イリオモテ島旅日記5

5日目(5月3日。曇り時々雨) 大浜〜網取湾

本日も曇天。昨日よりさらに風が強い。リーフの中でも兎が飛んでいた。東の風。

昨日の二人が、海のことを聞いてきたので、伝え聞いた情報を教えると、海人(うみんちゅ)が、地図をだしてきた。その地図は誰かの地図のコピーで、濡れないようにマップケースに入れてあった。

一ヶ月かけて西表島をシーカヤックで一周した「キコリ」さんの地図の写しだという。素晴らしい情報量で2万5千分の1の地図上にさまざまな情報がたくさん書き込まれてあった。野営には重要な水場から、フネの航行に役立つ難破船の位地やリーフの切れ目等。ありがたいことに潮流や風の情報まであった。ゲットしたヤコウ貝等の獲物まであって見ているだけで楽しい地図だ。お願いして、僕の離島情報の手のひらサイズの西表島に情報を書き取った。

それにしても、こんな面白い島を一ヶ月間も旅できるなんてなんと羨ましい。残り少なくなる行程を考えると、ため息がでそうになる。

ご馳走のお礼に、荒れた海を体験させてあげることにした。
元気なノリで、出港し、海の藻くずさせるには忍びない。

シュウと海人、そして彼らのフネ。

二人に荒れた日には、海にでないようにするため、ワザと今日の船出を薦めた。

カナヅチのシュウにオイラのライフジャケットを貸す。

波に対して直角にフネをして乗り切って沖へ。
ワルガキのノリで、フネが波で立ち上がるたびに喚声が聞こえてくる。

思ったとおり、リーフの際でそそり立つ波にもののみごとにひっくり返されて転覆した。水フネを、カヌーの牽引ロープに繋いで岸まで曳航。

重くて全然進まない。こちらも沈を食わないようにするのも大変だ。二人にバタ足を強要して、なんとか岸にたどり着いたと時は、へとへとになってしまった。

二人は、荒れた日は、絶対出ないと固く誓ってくれた。
食料が不足しているので、海岸伝いに買い出しにいくシュウを見送る。

少し休むと、また旅の虫がうずうずしはじめたので、海人に別れを言って船出することにした。

リーフで立ち上がる波が厄介だが、タイミングを見計らえば、なんとかかわせる。ガラにもなく心配顔のうみんちゅが見守る中、波のセットへ漕ぎ出した。少し緊張したが、うまいぐあいにリーフから外洋に抜け出した。波の向こうにただずむうみんちゅの小さい人影。ガッツポーズで返すと大きく跳びあがって手をふった。

「ありがとう、楽しい旅になるといいな」

ちょっとお兄さんぶった表情で、東の風に乗って西へ。

陸地沿いに、鹿川湾の奥間で入るのも面白いが、絶好の東風を利用しない手はない。真西に進んで鹿川湾を横断することにした。

鹿川湾の丁度中心くらいに環状の珊瑚礁があるという。
穏やかな海況なら、寄っていってシュノーケリングしたいところだが、この風とウネリでは望むべきもない。あっとゆう間に遠くなった陸地を振り返りつつ、前方の落水崎を目指した。それにしても波が高い。陸地の岩場に寄せる波が巨大な飛沫をあげる。

ぱぴよんの山元さんの助言通り、岸から遠く離れて、航行した。

「ウビラ石を越えたら一気にいくしかない」

その言葉が記憶に残っていた。カラカラに乾くノドに生唾を送って、焦りや不安を静めた。陸地が少しづつ北に曲がりはじめる。それと共に、巨大な波が立ちはじめた。リーフが再び現れたのだ。岸にもよれず、木の葉のようなちっぽけなカヌーは、うねりに翻弄されながらもジリジリと歩んでいった。

風向きが変わったように感じられるのは、進路が北西に変わったためだ。

ヌパン崎を越える頃には、風が陸地で遮られ、うねりも小さくなった。

リーフのきれたとこを発見してゴロタ石の浜に上陸。

しばらくは立ち上がることができないくらいヘロヘロだった。