第5章 興奮!嵐の露天風呂!?

水をかけあい、転びあったりして遊ぶ。
”冒険者たち”の
アラン・ドロン
リノ・バンチュラ
そして・・・レティシア役のジョアンナ・シムカス
まるで映画のワン・シーン。 時間よ…止れ…


三人とも腹時計がなっていたのでキャンプ地へとむかう。 アネゴはセローで一足先に、俺達は湖から帰ると湯冷めしそうなんでふたりでアルカディア号をかついで帰った。
腹が減りまくっていたので、スパゲッティーをゆでて、しょーゆ、マヨネーズ、かつおぶしをぶっかけ、ぐるぐるかきまぜてはふはふ食べる。
 アネゴは
「コレステロール、たまるわよ」
と呆れている。
けど、前にも書いたけど、俺達の胃袋は恐いモン知らずなのである!(ちょっと、アンタ、コレステロールは血管にたまるのよ)
一息ついたところで、米を炊き、メイン・ディッシュのジンギスカンへとなだれ込んだ。北海道では焼肉といえば、コレ!っというほど定番なのだが、オイラはこの時が初めてだったのだ。アネゴの可愛いフライパンでたまねぎといっしょにジュージュー焼かれたジンギスカンは、とろり甘くてほのかにミルクの味なんかしちゃって、これがもうなかなかなのだ!
 BOYがどこかで仕入れてきたつけものがイケル!これにはほんのわずかだけど、しゃけの切身が入っていて、オレとアネゴはうまくありつけたが、買ってきた本人(BOY)はありつけず、大いに怒る。ははは。

 パラパラ落ちてきてた雨が、本降りになったようだ。大粒の雨がバラバラ落ちてきた。冷たさと食欲との戦いである。焚火とカッパで雨に対抗。結局、食欲が勝ってあらかた喰っちゃったのであるが、おかげでずぶぬれ。 あまりにも冷たいのでかたずけも適当にそれぞれのテントに逃げ込んだ。
「ひぃやあー、つめてえー」
着替えながらバーボンをBOYとまわし飲み。
「うーん。うまい!」
少し身体があったまる。ジンビーンのミニサイズのヒップ・ボトルなのですぐになくなってしまった。まだちょっと・・・だな。 パラパラ雨がテントを叩く。
「う〜ん。おフロ、もう一回いこうか?」
と聞く。
「いいっスねえ。アネサンもさそいましょう!(大声で)おーい!アネゴ〜!風呂いきませんかあー?」
向こうのテントから
「え〜ぇ? わかったぁ〜。いくぅ〜」
との返事。
アネゴはレインウエアでフル装備なのひきかえに、着替えがあまりない俺とBOYは、ぱんつとTシャッツというひどいいでたちである。 雨の中、バイクに三人乗りでいっちゃおう!ということになった。BOYが
「オレ、女の人のうしろに乗せてもらうの夢だったんスよねー。 いやあー、こんなに速く夢がかなうとはなー」
とヨロコンでいたので、もっとヨロコブようにBOYをアネサンのすぐ後ろにのっけてさらに後ろからグイグイ前へ押してやる。
 落ちないようにアネサンの腰をしっかりつかんで準備完了! 元気良く出発。寒いのでつかむ腕にも力がはいる。 スリル満点、ワクワクドキドキ、しあわせよー。 四十秒の旅だった。
 だれもいないお風呂に飛び込む。うーん。あったけえー。生き返るぜ!気分はもうしあわせ、最高ですうー・・・なのだ。 湯舟につかってると激しい雨と風もかえっておもしろい。風よ吹け吹け、嵐よ吠えろである。酔いが急にまわったのかオレとBOYは、スーパー・ハイな状態である。アネゴの入浴シーンをみながら手なんか叩いちゃう。ホッホウ!
 あまりにもホットなのでBOYと湖に飛び込む。うー筆舌にいいつくせない冷たさ!でも気持ちE〜。水をかけ合う。ねっころがってしばし水と戯れる。三十秒後、耐えられなくなって走って湯舟に飛び込む。
「元気ねえ〜」
とアネゴ。
「気持ちいいですよォ〜!アネゴもいっしょにやりましょう!」
BOYがニコラニコラしながら、くいくいアネサンの手を引っ張る。
(しょうがないこねぇ〜)という顔のアネサン。眼は笑っている。
よし!BOY!がんばれ!もうひと押しだ!
 おもしろい戦いがつづく。
「しょうがないなあぁ」
アネサンのとなりによってってもう一方の手をとる。
「ほらほら、つかってばっかりだとのぼせちゃいますよー」
といいながら湯舟からアネサンをひっぱりあげちゃう。

 もうこれでわれらがアネゴは俺達の自由。

 でやあ〜とそのまま手に手をとりあって湖まで駆けていく。

もちろん三人とも生まれたままの姿でだ。

 うそだぁ〜とおもってるあなた!そうだよなあ。信じられないよなぁ書いてる本人も信じられないぐらいだからなあ・・・・・

 でも本当なのだからしかたがない! いちおう、アネゴの方をみないようにしてたんだけど、それでも大きく揺れる

胸が眼にはいってしまった。ごめん!アネサン!
水をかけあい、転びあったりして遊ぶ。
”冒険者たち”の
アラン・ドロン
リノ・バンチュラ
そして・・・レティシア役のジョアンナ・シムカス
まるで映画のワン・シーン。

「もおぉ〜、冷たい!」
 といって戻っていくアネサン。
 その後ろ姿のシルエットが 向こうに灯るやわらかい光で浮かびあがり・・・息がとまるほどきれいだった・・・
 湖につかりながら・・・冷たさも寒さもなにも感じない・・・BOYをみるとやつも同じだった。 ニコッと笑いあって肘でつつきあう。最高のひととき。
時間がもどってきた。感覚がよみがえり、冷たさに勝てなくなった。ダッシュで戻る。
 ハイになってた俺達にのせられたとはいえ、われにかえるとハズかしくなったのか、アネサンはフタタビ、タオルでしっかりかくして入っていた。 う〜ん。おしとやかだなあ。いいなあ。 みんなで少し照れ合う。
 不思議なひととき
 その瞬間
 雨はあがって
 雲のきれまから月あかりが・・・
 刻よ・・・
 止まれ・・・

 いつまでもその時(すごく依心地がよかったんだ)続けとばかり、三人が三人とも、お風呂につかったり、泳いだり、あがって涼んだりして過ごした。
 いつしかそれぞれ自分のことをぽつりぽつりと話しだしていた。 たわいもない話。 自分の夢のこと。 いままでであったひとのこと。
 ふと会話がとぎれて、 シーンとしずまりかえった時に、目と目が合って、 優しく笑い合うのも良かった。
 再び、セロー三人乗りでテントへ。

身体はぽかぽか。 寝る用意をする。BOYが
「アネサンいいですよぉー、いやあー、最高ーだなあぁ〜」
 を連発。 ハハハ。同感、同感。このまま眠ってしまうのはかなりもったいない気がする。
「ビール、飲みてぇな」
というと
「いいですねぇ〜、いいですねぇ〜!」
と、BOY。 よし!買いにいこう! ここはなにがなんでもビールが飲みたい! そしてその後にはバーボンだ!
テントを出て、アネサンテントを見ると、アネサンはテントからヘッドランプを巻いた頭だけ出して、煙草をふかして、ビールを飲んでおるではないカ!それも黒ラベルの500mlを!
「あ〜!ひでぇ〜」
「ずりィ〜!自分だけぇ〜」
 もうガキの会話である。
「ごめんごめん。だって〜、お酒飲まない人達かなあておもって・・・」
おれら が指をくわえて
「いいなあ〜、ビールいいなあ・・ちぇっ」
 なんてやってると飲みかけの黒ラベルを恵んでくれた。
「もっと買ってこようか?」
 とアネサン。
「そんな!アネゴを使いっパシリにするわけにゃぁ!」
「いいのいいの。かまわないよ。行ってくる」
 なんとゆうひとだ。後光がさしてるんじゃないか?
「しよーがないねぇ。かわいいおまえ達のためだ! ここはひとつ、まんカスになってあげよう!」
 と、言って、ドオルルルンとセローに火をいれる。
「アネゴゥ!それは・・なんというもったいないお言葉!」
俺とBOYはおそれいりながらも腹をかかえて喜んだ。

 説明しよう。まんカスというのは、さっきお風呂ではなしてた時におれたちが創ったコトバである。キャンパーに通名(通り名)があることは、前に書いたよね。キャンパーの中でも一番下っ端の使いっぱっしり(男だよ)は、ちんカスなんて名がつくんだ。とか言ってた時に、じゃあ女だったら、まんカスだね(笑)なんて言ってたのだ。つまり、その・・・あの・・・ね・・・そゆこと。
 わからない人は、誰かに聞いてね。
「まんカスかあ!」
「いいぞ!まんカス!」
「いってこい!まんカス!」
「ぐわんばれ!まんカスー!」
「まんカス!最高〜!」
と、俺とBOYのやんややんや大声援を受けてアネサンは発車。
いやもう、サイコー!

そして酒盛りが始まった。ここからの話はプライベートなのでオフレコ。

(これだけ書いちゃててそれもないかな? でも、もったいなくて・・書けないんだ。)しみじみとした良い話がつづいたのだよ。やっぱり、酒のおかげかなあ。
 BOYが自分探しの旅のことについて語る。 自分がなにをしたいのか。なにができるのか。 真剣になやみ、そして真剣に苦しんでいる。 俺のなかにも同じ想いがあり、いまだにくすぶりつずけているんだ。 こっちまで胸が苦しくなる。 一本気で優しい男だから、 一人ぼっちの放浪の中でも 残してきた人、お世話になった人のことを想うのだろう。

 放浪したり、さすらってると、えてして人は 「ちゃらちゃらしてないで、もっとまじめに生きろ!」 とかほざきやがる。
 こんなに、なんでそこまでやるんだというくらい 一生懸命に!まじめに!真剣に!悩んで苦しんで戦っているやつを 捕まえてだぜ!
  それも、あきらかに悩んでみも苦しみもしないで適当に生きてきて、適当に就職して、それがまじめなんだと思い込んでいるやつがだ!
進もう!挑戦しよう!って時に危険だからといってやめさせようとする。
 ふだんは、近ごろの若いモンは度胸がない!冒険心がない!とかいっている連中が大勢いる。
 いざ若者が勇壮なこと、冒険をしようとすると手のひらを返したように反対するのは、こんな連中だ。自分自身の価値観がなく、こういうものだという規則に判断基準をゆだねようとするやつらだ。  僕はもう・・・一歩くぐり抜けたというかほんの少しだけどタフになったから、もうそんなコトバや連中にまどわされないけれども、いま、実際に戦っている連中に余裕はないし、そういうことに真剣に立ち向かうやつってのは、人のことばを、それが無責任な台詞であっても深く受け止めすぎてしまううからすごく傷ついてしまう。
 それが大好きな人や自分にとって大切な人だったりすると、その人たちはそれが本当に良かれと思って言っているからなおさらだよね。
青年の志っていうのは現実の社会のなかでもみくちゃにされ、ふみつけられていくうちに、いつしか・・妥協してあとかたもなくどこかへ消えていってしまうものなのかもしれない。ほとんど大多数の人間がそうだろう。 熱く志したものほど、夢破れたとき、その反動で次の世代の挑戦に、まっこうからたちはだかる大きな壁となるのかもしれない。 ただ、単にやりたい。それだけのことができなくなる。 いつしかできない理由を探している自分に気づき愕然とする。
 そういうのはまっぴらだ。
 自分の生き方は自分で決めるしかないんだ。
 姐さんは、そういう観点からしかみれなかった俺よりさらに高いところからものを見られるひとだった。
 女の子の味方だし、ほんとに良い意味で女性のなかの女性だ。
 姐さんをみていると、男のたわいもないこだわりや悩みがほんとちっぽけなものにおもえる。(女性にはそれがないってことじゃないよ!)
 逆にいえば、現代社会のなかでは常に目にみえないプレッシャーにさらされてきた男達がほんとあわれだ。小さな頃から立派な大人になって・・・・てやつ。 まわりの期待とか・・・思い込みね。 そういうのを振り切って、自分のしたいことをやる。自分のしたいことがわからないから旅にでて悩む。これは、非常にヘビイなことなんだね。
 男は、少年も、青年もつらいなあー。スケールが小さくなるなあ。  僕は、進むしかできない。荒野へ。時にはハードに、時にはのんびりと。

ディックフランシスの言葉に、次のようなのがある。
一国を滅ぼすのに、若い世代に、危険を冒すことは 馬鹿げていると教え込むくらい、手っとり早い方法はない
            BOY・・・自分でかんがえろ。がんばれ。
            姐さん・・・ありがとう。そして幸せにね。
おやすみ・・・・