イリオモテ島旅日記

3日目(5月1日。雨のち曇り)仲間川源流〜南風見田手前の浜

)朝から雨。フライシートをパタパタ雨だれが叩く。
ときどき早打ちのドラムにかわった。
のんびりするには最高のロケーション。
「イリオモテヤマネコ騒動記」をじっくり読み終える。

コーフンして、じっとしていられなくなり、雨の中、船出を決行。
仲間川の水位は満潮ちかくまで上昇していたため、昨日は遥か上にあったヒルギの枝達が水面近くまでせまって、まるで別の川みたいだ。

カーブを曲がるたびに鬱蒼としたヒカゲヘゴや、亜熱帯の植物が迎えてくれる。

どきどきしながら下っていくと、エンジン音が近づいてきた。一面に漂うオイルの匂い。サキシマスオウの船着き場に観光客を乗せてきた遊覧船が3隻係留してあった。しかたがないとはわかっているが、自然のど真ん中で出会うエンジン音ほど、幻滅させられるものはない。

さっさと、通り抜けよう。すると、1隻のモターボートを操っていた女性が声をかけてきた。
満潮で水位が上昇。別の川の様。

若く可愛いひとだ。
「上流へ上がってきたんですか?面白かったでしょう?」

ムっとした顔がトタンに、にやけてしまう。現金なもモンだ。

しかし、次から次へと溯ってくる遊覧船には辟易してしまう。
しかも観光客の奇異の眼にとまるとあってはなおさらだ。
手を振ることを強要するのもやめてもらいたい。

遊覧船は、カヌーをみるとおもいっきりスピードを落としてくれる。
一応、こちらに気をつかってくれているらしい。
すれ違い終えると、ふたたび爆音と水柱を上げて疾走していく。
お礼の合図をするも、船頭はこちらをみてはいない。
???

あとで聞いた話では、以前カナデイアンカヌーが遊覧船の起こした波でひっくり返りそうになり、問題になったので、そういう対策をしているとのこと。これみよがしなまでの、操船は船頭たちの気持ちの表れか?いやはや雄大な自然に対して、人間界のゴタゴタのなんと野暮なこと。

広い海が見たくてぐいぐい漕いだ。
仲間橋で上陸。大富でビールと泡盛を買い足す。
橋のたもとで海の方をみながらお弁当をたべた。

さーて、次はどうしたもんだろう。
フネをたたんで移動するか、それとも…
そのまま海まで漕いでいくことにした。
海まで出よう。あとは風まかせだ。

南下して河口へ出ると、南東の風と波が迎えてくれた。
手強い。風上に漕ぎ進むことはできない。
干潮でできた巨大な干潟を風をまくようにして風南見の浜を目指して漕いだ。

数キロ進んで、干潟がきれると砂浜が現れた。
誰もいない浜に上陸してテントをはる。
焚き火をしてると、天然記念物のオオヤドカリがやってきた。
ユーモラスな動きが可愛い。砂浜にキャタピラ模様を残していく。
夜、海の向こうに波照間島の灯台が光って消えた。