国見岳

(1738.8M)

トラブルと不安と焦燥

日程

四連休の最終日は熊本県の最高峰、国見岳に登る。熊本県と言えば阿蘇山だが、それを半日という短い行動時間で終わらせたくはない。国見岳なら日の出と同時に行動を開始すれば、高千穂を観光する余裕すら出てくるはずだ。レンタカーを借りるのは今回が初めて。登山靴での運転など課題もあったが思いつく限りの準備はしていたので問題ないと思われた。だが、その考えは甘かった。

5月4日 町営高千穂温泉内大臣橋
5月5日 内大臣橋(04:30)広河原登山口(05:45)=国見岳(07:25−40)=広河原登山口(08:50)通潤橋高千穂渓谷高千穂駅(14:37)
5月6日 富山駅(04:48)

山行記録

町営高千穂温泉が閉館時間になってしまったので国道218号線を熊本方面に向かった。とりあえず砥用町へ向かい、そこから緑川の右岸沿いに内大臣橋へと向かう。夜間、初めて運転するコースだけにルート取りには慎重を期す。国道を外れるとさすがに暗かったが迷わず内大臣橋に到着した。橋を渡り、駐車場でしばらく仮眠し、時間を調整、日の出頃に着くように頃合いを見て車を走らせた。樹林帯をくねくね回り、すぐに方向感覚が無くなってしまったが運良く内大臣に向かう看板を見つけて内大臣林道に乗り出す。あとは道なりにダート道を行くだけだ。真っ暗な林道を慎重に走る。と、その時突然ハンドルが重くなった。一瞬何事かと思ったが、すぐにパンクだと理解した。初めてのパンク経験だったので信じたくは無かったが、躊躇することなくスペアタイヤに交換する。タイヤ交換は毎年やっているので手慣れたものだ。手元が暗くても何とかこなす。パンク地点はほぼ林道の中間地点、ボンネットのトラックが捨てられているあたりだった。さて、これからどうしよう。進むべきか引くべきか迷いに迷った。再びパンクすれば今度こそ終わりである。しかしここで引き下がるのも後味が悪い。一か八か賭けに出る事にした。空も明るくなってきたし、今まで以上に慎重に前に進む。戦々恐々とした気分で運転し、なんとか広河原の登山口に到着した。

  
左:広河原登山口
右:内大臣峡

登山口向かいの道路脇駐車スペースに車を停める。さすがに一番乗りだ。出来るだけ早く帰りたいのですぐに準備をして出発した。まずは植林帯に取り付き、急登を尾根へと登る。やはり低山の雰囲気は隠せないが、良く踏まれた登山道で歩きやすい。登り坂が緩やかになってくると、やがて樹林帯の中に立木が一本立っている小さな空き地に出た。休憩に丁度良い感じの場所だ。この辺りから登山道は背丈ほどの笹を掻き分けながらのトラバース。昨日の雨のせいで笹には大量の露が付いていてたちまち全身びしょ濡れになる。途中、沢を何本か渡るがどれも大したことはなかった。写真を撮ろうとしたが、シャッターが動かない。昨日今日、二日間水に濡れたので壊れてしまったらしい。いつの間にかカメラのカバーも無い。歩いている内に落としたのだろう。帰りに拾って行くつもりで先を急ぐ。トラバース道が終わると今度は見通しの悪い笹の間を縫って行く苦しい登りとなった。尾根に出れば傾斜が緩くなり笹も背が低くなるのでかなり歩きやすくなる。杉の木谷からの道を合わせてからは登山道に岩が目立つようになり、すぐに山頂へ到着した。

  
左:杉の木谷登山口へ続く登山道(分岐の近く)
右:国見岳山頂

山頂周辺にはガスがかかっており、さらに体が露に濡れた。カメラは途中からザックに入れて乾かしたおかげで何とか4枚だけ使うことが出来た。いつショートしてもおかしくないのでもう触らない事にする。山頂には別の登山口から来た人だろうか既に何人かが休んでいた。展望もなく、寒いだけなので写真を撮ってもらってすぐに下山する。カメラのカバーを探すため、帰路も同じコースを歩く。すれ違った人に何度も尋ねたが要領を得られず、車の上に置いたままになっているのを発見したのは登山口に着いてからだった。
山登りを終え、車に戻ると急に現実に引き戻された。まだ恐怖の林道が残っていた。再び、不安におののきながらゆっくりと気を付けて車を運転する。そして何事もなく林道を脱出出来たときにようやく胸をなで下ろした。帰り際に時間を見計らって通潤橋、高千穂渓谷などを散策して高千穂駅にレンタカーを返しに行く。原状回復と言う事でタイヤを実費購入したのが痛かったが、電車に間に合っただけで十分だった。高千穂駅を出てからは、延岡、小倉、新大阪と乗り換えて予定通り富山に帰ることが出来た。

余談 これ以降は夜間のダート走行が出来なくなった。
雨の日はカメラをしっかりカバーに入れて持ち歩くようになった。
雨の後に笹の中を歩くときは雨具を着た方が良さそうだ。

不運が重なったが、おかげで思い出深い登山となった。
1999年 HOME 岩木山