三宝山

(2483.3M)

奥秩父、埼玉県最高峰

日程

一昨年の東京最高峰に続き、今度は埼玉県の最高峰を目指す。三連休で秩父側から入り奥秩父を縦走、増富温泉に抜ける大計画だ。しかし積雪の状況を甘く見ていたのが失敗で初日からもたついてしまう。アイゼンなしで堅い残雪を越えて行く事を考えると計画をそのまま実行する事など不可能に近いと考えるに至った。結局は当初の目的である埼玉県最高峰を踏んだ後、エスケープして千曲川源流に下りたのだった。

(記録は紛失していて撮った写真も何を撮ったかよく分からない状態です)

5月2日 富山
5月3日 三峰口駅栃本=大峰山=白泰山避難小屋=十文字小屋
5月4日 十文字小屋=三宝山=甲武信岳=甲武信小屋往復=千曲川源流=毛木平=秋山信濃川上駅上野駅
5月5日 富山

山行記録

富山から急行「能登」で熊谷へ行き、秩父鉄道で三峰口へと向かう。一昨年雲取山に登ったとき以来、お馴染みのコースだ。駅に着くともうバスが待っていたのですぐに乗り込むが、これは中津川行きのバスであやうく間違えそうになった。駅前でしばらく待ち、秩父湖行きのバスに乗り直す。そのバスを終点の秩父湖でマイクロバスに乗り換えて栃本関所跡に向かった。しかしこのバスはほとんどの地点がフリー昇降で現在地のアナウンスなどは無く、気が付いたら栃本まで来てしまっていた。とりあえず関所跡まで戻らなければなるまい。来た道を歩き始める。

  
大峰山のツツジ

予定よりも遅れたが栃本関所跡脇の小道から登り始める。両面神社に向かう舗装道路と間違えやすいので要注意だ。ひたすら坂道を登ってゆくと栃本広場のキャンプ場に入り、さらに上に行くと稜線に出た。大峰山の山頂は稜線の遊歩道を少し歩いた目立たない場所にあった。東屋があるが樹林に囲まれて展望は利かない。あちこちで咲いているツツジが綺麗だ。と、カメラにフィルムが入っていないのにようやく気付く。三峰口駅から十回以上撮影してきて全く気付かなかったのだ。今更戻って撮り直すわけにもいかず、気を取り直して先に進むことにする。

  
左:和名倉山?
右:白泰山避難小屋

整備された遊歩道を稜線沿いに戻ってゆくと、栃本広場の駐車場の上を通り、林道のある峠に出た。山の神峠だ。林道を越えて稜線上を進む。道が急に登山道らしくなって来た。展望のない樹林帯の登りが続く。尾根道とトラバース道の分岐では尾根道を利用することにしたが、樹林に遮られて景色は良くなかった。両面神社からの道と合流する辺りから植生が変わり笹が増えて来た。いよいよ白泰山への登りが始まる。一里観音を過ぎ、順調に高度を稼いでいくが登山道は白泰山の山頂を踏まずトラバースして行き、いつの間にか二里観音のある白泰山避難小屋に到着した。ここで昼食。少し先にあるのぞき岩にも行ってみるが空気が霞んでいてあまり景色を楽しむ事が出来なかった。

  
左:両神山?
右:十文字小屋

のぞき岩を下りて縦走路を歩き始める。相変わらず樹林帯の稜線歩きだ。小刻みなアップダウンが思いのほか疲れる。ふと、木々を通してようやく見えてきた甲武信岳方面の稜線が白いのに気付いた。まあ、行ってみなければ分かるまい。結構楽観的だった。赤沢山を巻いて行くと、鍾乳洞入口の看板のある場所に着く。少し鍾乳洞に向かって歩いてみたが、時間がかかりそうなので止めて先に進む事にした。やがて稜線の道は下から来た林道と合流する。見た目は広く平坦で歩きやすそうな道だが荒れているせいで足元が悪く、全然そんなことはない。林道と別れ、登山道は大山の南面を巻き、次に稜線を越えて北面へと続く。そこには信じたくない光景が広がっていた。登山道に沿ってアイスバーンとなった雪がかぶっている。とりあえず登山道脇の凍っていない所を選んで歩いてゆく。稜線に出ると雪はなくなり、四里観音避難小屋に到着した。ここから十文字小屋までのコースタイムは50分、その内の半分は北面のトラバースだ。かなりの困難が予想出来たので、休憩もそこそこに出発する。歩いてゆくとすぐ稜線にも雪が被って来た。一歩一歩の我慢の山歩きだ。体が冷えてくるのが分かる。いつ小屋に着くやら分からなくなるほどゆっくりと前に進んでゆく。時間に余裕があることだけが頼りだ。トラバース道はやはり完全にアイスバーンと化していて予想以上に大変な場所だった。不安定な足場の上をバランスを取りながら歩いてゆくが、やっぱり何回か転んだ。途方に暮れようにも後戻りは出来ない。苦労しつつも、どうにかこうにか十文字小屋までたどり着いた。予定より30分遅れの17時前だったと記憶している。

         
左:十文字小屋近くの登山道
右:大山から三宝山

翌朝、小屋で朝食を食べてからすぐ出発する。雪が緩むのを待つのも良かったが、歩くのに時間がかかるなら早めに出発したい。やはり登山道はガチガチなので横の林の中を歩いてゆく。時々ヒザまで雪に取られるが、登山道よりは歩きやすい。樹林帯を抜けると雪はもう緩んでいてすぐに大山に到着。八ヶ岳や奥秩父を眺める。これからはどんどん気温が上がってくるだろうし、何とかなりそうだ。

  
左:三宝山山頂
右:甲武信岳、木賊山(三宝山より)

大山を過ぎると樹林帯のトラバースが始まった。地形図には稜線沿いに道が付いているはずなのだが、違うようだ。おかげで楽観的な気分はどこかに行ってしまった。地図を読むのはやはり難しい。昨日と同じく登山道はアイスバーンでガチガチになっていた。ただ、こちらはよく歩かれている道だけあって凹凸があり、踏み跡をたどれば幾分歩きやすい。それでも何カ所か逃げ場のない場所があって恐い思いをした。尻岩を過ぎ、長い登りをこなして行くと三宝山の山頂に到着。特徴のないピークからは甲武信岳がよく見える。ここで写真を撮ってもらったが、意外にも素通りしていく人が多いのにびっくりした。埼玉県最高峰、一等三角点と言えども日本百名山には敵わないのか。目的が違うと言われればそれまでだが、勿体ない話である。十分に休んだ後、甲武信岳へと向かった。積雪は30cmほどあったが既に雪はザクザクで最後の急登も楽に登ることが出来た。甲武信岳山頂からの景色は格別で八ヶ岳、金峰山、奥多摩の山々が眺められた。富士山は見られなかったと思う。

           
左:千曲川源流
右:戦場ヶ原

甲武信岳の山頂にいながら迷いに迷った。今まで歩いていた感じからして標高1900M以上には雪がありそうだ。奥多摩に近い雁坂峠はどうだろうかと考えながら甲武信小屋まで歩く。登山者に話を聞くとずっと雪が着いているとの事だった。国師岳方面も同様。今は雪も緩んでいるが、夕方にはまたガチガチに凍るに違いない。登山道も稜線沿いばかりではないだろう。甲武信岳に登り直し、千曲川源流に下りることに決めた。一旦甲武信岳に登り、急な下り坂を下りた分岐点で昼食にする。行き先が決まってしまえば気は楽だ。国師岳への稜線を歩いてゆく人を落ち着いて見送り、そして寒くなる前に分岐点を出発。稜線から急坂を一気に下ってゆく。今度は積雪が逆に心強い。時々雪に足を取られるが容赦なく駆け下りた。やがて傾斜が緩くなって千曲川の源流に到着するが、それはまだ雪の下で川が姿を現すのはもう少し先の事だった。川沿いの登山道からはいつの間にか雪が消え、歩きやすい緩い下り坂が続く。登山道はやがて林道となり、トイレのある毛木平の駐車場に出る。さらに進み、戦場ヶ原の広い畑を過ぎるとようやく集落が見えてきた。林道歩きが長かったので梓山のバス停に着いたときには座り込んでしまった。それでもバスの時間まで1時間以上あり、暇なので歩く。民家に立てられている鯉幟がいい雰囲気だった。ようやくやって来た村営バスに乗り込み、信濃川上駅へ。電車を乗り継いで上野駅に向かう。浮いてしまった一日が何とも空しかった。

余談 一昨年の奥多摩に積雪がなかった事が油断につながった。
地形図では読めない情報を補足する手段が必要だ。
始めて携帯電話を持ち込んだ登山だったがこの当時完全圏外で全く役に立たなかった。
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