳(10:40-11:30)=黒部五郎小屋(13:15)=三俣蓮華岳(15:00)=三俣山荘(15:45)
8月15日 三俣山荘(06:05)=鷲羽岳(07:15-07:35)=ワリモ北分岐(08:10)=水晶岳(09:20)=水晶小屋(09:55-10:15)=ワリモ北分岐(10:45)=祖父岳(11:35)=雲ノ平山荘(12:45)=祖母岳往復
8月16日  雲ノ平山荘(06:15)=木道終点(07:30)=薬師沢出合(08:45)太郎平小屋(12:00-12:20)=五光岩ベンチ(12:45)=三角点(13:40)=折立登山口(14:50)=遊歩道入口(15:50)=旧有峰少年自然の家(16:10)富山

山行記録

ぜんちさんとの待ち合わせ時間に合わせて自宅を5時35分に出発。前夜遅くまで準備していたこともあり寝不足気味ではあるが、初日の予定は大した事がないので何とかなるだろう。いつものコンビニでぜんちさんを拾って有峰林道へと向かう。有峰林道のゲートで既にかなりの車が入っていると告げられるが気にせずに進む。しかし有峰記念館のところまで来ると急に渋滞に出くわした。車を止めて何か説明しているようだ。この光景は見覚えがある、もしやと思ったがやはり入場制限だった。折立方面は駐車スペースがなく進入禁止との事。むう、路上駐車は認められないらしい。誘導されるままにすぐ近くの旧有峰少年自然の家の広場に車を停める。説明ではここから折立まで遊歩道で一時間という事だった。道路を歩いても6km、一時間以上はかかる。同じ時間なら遊歩道の方が良いだろう。

    
左:旧有峰少年自然の家
中:折立遊歩道
右:折立遊歩道(渡渉)

軽く準備体操の後、歩き始める。看板に従い道路を歩いて行くと折立遊歩道の入口に到着。看板があり、誘導員が立っていて全く抜かりがない。看板によると遊歩道は250m登って50m下る感じだ。一時間コースというには厳しい高低差だ。看板には2時間とあり話が違う。しかし小学生の時に学校行事で来た事もあるし大した事はないだろう。遊歩道はいきなり九十九折りの急登から始まる。やはりぜんちさんは遅れ気味。中高年グループにもどんどん抜かされる。そして一時間が過ぎてもまだ登りが続く。さすがに不安になってエアリアマップを開くとここのコースタイムは一時間半だった。道が下りに入ると道幅も人が並べるくらいになり歩きやすくなる。真川を飛び石で渡渉すると林道に出た。林道を4分程で折立登山口に到着。一時はどうなるかと思ったがほぼコースタイムで歩く事が出来た。

    
左:折立登山口
中:樹林帯の登山道
右:三角点

ここでようやく登山口である。今のところ良いペースだ。2年前の妙高山の様になってもぜんちさんは小屋までギリギリ届くかなと考えていたところ、ここでぜんちさんが撤退を表明された。まだ登山口に着いたばかりである。しかし無理強いは出来ない。ちょうど10時過ぎ出発のバスが入って来たのでそれに乗って帰られるとの事だった。トイレ休憩の後、ぜんちさんと別れて折立登山口を出発。幸いその時間はぜんちさんが加わる前の当初の出発時刻とほぼ同じだった。初日は足慣らし、ゆっくり歩いても十分に小屋まで届くので焦らず流れに任せて歩いて行く。何とかトレーニング不足をカバーしなければならない。三角点までは樹林帯の中を歩く。初めは急な坂だがやがてダラダラした登りとなる。もう何度も歩いた道だ。弟は暑さと運動不足でバテ気味の様子。三角点で昼食、家から持ってきた弁当を開く。量が多くておにぎりを残す。

    
左:破損している登山道
中:木道もあり
右:とりあえずビール

三角点からは樹林帯を抜け、有峰湖も見えるようになる。登山道はやや石がゴロゴロして歩きにくい。かつては石で組んだやり過ぎ感のあった登山道も今ではほぼ崩れてしまい、無残な姿を晒している。今更莫大な予算をかけて直す事もないのだろう。稜線はガスがかかって見えないが暑くなくて正解である。五光岩ベンチを過ぎると時々木道がある。傾斜も緩いので歩きやすい。なぜか人もまばらとなり、静かな景色が心地よい。太郎平小屋には予定より早く到着。早速ビールで乾杯した。まだ昼過ぎである。こういう時に限って暇をつぶす本を忘れた。仕方がないので談話室に籠って漫画を読む。3冊ほど読むと夕食になった。夕食はトンカツに昆布じめと豪勢であったが混んでいるせいか30分で席を空けなければならず、食後のビールは小屋の外で飲む事にした。昼に残したおにぎりも一緒に食べる。まだ明るいがじっとしているとさすがに寒い。翌日は長丁場なので談話室の漫画も切りのいいところで止めて早めに休む事にする。

  
左:北ノ俣岳(太郎山より、左は黒部五郎)
中:左から水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳
右:左端槍ヶ岳、順に黒部五郎、笠ヶ岳、乗鞍、御嶽、手前は赤木岳

朝食は朝5時、トイレを済ませて外に出ると快晴である。小屋の朝食時間が思ったより早かったので予定より少し早めに出発することが出来た。まずはすぐ近くにある太郎山。昨日登って来た三角点の先に鍬崎山が見える。中々の展望地と思ったがそれは早計だった。高原風の幅広の尾根を登って行くと近すぎて見えなかった薬師岳が徐々に全容を現してくる。好天の縦走なんて何年ぶりだろうか。奥行きも広がりもある素晴らしい景色に圧倒される。登山道は木道も多く歩くのも快適である。途中からは黒部五郎岳や槍ヶ岳、黒部湖も見え、大展望を望みつつ北ノ俣岳に到着。山頂からは白山、剣、薬師、赤牛、水晶、鷲羽、三俣蓮華、槍、黒部五郎、笠ヶ岳、乗鞍、御嶽と360度の素晴らしい展望が得られた。以前、寺地山経由で登った時はガスガスで全く景色が得られず、こんな良い山だと思っていなかっただけにとても感動した。

    
左:赤木平と薬師岳
中:ガスに包まれる黒部五郎岳
右:北ノ俣岳も

北ノ俣岳を過ぎると次のピークは赤木岳。気持ち良い縦走路が続く。自然と足が早まるが、登りになった途端、弟の足が止まってしまった。強烈な日差しに参ったのかもうバテている。こうなっては自分も立ち止まるしかない。中高年に抜かされ、山ガールに抜かされ、しかしさほど速度差が無い事もあって、先に歩いている私だけ無駄に抜かしたり、抜かされたり。これではストーカーではないか。そうこうするうちにガスが黒部五郎岳を覆い始めた。ここは弟に付き合っている場合ではない。黒部五郎岳への登りにかかるところで先に向かう事にする。山頂直下は見上げるような急坂だったが、ようやく自由になれたのだ、マイペースで一息で登り切る。多少遅れたが朝早く出た甲斐もあって当初の予定時間通りに到着。太郎平小屋の弁当を開けて昼食とする。結局ガスのせいで雲ノ平方向以外の景色は得られなかった。

    
左:薬師岳と鹿島槍
中:赤牛岳、水晶岳、鷲羽岳
右:黒部五郎岳山頂

弟がやって来たのは20分後、写真を撮ってもらって昼食だ。ここで問題発生、ここから稜線上を歩いて黒部五郎小屋へ向かうかカールに下りて行くかで見解の相違があった。メールでやり取りすると思い違いが生ずるのも仕方ないか。大した違いはないといい加減に考えていたせいもある。遅れ気味のペースを考慮してコースタイムが短くて一般コースの五郎のカールを通るルートにした。

    
左:左から鷲羽、三俣蓮華岳、丸山、双六岳(カールより)
中:五郎のカール
右:黒部五郎小屋

黒部五郎の肩からカールの中へは九十九折りで一気に下る。遅れを取り戻したいところだが、なぜか弟の足が止まる。下りでもダメか。しょうがないので、カールの写真を撮ろうと先行する。登山道の脇に大岩があったのでその上に登って写真を撮った。休憩にも程よい感じだ。いつの間に抜かしていたのか先程の山ガールに抜かされる。弟がやって来てしばらく一緒に歩くが、水が残り少なくなって来たので小屋で何か飲もうかと再び先行する。小屋に着く直前に山ガールに追い着く。彼女らは今日はこの小屋までのようだ。どう考えてもストーカーだ。早く先へ進みたいが小屋の前で地図を見ながら弟を待つ事にする。本を忘れて来た事が再び悔やまれる。

    
左:黒部五郎岳
中:三俣蓮華岳山頂
右:祖父岳、水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳(鷲羽の下に三俣山荘)

弟が来たのが8分後。そしてどっかりベンチで休憩。予定より30分遅れ、思ったほどペースは落ちてないようだが休むだけ時間が過ぎてゆく。今のペースで三俣蓮華岳を登ると17時に三俣山荘を狙えるかどうかだろう。相談の結果、弟はトラバース道を選択、私は三俣蓮華岳へ向かう事になった。いきなり急な登山道から始まり、樹林帯から笹、そしてハイマツへと周囲の景観が一気に変化する。腹が減って来たのでとりあえず、ゼリーとビスケットで腹ごしらえ。何度か斜度が緩くなるが、順当に高度を稼ぐ。頑張った結果35分時間を縮めて当初の予定時間に三俣蓮華岳に着く事が出来た。ここまでゆっくり歩いて来たから体力が残っていたのだろう。南側はガスで景色が得られず、硫黄尾根から雲ノ平方向だけしか景色は得られなかった。三俣山荘へ向かう途中で槍ヶ岳がなんとか姿を現してくれた。予定時刻ちょうどに小屋へ到着。小屋前で弟を待ちながらビールを楽しむ。さすがに寒くなって来た頃、弟が到着。とりあえず、ビールで乾杯する。

    
左:槍ヶ岳(三俣山荘より)
中:ケーキセット1200円
右:三俣山荘

  

夕食は鹿肉のジビエシチューと簡単なサラダ。前日に比べると品数は少ないが赤字覚悟と言うからには材料経費は高いのだろう。鹿の食害からハイマツを守るための啓発活動ということらしい。余ってもしょうがないので3杯おかわり。夕食後、高山病の講習会があるというのでロビーでしばらく待つ。隣になったグループから焼酎を頂いた。講習会は大学生の高山病についての一般論に続いて大学の先生による利尿薬(ダイアモックス)での高山病の予防について説明があった。質疑応答となり、「適応外の症状にしかも予防で出せるのか、保険適用は?」と言った質問が出て、先生の「そこはうまくやって下さい」との返答に質疑は紛糾、経験と認識の差か。というか質問してるのは医療関係者ばかり。そこで前から思っていた事を質問。「高山病と風邪は見分けがつきますか」、対して「一概には言えません」との答えだった。謙遜なのか自己診断を戒めてるのか、結局分から~ん。終了後、ようやく落ち着いたので名物のケーキセットを頂く。数年ぶりに飲んだサイフォンコーヒーはおいしかった。

続く 2016年 HOME