皆子山

(971.5M)

京都府最高峰再び

日程

比良山系の中でひときわ目立つ蓬莱山の後ろに安曇川を挟んで京都府最高峰の皆子山がある。決して名山と言える風格はなく、実際ただの低山で終わってもおかしくない山なのだが登っている人は結構多い。実は私も今回は三度目の登山だ。過去の二回の山行はどちらも寺谷から足尾谷へ抜けるルートをとったが今回は皆子谷から足尾谷へと向かう事にした。京都府最高峰、一度は京都側から登っておきたい。しかし雪が降る前に行動したいとの思いが強かったせいでちょっと準備が疎かになってしまったのだった。

11月23日 富山(04:10)下坂下(08:40)=平(09:00)=安曇川渡渉点(09:45−00)=皆子山(11:10−20)=足尾谷出合(12:10)=下坂下(12:50)道の駅くつき新本陣足利庭園興聖寺葛川支所

山行記録

富山から高速道路を使いながら朽木方面へと車を走らせる。皆子山は過去にバスと車とで計二回行った事がありお馴染みの場所だ。さほど迷う事もなく、少々遅れながらも平の集落へ到着。しかし前回利用したはずの路肩スペースはすでに占領されていた。仕方がないので考えた挙句下山口に予定していた足尾谷の出口に車を停める事にする。ここは国道のバイパスから外れているので車は停めやすかった。

取って返して安曇川沿いの旧道をひたすら歩く。国道の下を縫うように蛇行していくのがもどかしいがどうせ通らなければならない道なのでさほど気にはならない。平の集落に近付き国道に合流すると急に車の量が増えて冷や冷やさせられた。集落を過ぎるとゲートを越えて林道に入る。川沿いに続く林道は緩い上り坂で歩きやすいが景色はどんどん山深くなってくる。やがて寺谷の登山口、丸太で出来た木橋がある。さらに林道を終点まで進むと川に向かって下りてゆく登山道がある。これが皆子谷への道のようだ。


橋が流された渡渉点

川まで出てみて絶句した。あるはずの橋がない。初めからなかったのかと思いもしたが、10Mほど下流側に打ち上げられた橋を見つける事が出来てこれが流されたのだと理解した。少し迷ったが渡渉しかない。幸い10Mほど上流に流れの緩そうな場所を見つけた。深さは膝ぐらい。登山靴を脱いでゆっくり渡渉した。この間にも何人かの人が川岸まで来て帰って行った。登山靴を履き直しながら様子を見ていたが誰も付いて来る人はなさそうだった。

一難去って又一難。持ってきたフィルムが全て使用済みだ。ありえないミスだ。準備しているときに気持ちに焦りがあったとしか思えない。平の集落まで撤退すべきか、かなり動揺した。往復約二時間、時間的にギリギリだ。やっぱり写真は諦めてこのまま先に進もう。渡渉する前なら考えも変わったかも知れないが仕方がない。山に向かって登山道を歩き始める。

始めは樹林帯の中を歩いてゆく。登山道ははっきりしていてほとんど迷う心配はないが、途中何ヶ所かある小さな木の橋はどれも苔が生え、弱っていそうでなかなかスリリングだ。ほとんどアップダウンもなく皆子谷に出合う。皆子谷沿いの道は意外にも道幅も広くかなり歩きやすかった。看板には百井、ヒノコとあり、上流の集落から続いている道らしい。登山道と言うより遊歩道、これなら全然大丈夫そうだ。

いつ谷に取り付くのかなど楽観的に考えながら歩いていると道が突然消えてしまった。対岸に向かってロープがあり、その先には少しスペースがあいているように見えた。橋が流されたか何かだろうと考えて対岸に渡り、川岸に沿って歩き始める。かなり泥濘が大変だ。少し歩いてみて自分が川床を歩いているのにやっと気付いた。水量が少なかったので気付かなかったのだがおかげで沢登りはさほど難しくはなく助かった。立派な道は消えてさらに良く出来た踏み跡をたどるが、目印もあり渡渉を繰り返しながら沢沿いに登って行く。時たま紅葉している木があって綺麗だ。

沢の水もほとんど無くなり、もうそろそろ詰まる頃かと思っていると登山道は横にそれて笹の中を歩くようになった。すぐに直登の急坂となる。沢にいるうちに休んでおけば良かったと思ったが後の祭、道が狭く傾斜もあって休むだけのスペースはない。ひたすら我慢して歩き続ける。高度を稼ぐにつれてたんだん笹の葉に雪が付いて来て相当寒い。雨具も着けられないので全身ずぶ濡れだ。これは困ったルートに来てしまったと後悔し始めた頃、ようやく稜線に出ることが出来た。早速、雨具を着ける。ここからは傾斜も緩く、だいぶ歩きやすくなる。

しばらく胸ほどだった笹の高さもやがて頭ほどになった。前に来たときよりもさらに高くなっているような気がする。道ははっきりしていて笹を掻き分けながら歩いてゆくと、やがて寺谷からの登山道と合流し、さらに進むと皆子山の山頂に到着した。この日は山の中腹から上はガスに覆われていて景色は何も得られなかったがそれでも山頂には十人以上の人がいた。場所柄か都道府県最高峰の話となった。私もちょっとは得意分野なので話が弾む。意外と府外の人が多かった。適当な場所に陣取って濡れた服を着替える事にする。

着替えはしたものの濡れた体を放っておくのも嫌なので早めに山を下りる事にした。ここからは来た事があるルートなので気が楽だ。山頂から少し歩くといきなり急な谷筋に入ってゆく。足場の悪い急斜面を両手を使いながら下りてゆくが、まだまだ登ってくる人が多くて場所を譲りながら一歩一歩足を運んだ。毎回思うがこのルートを登ろうとはさすがに思わない。ツボクリ谷に出合うとようやく周りが開けて来る。はっきりした登山道を渡渉を繰り返しながら歩いていく。登山靴はもう濡れてしまっていたのでかまわず水の中に足を突っ込んだ。それでかなり気楽に歩く事が出来た。足尾谷へ入ると傾斜も緩くなり、登ってくる人もほとんどいなくなったので快調に歩く。何度か木橋があるものの、良く使われている橋という事で気楽に渡った。やがて林道に出た。すぐに発電所を過ぎて、舗装道路に出るまでしばらく歩いた。そのまま車まで移動する。予定ではこの後、京都府第三位の三国岳に登るつもりだったがさすがにその気力はなく、フィルムを買うために道の駅「くつき」へ向かったのだった。

時間が浮いてしまったので近くの観光名所らしい「足利庭園興聖寺」に寄ってみる。ここは室町時代、京を追われた将軍足利義晴、義輝らの居館があった場所で当時の庭園が現存している。銀閣寺を模したという庭園は近世の大名や寺院の庭園と比べて規模も小さく簡素ではあったが、わびしさ、さびしさが感じられた。ちょうど紅葉時期でカメラを携えた人が大勢いたのが雰囲気ぶち壊しでちょっと残念。

天候は徐々に回復して来ていたが、翌日に期待してゆっくり過ごし、それから峰床山への登山口である坊村へと向かった。

余談 フィルムは早めに現像したほうが良さそうだ。
コースタイムにしてはハードな山で、そう言えば前回も前々回も下山後は何処かで居眠りしていたような気がする。
記録写真の為、もう一度来る必要がありそうだ。

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